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出産後のセックスレス ―― 子供ができても男と女でいるために

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産後セックスレスにはさまざまな原因があります。作家の大泉りかさんは子供ができてからというもの、育児・家事・仕事など抱えるものが増え、セックスレスに近づいていきました。あまりの負担に「セックスする時間があったら、家のことを手伝ってほしい」と思うようにも。そんなときに見つけた「心のケア」とはなんだったのでしょうか。

出産後のセックスレス ―― 子供ができても男と女でいるために

子育てが始まって、生活ががらりと様変わりした。起床時間は以前に比べて4時間以上も早くなり、夜は滅多に外に出なくなった。

以前は365日中、360日は飲んでいたお酒も、今では週に一度程度しか飲んでいない(4ヵ月の子を持つ母としては、これでもやや多い方だと思う)。だから、夜はたっぷり時間があると思いきや、息子が寝てくれた後も、そわそわして何も手につかない。

「今夜はゆっくりとDVDで映画でも観よう」と思っても、息子が目を覚まして中断されることを考えると、いまいちその気になれず、仕方なくたいして見たくもないテレビ番組を、ぼんやりと見ているうちに眠くなり、そのうち寝てしまう。

■夫婦の過ごし方もずいぶん変わった

タイムスケジュールだけではなく、夫婦の関係もずいぶんと変わった。そのことを実感したのは、寝室に敷かれた布団を目にしたときだ。以前はぴったりとくっついて敷かれていた夫とわたしの布団の間が、10cm以上も離れていた。

いつも夜寝るときは、わたしを真ん中に挟んで、左手に夫、右手には息子を添い寝させている。以前は夫に抱きついて寝るのが習慣だったから、少しでも布団が離れていると「これじゃ、抱きつけない!」とクレームを入れていた。

今は息子のほうを向いて寝ているし、寝かしつけはバタバタと慌ただしく、自分も倒れ込むようにして寝入ってしまう。だから、10cm以上も離れた布団を目にしたときにようやく、知らぬ間に夫に対する態度が変わっていたことを知って、愕然としたのだった。

これまでは「妻と夫」という一本の線だった家族の形が、息子が加わったことによって三角形になり、いっきに複雑さが増した。三角形といっても、正三角形ではなく、二等辺三角形だ。頂点には息子がいて、わたしと夫がそれぞれ下で支えている。

支えるといっても、時間にも体力にも限度というものがある。だから、これまでは夫に向けられていた分の労力が、そのままスライドして息子に費やされることになった。夫もわたしも大人だから、大概のことは自分でなんとでもなるが、家族の中で息子だけが、寝返りさえもうつことができない赤ちゃんなのだから仕方がない。

育児、家事、仕事、夫。赤ちゃんに言葉は通じないし、家事をしないと生活が回らない。仕事に甘えは利かない。唯一、わたしの事情を慮ってもらえるのが夫だと思っていた。

だからこそ、抱えているもので、いっぱいいっぱいのところに「俺には構ってくれないの」などと言われると、腹が立って仕方がない。「これ以上、わたしに負担をかけないで」とついキツい口調で返してしまうし「変わったよね」なんて嘆かれた日には「子どもが生まれたっていうのに、変わらないほうがおかしいでしょ」と怒りが沸騰する。

ようやく子どもが眠りについて、両手が自由になったところで、ベタベタとまとわりつかれると「ちょっと休ませてくれない?」とつい険のある声だって出てしまう。

「ああ、なるほど。こうして産後、夫婦はセックスレスになっていくのだな」と諦観する思いもあった。けれど、それはなんとしても避けたいと思ったのは、昔同棲していた恋人と、レスに陥って苦しんだことがあったからだ。

■正直、セックスする時間があるなら家のことをしてほしい

夫婦の両方がセックスに興味がなくなって、生活の中にセックスがないことにどちらも不満を覚えず、それでも、仲良くともに暮らすことができるのならば、セックスレスでも別にいいと思う。

けれど、どちらかがセックスをしたい気持ちがあったり、そのことによって生活がギスギスするのならば、セックスはあったほうがいい。一度でもレスに陥ると、元の関係に戻すのはなかなか難しいのもセックスレスの特徴だ。だから「今だけはひとまずレス」というのも、できるだけ避けたい。

けれども現状、夫とセックスがしたいか。いや、したくないわけではないのだけれど、いざしようとしても、重い腰があがらない。それどころか、セックスの雰囲気を作られると「イラッ」ともしてしまう。

その理由は明白だ。家事や育児の負担が自分にばかりかかっているという怒り。分担をしてくれてはいるものの、それでもまだ足りない。セックスをする時間があったら、もっと家のことを手伝ってほしいとも思う。

要するに、わたしにかかっている負担が、大きすぎるのだ。そして、大きな負担を抱えて、どういう状態に陥っているのかというと、テンパっている……。そう、余裕がなさすぎてうろたえている。

■心の奥底から、癒されることが必要だった

だからわたしに必要なのは、余裕を取り戻すことだった。そのために出来ること――例えば、夫にもっと家事をしてもらうように言う、産後ドゥーラと呼ばれる区の家事育児の手伝いサービスを頼む、一時保育に息子を預けて時間を作る、実親に頼る、などなど……。

どれもやってみる価値はある。けれど、少し違う気がした。もっと心の奥から、癒されることが必要だと思った……もしかしてそれは夫に抱きしめてもらうことで解決するのではないだろうか。

そう思って、すぐに実行した。「お母さんやるのに疲れた。わたしだってぎゅっと抱きしめられたい」と愚痴を言いながら、夫に抱きつくと、心に染み入るような安心感と、心地いい脱力感に、自分がものすごく疲れていたことを思い知った。

子供の「父」としていてくれることは、もちろん大切だけれども、わたしの「夫」でいてもらうことも同じくらい必要なのだ。そうやって元気をもらったおかげで、ようやくのこと、夫を抱きしめる気になった。

「産後は夫に家事をやってもらって、できる限り、赤ちゃんの世話だけに集中できるような環境にする」といったことはよく聞くけれど、それに加えて「産後は夫に抱きしめてもらって、心のケアをしてもらう」ことを、わたしは提案したい。

産後セックスレスに陥らないためにも。

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大泉 りか

ライトノベルや官能を執筆するほか、セックスと女の生き方や、男性向けの「モテ」をレクチャーするコラムを多く手掛ける。新刊は『女子会で教わる人生を変える恋愛講座』(大和書房)。著書多数。趣味は映画、アルコール、海外旅行。愛犬と暮...

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