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一流の人は劣等感を認めて、エネルギーに変える - 『劣等感』(関本大介)を読んで

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関本大介というプロレスラーを初めて生で見たときの衝撃は忘れられない。厚い筋肉で覆われた頑丈な体ですさまじい試合を見せてくれた。そんな関本選手の自伝『劣等感』をご紹介する。

一流の人は劣等感を認めて、エネルギーに変える - 『劣等感』(関本大介)を読んで

世の中に美味しい飲食店は山ほどある。でも、何度も通うまでになる店は、ごく一部ではないだろうか。味はもちろん、雰囲気の良さ、接客の素晴らしさなど、何らかの「理由」があるから再訪し、対価を払う。時間と金という、ふたつのコストを超えるものを提供してくれるから、その店へ足を運ぶわけだ。

1年前の6月、強烈な体験をした。今でこそDRESSプロレス部 部長補佐として、プロレスに関するイベント開催に携わるなど、プロレスとの関わりが濃くなりつつある筆者だが、その日は人生二度目のプロレス観戦。

新木場にある会場で、全日本プロレスという団体主催の大会を観ていた。そこで、思わず目が釘付けになってしまったのが、大日本プロレスに所属する関本大介というプロレスラーだった。

■お金を払って、見にいきたい体

プロレス素人が見ても、ひと目で「この人はプロレスラーだな」とわかる、厚みとボリュームのある、鍛え上げられた筋肉で覆われた肉体。背はそれほど高くはないけれど、力強く盛り上がる僧帽筋や見事な曲線を描く上腕二頭筋、どっしりした太もも、ぶら下がりたい衝動にかられる逞しい肩や背中……漫画や映画の世界で見るような、異形ともいえるその体に見惚れた。

もちろん、肉体だけではない。のちに調べてわかったことだけれど、関本選手は「肉体凶器」「マッスル・モンスター」といった異名を持っていた。言葉通り、凶器同然の筋肉隆々の肉体を武器に、パワフルにぶつかり、相手を軽々と投げ飛ばす。鋼のような筋肉で覆われているのに、動きもかろやかで、技を受けるときもしなやかで、音・動きともに説得力がある。

関本選手の他にも印象に残り、今もチェックしている選手は数人いるけれど、その日は彼の存在で頭がいっぱいになり、帰宅後すぐに翌月に開催される大日本プロレスのビッグマッチ(主要大会)のチケットを手配したほど。「あの強烈な体、そしてその体で全力で闘うさまを観たい」と心から願った。

■一流の人は「劣等感」で“発電”する

そんな関本選手の自伝『劣等感』がこのほど発売となった。野球を中心としたスポーツの名門中高一貫校・明徳義塾で野球部員として過ごした6年を描いた「呪縛」、高校卒業後に大日本プロレスへ入団し、団体の栄枯盛衰を見てきた数年間を綴る「危機」、大日本プロレスが復活を遂げるまでの過程を振り返る「救世主」、ここ数年に渡り大日本プロレスが影響力を増す要因を紐解く「光」の全4章で構成されている。

プロレス界で名誉ある賞を多数受賞し、他団体からのオファーも多く、年間試合本数もトップクラス、怪我や病気などでの欠場もほとんどなく、業界で高い評価を受ける関本選手。彼に関する記事を読み漁っていると、「名勝負製造機」なんて言葉も目にする。

関本選手が出る試合は、ベタな表現かもしれないが、「記憶に残る試合」「なかなか忘れられない試合」「感情を激しく揺さぶられる試合」「心をギュッとつかまれる試合」になることがとても多い。プロレス初心者ながらそう感じてきた。

それなのに、書籍のタイトルが「劣等感」とは――。周囲から認められ、実績を残し、今も大活躍しているのに。根っこには、父親の期待を受けて、野球の名門校に入ったにもかかわらず、結果を残せなかったこと、後にプロ野球選手になったような、周囲の優秀な部員と自分を比較して、傷つき、葛藤し、もがいた時期がおおいに関係しているようだ。

■「人並み以上にやらないと、人並みにさえなれない」

「スーパーマンたちを間近に見ながら思春期を過ごし、しかも野球では3年間4軍のDチームだった自分は、自分のことを人並み以下の人間と、強く思うようになってしまった気がするのです」(33頁)

本書や他のインタビューを読んでいると、関本選手に対し「謙虚」「控えめ」「低姿勢」な印象を抱く。どんなにスタークラスのプロレスラーになろうと、ベースには劣等感という感情があり、それは一生なくなることはない、と自覚しているのだろうと思う。

プロレスラーとして劣等感を表に出すわけにはいかない。劣等感を覆い尽くすのは、過酷なトレーニングや練習によって得られる心身の強さ。だから、関本選手はトレーニングや練習で自分を徹底的に追い込む。

「自分のことを練習熱心だと言ってくれる方がいます。だけど本人にしてみれば、『せめて練習くらいは人並み以上にやらないと、人並みにさえなれない』という、追われるような思いがあってのことです」(33頁)

「今までで最大のプレッシャーなら、最高の力を自分に与えてくれるはず」(216頁)

これらの言葉から、ひとつの世界において「一流」「トップクラス」に分類される人間の本質が見える。一流の人間は、自分に甘くない。現状に満足することはない。日々少しでも自身を進化させ続けることへの欲望があり、逆に少しでも退化を感じると恐怖にとらわれる。だから、「前進すること」をやめられない。

1999年のデビュー当時から今まで一貫して、現在自分がいる位置から自分を引き上げる努力を、淡々と、黙々と続ける関本選手。自伝形式で大日本プロレスと自分を振り返って書かれた本書から伝わるのは、彼の愚直なまでの真面目さと誠実さ、そして自分に負けないタフさだ。

DRESSプロレス部の部員の皆さんやプロレスに関心のある方だけでなく、一流と呼ばれる人間の生き様から学びたい人にも読んでほしい一冊。

『劣等感』書籍情報

著者 関本大介さんプロフィール

1981年2月9日、大阪府大阪市中央区出身。中高と明徳義塾に通い、野球部に所属。高校卒業後、大日本プロレスに入団。1999年8月10日、対伊東竜二戦でデビュー。通常ルールによる「ストロングBJ」の地位を高め、大日本プロレスのみならず、全日本プロレス、DDTプロレスリングなど、他団体でも広く活躍している。175cm、120kg。Twitter( @sekimotodaisuke )

Text/池田園子(DRESS編集長、DRESSプロレス部 部長補佐)

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池田 園子

DRESS編集長。楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは人間の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。趣味のひとつはプロレス観戦。DRESSプロレス部 部長補佐を務める。著書に『はたらく人の結...

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