映画『ありがとう、トニ・エルドマン』の感想。泣いて笑って愛すべき父と娘の物語!

映画『ありがとう、トニ・エルドマン』の感想。泣いて笑って愛すべき父と娘の物語!

映画『ありがとう、トニ・エルドマン』が6月24日(土)より全国で順次公開されます。父と娘の交流をユーモラスに描き、ドイツ・フランスで大ヒットしたヒューマンドラマ。シネマの時間第7回は、『ありがとう、トニ・エルドマン』の魅力をあらすじと動画を含めながらアートディレクターの諸戸佑美さんに語っていただきました。


©YUMIMOROTO

もうすぐ父の日ですね! シネマの時間第7回は、そんな季節にぴったりな ハートフルで面白い父と娘の物語。映画『ありがとう、トニ・エルドマン』をご紹介させていただきます。

陽気で悪ふざけが大好きな父親と、たまに会っても仕事のことで頭がいっぱいのキャリア志向の娘。

そんな父と娘の関係をユーモラスに描き、人間にとっての”本当の幸福”とは何かを問いかけ、観る人の心を感動で包みます。

コンサルタント会社で働く娘のイネスは、キャリアも積んで一見自立しているのですが、父親のヴィンフリートから見ると仕事のことに頭がいっぱいで、余裕のない娘の様子が心配でたまりません。

過保護な父親だと言ってしまえばそれまでですが、親にとってみれば、いくつになっても子どもは子どもでかわいくて心配なものかもしれませんね。

不器用でハチャメチャなパパの愛情に、私も笑ってホロッと涙しました。

ユーモアたっぷりに仕事や親子、職場での人間関係、恋愛、価値観、社会格差などの問題もさらりと浮かび上がらせ、『DRESS』の読者の方々にもおすすめしたい映画です!

■話題のドイツ映画『ありがとう、トニ・エルドマン』あらすじーこの父と娘に世界中が涙し、笑った

悪ふざけが大好きな音楽教師の父・ヴィンフリートとブカレストのコンサルタント会社で働く娘のイネス。

性格も正反対なふたりの関係は、あまり上手くいっておらず、たまに会ってもイネスは仕事の電話ばかりしてろくに話すことすらできません。

ヴィンフリートといえば、ピアノ教室の生徒からは辞めたいと告げられ、年老いた母もかわいがっている老犬のヴィリーも元気がないという日常。

ある日心の支えだった愛犬の死をきっかけに、思い立って娘が働くブカレストの会社へ。
父の突然の訪問に驚くイネス。

大手石油企業の契約延長がかかった重要なプロジェクトに関わっているイネスは、上海支社への転勤という夢を叶えるためいつにもまして忙しく、父を構っていられないのでした。

とはいえ、アメリカ大使館の財界人が集まるレセプションに一緒に行くのですが、イネスは、ふとした一言で取引先の役員の機嫌を損ねてしまいます。

「なんの話だったんだ」落ち込む娘のことを心配そうに見つめるヴィンフリート。

また、スパではマッサージに文句をつけ、謝罪する店員に自分の会社は得意先だからと飲み物や食べ物を次々と頼む娘の様子にヴィンフリートは苦言を呈するのですが、取引先の妻に呼び出されたと父をその場に置き去りにしてしまいます。

帰宅してからもパソコンに向かい仕事に夢中です。
そして顧客との約束の前に疲れて寝入ってしまい、すっぽかしてしまうという大変な事態に。

「どうして起こしてくれなかったの?」と父に向かって泣きながら暴れるイネス。

「ほっとけないよ。大丈夫か」
娘を心配しながらもドイツに一旦帰った父でしたが……。

数日後、イネスの元になんと入れ歯をつけ、変なカツラを被り、別人に変装した父が突如現れたのでした!

「はじめまして。トニ・エルドマンと申します。人生のコーチングの仕事をしています」

それからというもの職場、レストラン、パーティー会場……イネスの前に神出鬼没に現れるエルドマン。

心配するあまりトニ・エルドマンという別人を演じることで娘に構う父と、そんな父の行動に戸惑いうっとうしさを感じる娘。

互いに思い合っているにも関わらず、今ひとつ噛み合わない父と娘の普遍的な関係。

父の思いははたして娘に伝わるのでしょうか。

■ブルガリアに伝わる幸せを呼ぶ毛むくじゃらの精霊「クケリ」

ヴィンフリートは、イネスが上司と言い争いをしているときや、職場の彼氏と同席しているパーティーの場など、イネスの居所を探し出し神出鬼没に現れますが、おかしなことばかりして笑わせます。

そんな父親にイライラしながらも無下にはできないイネス。
始終張りつめてしかめっ面ばかりだった彼女の顔も、まわりとの関係も少しづつ変化が訪れるのですが……。

見どころは、イースターのお祝いの席で、招いてくれた人たちへのお礼をしようと、ヴィンフリートのオルガンの伴奏で彼に促され、イネスがホイットニー・ヒューストンの『GREATEST LOVE OF ALL』を歌う場面です。その歌が、父と娘の心情やこの映画にとてもぴったりで素敵です。

「この世で一番の愛は とても近くにあるの」
「自分の愛さえあれば 強く生きられることを忘れないで」


ヴィンフリートのオルガンの演奏で、吹っ切れたように力強く歌うのです。

また、ラストシーンのイネスが開いたちょっとびっくりな誕生日パーティーに、これまたビックリな精霊「クケリ」が突然現れ……一体これはどういうことなのかは劇場でのお楽しみです。

「クケリ」とは、ブルガリアに伝わる幸せを呼ぶ毛むくじゃらの精霊で、ブルガリアのさまざまな地域で新春に行なわれる日本の節分や秋田県の「なまはげ」の似た伝統的なお祭りだそう。

「クケリ」に身を包んだ人たちが、腰につけたベルを鳴らしながら家々を訪れ、悪魔除けをし無病息災、幸せを祈るのです。

世界中が熱狂した、ユーモラスで心温まる父と娘の物語!

ぜひ、映画館でお楽しみください!

■映画『ありがとう、トニ・エルドマン』作品紹介

6月24日(土)よりシネスイッチ銀座ほかにて全国順次ロードショー!
公式ホームページ http://www.bitters.co.jp/tonierdmann/
(C) Komplizen Film

原題:Toni Erdman
製作年:2016年
製作国:ドイツ・オーストリア合作
映倫区分:PG12
配給:ビターズ・エンド
上映時間:162分
監督:マーレン・アーデ
脚本:マーレン・アーデ
製作:マーレン・アーデ、ミヒェル・メルクト
撮影:パトリック・オルト
美術:ジルケ・フィッシャー
衣装:ギッティ・フックス
音楽:アラン・メンケン
編集:ハンケ・パープリース

■映画『ありがとう、トニ・エルドマン』キャスト

ペーター・シモニスチェ=トニ・エルドマン
サンドラ・フラー=イネス
ミヒャエル・ヴィッテンボルン=ヘンネベルク
トーマス・ロイブル=ゲラルト
トリスタン・ピュッター=ティム
ハデミック・ミニス=タチアナ
ルーシー・ラッセル=ステフ
イングリッド・ビス=アンカ
プラド・イバノフ=イリエスク
ビクトリア・コチアシェフ=フラヴィア

絵・文=諸戸佑美(アートディレクター・編集ライター・イラストレーター)

この記事のライター

アートディレクター/編集ライター/イラストレーター。本の装画や挿絵、広告のアートディレクション、デザイン、執筆など多方面に活動。

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