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受けても意味のない検査、むしろ推奨できない検査

検査は多いほうが安心だと思っていませんか? 実は検査にはメリットだけでなくデメリットもあります。会社員の人は毎年受ける健康診断があると思いますが、検査を受ける上で知っておいてほしいことを、医師の岡本彩さんにまとめていただきました。

受けても意味のない検査、むしろ推奨できない検査

■意味のない検査、追加していませんか?

医師として健康診断や人間ドックを担当していると、つくづく「意味のない検査を受けている人が多いなあ」と感じます。

「えっ、気づいたなら教えてよ!」って思いますか? 実は、検査項目は医師が決めているのではなく、会社の健康保険組合が決めていることが多いのです。

意味のない検査のわかりやすい例としては、毎年の健康診断で血液型を調べること。そんな検査をしている会社、けっこうあります。

血液型は、生まれてから通常、途中で変わることはありません。検査代も安くはないので、何度も調べるのは無駄だと思うのですが……なぜ毎年検査しているのか理由はよくわかりません。

ほかにも、年齢や症状に関係なく全員に腫瘍マーカーを受けさせる、40歳や50歳といった「節目の年」に頭のMRIを受けさせる、という会社もあります。

実は、症状がない人への全身PET、腫瘍マーカー、頭部MRIは「推奨されない検査」の代表例です。

■どんな検査も病気を100%診断できるとは限らない

検査は多い方が安心だと思っている人や、検査で100%病気が発見できると思っている人は驚くかもしれませんが、検査にはメリットだけでなくデメリットもあります。

代表的なのが、偽陽性(ぎようせい)の問題です。 偽陽性とは、「病気でない人が検査で異常と診断される確率」で、健康診断や人間ドックでは、この偽陽性が一般の方が思うよりずっと多いのです。

例として、「1万人にひとりがかかるガンの検査」を受けるとします。 この検査の信頼性(病気をただしく陽性と判断する確率)は99%と言われました。

あなたが検査で「異常あり」だった場合、ガンである確率はどのくらいでしょうか? 実は、たったの0.98%しかありません。

前回のコラム「医師が教える、乳がん検診のデメリット」でも乳がん検診の偽陽性について書きましたが、「要精密検査」「要再検査」と言われたら不安になる人が多いのではないでしょうか。

多い方が安心だからと、やたらと検査を追加するのは、もしかすると余計な不安を抱えることになるかもしれません。

■腫瘍マーカーによるガンの早期発見は難しいことも

よくオプションで追加される検査に、血液を使って調べる「腫瘍マーカー」があります。もともと腫瘍マーカーは癌の診断や、治療の有効性を知るための検査として使われていました。

病院では患者さんの症状や診察の所見から、「この人はガンの可能性が高い」と診断した場合に、腫瘍マーカーを検査することがあります。

しかし、健康な人を対象にする健康診断や人間ドックでは、ガンにかかっている人の割合(有病率)がそもそも低いので、病院で医師がオーダーする検査に比べると偽陽性が多くなります。

また、腫瘍マーカーはガン以外の良性の病気や、生活習慣の影響でも上昇します。有名なのが喫煙者でみられるCEAの上昇や、前立腺肥大によるPSAの上昇です。

人間ドックを行なう病院の統計では、腫瘍マーカーが上昇している人のうち、本当のガンは1%未満だったそうです。

がん診療ガイドラインを見てみると、 「腫瘍マーカー測定は膵癌の診断やフォローアップに勧められるが、早期診断には有用ではない」と書かれています。

また、健康保険を使う病院の検査では、「その病気の診断や治療に必要な検査だったのか」がチェックされますが、健康診断や人間ドックが自費であることも、不要な検査が増えやすい原因のひとつです。

■検査を受けてどうなりたいのか?

病気の原因はさまざまですが、加齢や遺伝などは自分ではどうにもできませんよね。病気にならないようにしたければ、禁煙する、飲酒を適量にする、運動するなど、生活習慣のうち「自分でコントロールできる病気のリスクを下げる」ことが一番です。

検査を受けることで生活習慣を見直すきっかけになるのであれば、まだいいと思います。しかし、検査で異常が見つかっても、必要な治療を受ける気や、生活習慣を改善する気がまったくないのであれば、症状がないのに多くの検査を受けるのはおすすめしません。

最後に、皆さんに知っていただきたいのが「Choosing Wisely」という活動です。Choosing Wisely(賢く選ぼう)とは、世界的に広がっている、「過剰な医療」をやめようというキャンペーン。

アメリカのChoosing Wiselyサイトには400以上の「不要な検査・治療」が紹介されています。日本はがん検診の受診率が低い一方で、健康な人のCTやMRIの検査が多い傾向にあります。

検査は多ければいいとは限らないことは知っておくといいと思います。

DRESS編集部

いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。

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