理想の姿へと自分をアップグレードする方法

年が明けて、気持ちを新たに前向きに仕事に向かっている人もいれば、早くもピリピリとした面持ちで戦闘モードに切り替えている人もいるだろうし、正月気分からなかなか抜けずにぐうたらする人も、働くことに漠然とした不安をいっぱい抱えている人もいるだろう。

その表情は様々かもしれない。

「１年の計は元旦にあり」 という言葉が表すように、元旦とまでも言わなくても、１年間の質は1月という初めの月に大きく左右されることはありそうだ。

前年の大晦日に大掃除をして「モノのリセット」をした私たちにとっては、新年の1月というのは「心の大掃除＝リセット」のタイミングだと思う。

私は名前に「冬」がつくように冬生まれで、誕生月が１月だ。そんなこともあって、毎年1月の誕生日には「１年の計」を立てることにしている。目標というような具体的な仕事目標というよりは、

「こんな風に働いていたい」
「こんな人に会いたい」
「こんな気分で過ごしたい」

といったもっとゆるっとしたもの。例えゆるっとしたものであっても、あれこれと来る１年間をビジュアルイメージしながら思いつくままに紙にペンを走らせていると、「今年はこんな新しいことをはじめてみよう」というような具体的なインスピレーションが降りて来たりする。

時には、「今の自分にはそぐわないモノ、行動、人、仕事の業務など」がはたと思いあたることもあるだろう。これこそが、「心の大掃除」だ。心の奥底では「もうやめたい」「何となく気分が乗らない」とこっそり感じていたようなことが、自分としっかりと向き合う機会を持つことでじわじわと表面に浮かび上がってくるような感じ。

それが今の自分をリセットして、新年にふさわしい自分へとアップグレードするために必要なプロセスなのである。

■つかみづらい「自分の現在地」

そもそも、「こんな風に働いていたい」というような理想の姿（目的地）にたどり着くまでに必要なのは、今の自分を把握することである。

もし、私たちが海賊の一味で宝探しをしているとする。とある島に埋められた秘宝を求めて海を航海するも、途中大嵐にあって方向感覚を失い、大海原で迷ってしまった。そんな時、せっかく手元に宝の在処を示す地図があってもまったく役に立たない。

「現在地」が分からなければ、「目的地」への生き方は定まらないからだ。

現代に生きる私たちは、自分の「現在地」が分からずに、人生という大海原に投げ出され、迷っている感覚をしばしば覚えることがある。

同じ部署の先輩、同期入社のライバル、SNSで近況を知るくらいの友人、大学時代からの友達、雑誌で見かける憧れの女性、年齢の近い親戚、マスメディアからその活躍や現状が伝えられるキャリアウーマンたち。

挙げればキリがないくらいのつながりに恵まれた私たちは、人と自分を比べるだけの環境条件は豊富に揃っているものの、実は肝心の「自分の現在地」はつかみづらいのである。

■自分の理想の姿が見つかる「おひとりさま合宿」

年収、肩書、所属している会社などコミュニティ、つきあっている恋人、住んでいる地域、持ち家か賃貸か、車種、行きつけの店、お気に入りのブランド服、毎日の幸せ度数と生活満足度など、人と自分を比べるだけの要素も星の数ほどある。

けれども、単純に「年収分布」から割り出される位置がイコール自分の現在地ではないだろうし、生活満足度といった「絶対的な価値観」はそもそも他人と比較するのは難しい。

だからこそ、私たちは理由のない「比較感情」に翻弄され、宝探しの冒険に繰り出す前に戦闘意欲をすっかり失ってしまう。

話を戻す。現代で溺れてしまわないために私自身が毎年欠かさず実践しているのは、先の通り「１年の計」を立てること。

自分と対話する時間を確保するために、最低一泊二日（可能であれば二泊三日。平日でも週末でも）ホテルを予約している。

言い換えれば、ちょっと贅沢な「おひとりさま合宿」。ホテルの部屋にお気に入りの本やキャンドルや入浴剤を持ち込んで、十分にリラックスしたところでこれまでの自分を振り返り、本音を洗い出す。紙に徒然なるままに書き連ねているうちに、きっと、現在の自分（現在地）と理想の自分（目的地）をつなぐ「航路」が姿を表してくるはずだ。