「女」を捨てた女が「受付嬢」として働いたらこうなった

「女」を捨てた女が「受付嬢」として働いたらこうなった

アイデンティティと言う言葉がある。自己同一性と訳されるが、自分は何者であるかという自覚。自覚をして、どう生きていくか。個人的にいうと、私は「女」としてのアイデンティティが強い。つい10年前までは、「女を捨てたキャラ」だった私が、あることで「女としての自覚」を手にした。きっかけは、「受付嬢」として働いたことだった。


振り返ってみると、20代前半までは、女であることに自信を持てなかった。女でいることが好きでなかったのかもしれない。男女の差を感じたくなかったし、男と分け隔てなく付き合って、ズバズバものを言っていた。その激しさたるや、まさにヘビメタ。授業では男子に負けたくなかったし、就職後も男と肩を並べて働きたいと思っていた。

なぜ、男性に対抗意識をあれだけ燃やしていたのか、自分でもわからない。男性に対して警戒心もあった。そのころ「幸せな恋愛」をしたのは、ほんの少しだけ。苦い経験も多かったし、「私は恋愛が下手な女」だと思っていた。そんな私の世界とは無縁の「かわいがられる女子」には嫉妬していた。

とにかく男性には優しくされないし、恋はうまくいかない。それまでは、イマイチな人生を送っていたような気がする。

■「女としての差」に劣等感を感じた新人時代

そんな私が、ある日突然「女になりたい!」と思うようになった。もともと女として生まれているのに、なんともおかしい話ではあるが、女をほぼ捨てていた自分が、女に目覚める。

そこから、受付嬢に転職する。受付嬢といえば、女の職業の代名詞。会社の顔、高嶺の花……などいろいろな飾り言葉がつく。「女を売りにした職業」と良い顔をしない人も一部にはいる。しかし私は、ここに行けば「女になれる」という謎めいた確信があった。

最初は、野生児のような私がキレイなお姉さんの中に放り込まれて、居心地が悪かった。これまで見てきた風景とは全く違う。メイクや髪型が女性らしい。おしとやかだし、ウフフと笑うし、男性からチヤホヤされている。私とはまったく別の生き物だと感じた。なんというか、女としての「差」、小さな劣等感を感じた。

とはいえ、私も受付嬢の一員。会社の男性からは「受付の東さん」と大切にされ、いじられることもなかった。ちょっと無理なことをすれば「東さんは、そんなことしなくていいんだよ」と優しくされる。ナニコレ、男たち、優しい。これが女ってやつなのか……。

■4年後、心身に起こった変化とは

結局その職場では、素敵な同僚たちと4年ほど働いた。朱に交われば赤くなる、ということで、私はお望み通り、以前とは比べものにならないほど女らしくなった。

雑誌は『CLASSY』を読み、髪を伸ばして、スカートを好んで履くようになった。ピンクの小物が増えていった。メイクやヘアスタイルも綺麗にして、言葉遣いもおしとやか(多分)。先輩のような、ウフフ笑いも身に着いた。就業前はヘビメタほどに激しかった私は、優雅なクラシックへと変貌した……ということにしておいてほしい。

変化したのは見た目だけではない。男性とのコミュニケーションの取り方も変わった。それまで対抗心を燃やしていた男性にも、敵意はゼロ。男性としてきちんとリスペクトできるようになった。恋愛もまあまあ上手くできるようにもなった。

■女として生きることは、ひとつの処世術

女性であることを期待される職を通じて、私は「女」として生きることを強く学んだ。そして、女である自分が好きになった。昔のように、かわいこぶりっ子している女性に嫉妬することはない。自分が女性であると受け入れたら、男性とうまくコミュニケーションが取れるようになった。

性差関係なく、ひとりの人間として、対等にコミュニケーションするのはもっともなこと。しかし、自分は男か女か、話す相手は男か女か。それを知ったうえで、接し方を調節するのも悪いことではない。意見はさまざまあるが、女を強く自覚して生きることは、私はひとつの処世術だと思う。

職業は人を大きく変える。なかなか貴重な体験であった。

この記事のライター

あずま・かなこ。1983年生まれ。独身の恋愛コラムニスト。テレビ・ラジオ出演多数。元女性サイト編集長という経歴を生かし、書籍「100倍クリックされる超Webライティング実践テク60」(パルコ出版)を発売。講師としても活躍中。...

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