女らしさも男らしさも自由自在。パンツスタイルの楽しみかた
パンツを履く日が多いか、それともスカートを履く日が多いか。女のファッションはボトムスの種類がイメージに大きく影響する。けれど、スカートは女らしく、パンツはメンズライク、という固定観念に縛られる必要はまったくない。女度が高いパンツスタイル、男前なパンツスタイル、自由な気持ちでパンツを愛し楽しもう!
■パンツを履く女、履かない女
中学校、高校と制服がスカートしか選択肢がなかったことに、何の疑問も抱かず生きていた10代。
大学生になって自分で服を買うようになり、その選択肢は自由になった。
けれど、10代終わり頃から、20代は「モテ服」といえばスカート。
ミニスカート、フレアスカート、ふんわりワンピース。
夢見る(?)お年頃だった私は、そんな「モテの呪縛」にまだまだ囚われていて、スカートばかり履いていた。
パンツを履かざるを得ない状況はまもなくやってきた。2児の母になったからである。
平日は保育園の送り迎えのために、朝夕ひたすら自転車を漕ぐ私の服は、パンツ一辺倒。休日も、乳飲み子を背中に乗せ、息子を追いかけて公園を走り回る日々に、「スカートを履く」という選択はなかった。
ところが、その反動だろうか?
子育てが一段落し、下の子が学童保育を卒業するころになると、「女らしいスカートが履きたい!」という欲求がムクムクと湧きおこり、パンツだらけの私のワードローブに変革が起きた。
歩き幅が制限されそうなスリムなペンシルタイトや、裾がヒラヒラしたマーメイドラインのスカート。
極度に女度が高いボトムスがどんどん増殖していった。
同時に、立っているのがやっと、という感じの9cmのピンヒールも靴箱に増えていったのである。
スカートは「母」から「女性」に自分を戻せる――。
私にとって、そんなファッションアイテムだったのだ。
その後、もう一度ボトムスの変革の時期はやってきた。
「ひょっとして、私って、スカートよりもパンツの方が似合うのでは……」
と気づいたとき、私はもう40代になっていた。
仕事も落ち着き、自分でワークライフバランスが上手く取れるようになった頃、
自分のキャラクターや雰囲気には甘いスカートよりもクールなパンツの方が合っている。まわりからもそう言われることが増えていた。
若い頃には気づかなった、自分の内面とボトムスのマッチング。
それを自覚したタイミングは、自分の仕事に対する信念や、暮らしに対する譲れない価値観の輪郭がはっきりしてきて、その軸が確立したのと同時期でもあった。
現在はパンツとスカートの数はちょうど半々。
その日の予定や気分に合わせて自由に選び、着て楽しんでいる。
パンツを履くか? スカートを履くか?
それは、単に好みや流行や、似合う、似合わないだけでなく、女の暮らしと人生と志に大きく左右されるものなのだ。
■パンツ選び 私が一番大切にしているポイント
昨今のパンツの流行は、ワイドパンツ、ガウチョパンツ、スカーチョに代表されるように、太目のパンツが圧倒的に流行っている。
それでも私は、ワイドパンツ、ガウチョパンツを1枚も所持していない。
ガウチョパンツが街で流行り始めたときに、これって、安易に手を出すには危険すぎるアイテムなのでは? と考えたからだ。
これらの流行のパンツを素敵に着こなしている、思わず振り返ってしまうような女性も街に大勢いた。が、冷静に見ると、間違いなく細い足首、腰の位置が高く、キュッと引き締まった小尻のすらっとした女性が多かった。そして素敵だと思う人は必ずハイヒールを履いていた。
安易に手を出し、フラットシューズをぺたぺた履く着こなしをしてまったら、私の垂れた平べったいお尻が強調されてしまいそう。脚が短く見えて、下半身がより太って見えそう。自分はこの手のパンツには手を出さない方がいいと判断したのである。
よって新しくパンツを買う時も、頑なにセンタープレスの細身のパンツを買う私なのである。
流行っているから。
流行に乗り遅れたくないから。
みんな履いているから。
という理由で、自分を素敵に見せないものに手を出す必要はまったくないと思う。
ボディラインとの相性が重要なパンツ選びに、この視点は失ってはいけない、といつも思っている。
パンツは流行が如実に反映されるアイテム。
でも、トレンドを認識しつつ、微妙なパンツのラインの変化を感じつつ、自分に似合うものだけを選び取る。
これがデニムも含め、私がパンツ選びで一番大切にしていることだ。
黒、ネイビー、グレー、カーキ、ベージュ、アイボリーとベーシックな色で揃えている細身のパンツたち。今年はピンクが加わって着こなしの幅も増えた。
■女らしいパンツスタイル、男前なパンツスタイル
スカートを履くと女らしく、パンツスタイルは男っぽい。そんな固定観念が多かれ少なかれ、誰にでもあるのではないだろうか?
でもパンツは、クールで男前にも、女っぽく優しい雰囲気にも、自由にスタイリングできる。
私がパンツを好むのは、その振れ幅、コーデの守備範囲が広いから。
パンツスタイルだけれど、女らしい雰囲気がまとえるスタイル。これを作りこみ、コントロールできるようになると、パンツスタイルのコーデはバリエーションが広がり、着こなしは自由自在になる。
キリっとした雰囲気を前面に出したい商談の場では、男性のように黒やネイビーのセンタープレスのパンツにジャケットを羽織ることが多い私。
でも、優しいてろんとしたベージュのテーパードパンツに綺麗な色のハイヒール、緩いニットを合わせれば、たちまち女らしい気分が味わえるコーデに。
色と形と素材。
この3つをうまく掛け合わせれば、パンツスタイルでもメンズライクと女らしいの両軸を自由に行き来できる。
これはスカートにはない、パンツの大きなメリットだと思う。
ビジネスマンの真似をしてシンプルにスタイリング。ストライプのシャツにストライプの紺のパンツ。でも靴をバレエシューズにすれば男装にならない。
てろんとした素材のテーパードパンツに、Vネックのゆるっとしたニットを合わせ、かわいいデザインのハイヒールを合わせれば、パンツスタイルも女らしくなる。
■夏に履くパンツ、冬に履くスカート
冬は寒いからパンツを履き、夏は涼しいからスカートを履く。
と考える方も多いかもしれない。
ところが、私の場合、45歳を過ぎたころ、逆になってきた。
真夏であっても、素足を人様にさらすことに抵抗が出てきたのである。
ナチュラルストッキングが嫌いだ。
5月から9月上旬までの暖かな気候の間は、極力素足でいたいと思う派(仕事や社交などの縛りがない日に限る)。
よってその期間は、素足の露出が少なくて済むパンツを履くことが増えた。
逆に晩秋から冬の間は、厚手のタイツで足の生々しさが隠せるので、短めのスカートだって気軽に履ける。短いスカートはやっぱり気分が軽やか。冬限定のお楽しみアイテムとなったのである。
さらに、パンツは靴とのバランスが最も重要なアイテム。ブーツの筒の高さや細さのバランスを取るのが意外と難しいパンツ。もっぱら素足にパンプスやサンダルが履ける春夏にこそ活躍するアイテムとなった。
素足でサンダルを思う存分楽しめるのはパンツのメリット。
■パンツを履きたくなるとき
パンツを一番履きたくなるのはどんなときか―――。
それを考えてみると、
「とにかく前に進みたいとき」
「自分に負荷をかけて坂道を上がりたいとき」
一言で言うなら、「歩幅を大きく、脚の回転を速くしたいとき」だと思う。
それはもちろん山登りのときということでなく(笑)、自分の立ち位置がなんとなく停滞しているなと感じるときに湧き起こる。
仕事にしろ、プライベートにしろ、自分の足を1歩1歩前に進めたい。自分の筋肉で。
そう思う気持ちの強い日の朝、私はパンツを選び取る。
そしてとにかく、前を見て歩き続けよう! と自分を励ます。
そのパワーがパンツにはあるのだ。
これからも、自分の体型に合った細身のパンツを新旧交代させつつ、
パンツスタイルのコーデを思う存分楽しもうと思う。
男前にもなれる、女らしくもなれる、自由自在のパンツスタイルを愛して。