コンドームを持ち歩く女性に見る、本当の意味での自立
コンドームを女性も持っておき、パートナーが着けようとしないなら「着けてね」とはっきり伝えること――それこそ性的に自立した女性ではないか。経済的、精神的な自立も大切だけれど、自分の心と体を守るため、性的な自立も大事にしなければならない考え方だと私は思う。
■ゴムを着けたがらない男はダメ男 – しみけんさんの意見に心から同意
心地良い肌触りが特徴的なコンドームの無料サンプルがつい先日届いた。コンドームメーカーが無料でサンプルを送ってくれるキャンペーンを実施していたのだ。応募したのはパートナーの男性ではなく私である。
絶対にコンドームを着けると思っていたパートナーが、その日は突然コンドームを使わずにコトに及んだ。慌てて枕元にあったコンドームに手を伸ばしたときにはもう遅く、「途中からでも着けて」と伝えることよりも先に頭の中には「今までは必ず着けていたのにどうして?」という思いでいっぱいになり、その次に「嫌われたくない」という感情が襲ってきた。ひどく混乱したし、モノ扱いされたようで傷ついた出来事だった。
AV男優のしみけんさんは著書『SHIMIKEN’S BEST SEX 最高のセックス集中講義』(イースト・プレス)の中で「コンドームを着けない男は本当のダメ男」と語る。DRESSの記事「セックス中に言い訳する男は出世しない【AV男優しみけん】」でもそう伝えている。
現実では、「着けるとイケない」「外に出せば大丈夫」などと理由をつけ、コンドームを着けたがらない男性は少なくない。自らもその手の男性を多く見てきたし、女性の友人から「着けない男性」の話を聞くことも多い。
となると極端な話、「ダメ男はけっこう多い」という前提の上で、我々女性は性に関して向き合わないといけない(もちろん、自ら進んでコンドームを着ける、きちんとした男性も一部存在する、とお断りしておく)。
■妊娠を望まないなら、相手にコンドームを着けてもらう権利がある
コンドームは望まない妊娠を防ぐだけでなく、性感染症予防にも効果的ということは多くの人がご存知だと思う。近年は梅毒に感染する若者が増えているというデータが出ている。梅毒は江戸時代の遊郭で「花柳病」と呼ばれて流行した病でもある。鼻が腐って欠けてしまう症状があることから花柳界になぞらえ、「花落ち病(鼻が落ちる)」と呼ばれていた、なんて話も聞いたことがある。
ネットで画像検索すると、鼻がぐちゃぐちゃに溶け落ちてしまった患者の写真が出てくるので、気になった方は見てほしい。この写真を見ると、絶対に感染したくないと思うはずだ。
しかし、現在は性感染症を予防できるコンドームがあるにもかかわらず、梅毒が再び流行している。やはり、コンドームを着けないセックスを好む男性の存在と、冒頭の私のように予防したいのにできないケースもあるからだろう。
そして、もうひとつは知識不足。「性病じゃないけど、クラミジアっていう症状が出ちゃった〜」と笑いながら話していた友人がいたが、「いや、それ性病だから!」と突っ込まざるを得なかった。
コミュニケーションや愛情の確認、性的欲求の解消など、セックスをする理由は人それぞれだし、基本的には心が満たされる行為だから、それを楽しむのは良いことだと思う。しかし、セックスにまつわるリスクを考えない人・知らない人・知ろうとしないのは、大きな問題ではないだろうか。
たいていの物事にはメリットとデメリットがある。他の事柄にはデメリットについて考えられるのに、なぜセックスに関しては、デメリットを考慮したりその対策を行ったりしないのか。セックスが好きな人ほど考えねばならないことなのに、その意識の低さに疑問を持つ。そして、それを指摘すると「真面目だね」と、少し引いたような反応をされる。ええ、真面目で結構。ついでに先日は、子宮がん検査を受けた際、性感染症検査も受けた。
以下は広く知られた知識だと思うけれど、自覚しない人もいるので、あえて書く。コンドームを着けないセックスは男女ともに性感染症のリスクがある。そして、そこに女性は望まない妊娠のリスクが加わる。翌月にきちんと生理がくるか気が気ではなく、精神的な負担も大きい。
ピルを飲めば避妊効果はあるが、性感染症までは防げない。また、ピルを処方してもらうためには毎月クリニックに行く時間とお金がかかる。こう考えると「女性が抱えるものが大きすぎないか問題」が浮上する。だからこそ、妊娠を希望しない女性の場合、パートナーにコンドームを着けてもらう権利があるのだ。
■相手がなかなか変わらないなら、自分が変わる方が早い
コンドームを着けてほしい女性、一方でコンドームを着けたくない男性。人付き合いに関する悩みでよく、「他人は変えられないが自分自身は変えられる」というアドバイスを耳にする。コンドーム問題もこれと同じと考えてみよう。男性が用意しないなら女性が持ち歩こう。そして、「着けて」と言える勇気を持とう。相手がなかなか変わらないなら、自分から先に意識を変える方が手っ取り早い。
冒頭の出来事に戻る。後日、コンドームを使わなかった理由をパートナーに聞いたところ「ゴムを着けると萎えるから」とのことで、謝ってはくれた。今でも許してはいないが、今後のことを考えなければならないので、解決策を探した。
そして、至った考えが、なるべく着けていない状態に近い種類のコンドームを利用するということで、今回サンプルを申し込んだのだ。現在、コンドームの進化は著しく、薄さを追求した商品もあれば、女性の負担が少ないようゼリーが仕込んであるもの、かわいらしいパッケージのものなど様々だ。
この手の話はなかなか浸透しない。意識を変える人が増えることを望み、何度でも言うが、女性はただでさえ多くの負担を背負っている。望まない妊娠や性感染症、そして心の傷といったさらなる負担を抱えないためには、コンドームを着用することが一番の対策になる。
女性がコンドームを持ち歩くことは恥ずかしいことではない。仕事をしているから自立していると思っていても、性に関して自立できていなければ、真に自立しているとはいえない。とはいえ、セックスのリスクに関して、女性が一方的に気を遣わないといけないという事実は悲しいし、残念なことだと思う。「コンドームを着けない男はダメ男」という意識が男女共に芽生える日ははたして訪れるのだろうか。
Text/姫野ケイ
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