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映画『エゴン・シーレ 死と乙女』感想。美とエロスを描いた夭折の天才画家の生涯

ディーター・ベルナー監督の映画『エゴン・シーレ 死と乙女』。エゴン・シーレは、魂を揺さぶる鮮烈な作風で、独自の美とエロスを描き、20世紀初頭ウィーンで活躍した夭折の天才画家! 【シネマの時間】第2回、今回もアートディレクターの諸戸佑美さんに『エゴン・シーレ死と乙女』の魅力と感想について語っていただきました。

映画『エゴン・シーレ 死と乙女』感想。美とエロスを描いた夭折の天才画家の生涯

19世紀末から20世紀かけて活躍した画家「クリムト」と並び世紀末ウィーン美術史に、燦然(さんぜん)と輝く夭折の天才画家「エゴン・シーレ」。その美とエロスに満ちた作品を、目にしたことがありますでしょうか。

美男で才能あふれるシーレは、スキャンダラスな逸話も多いのですが、元来ひとたらしな面もあり、多くの女性たちを虜にしていました。

天才画家がどのような生き方をして、数々の素晴しい作品を創っていったのか。傑作の裏に秘められた物語が、映画『エゴン・シーレ 死と乙女』で見事に映像化されています。

私自身絵を描くので大変興味を持ち、独断と偏見でご紹介させていただきます。ウイーンの美しい自然や街並、建築や衣装など叙情的で耽美な世界もご堪能ください!

■名画「死と乙女」に秘められた愛の物語

2017年2月現在、20世紀初頭のウイーンで活躍した夭折の天才画家エゴン・シーレの半生を描いた、話題の映画『エゴン・シーレ 死と乙女』が絶賛公開中です。

端正な容姿から数多くのモデルと浮名を流すなど、スキャンダラスな逸話も多いシーレ。そんな彼の人生において、大きな存在であった2人の女性との愛と創作の日々。

最初のヌードモデルであり、兄を支え続けた妹ゲルティと敬愛する師グスタフ・クリムトから紹介されシーレと運命的に恋に落ちるモデルのヴァリです。

本作は、この2人の女性を中心に、明るく奔放な踊り子のモア、中産階級出身の妻エディットとその姉アデーレというシーレの絵画の中に描かれた、5人の女性たちとの関係を通して名画に秘められた愛の物語が明かされます。

第一次世界大戦末期のウィーン、エゴン・シーレはスペイン風邪の大流行によって、妻エディットとともに瀕死の床にいました。

そんな彼を妹のゲルティは、献身的に看病しこれまでの日々を回想します。

1910年、保守的で時代錯誤な古典主義を継承する美術アカデミーに失望し退学をしたシーレは、画家仲間と「新芸術集団」を結成。16歳の妹ゲルティをモデルにした「裸体画」で頭角を現していきます。

ある日、彼は場末の演芸場で踊り子のモアと出会います。褐色の肌を持つエキゾチックな彼女をモデルにした、鮮烈な作品で一躍脚光を浴びていきます。

又、クリムトから17歳のモデルヴァリを紹介されたシーレは彼女を運命のミューズとして数多くの名画を発表。シーレと同棲をはじめたヴァリは、公私ともに彼の最高のモデル兼恋人となるのでした。

幼児性愛者、ポルノ画だという誹謗中傷を浴びながらも、時代の寵児へとのし上がっていくシーレ。

しかし、第一次世界大戦が勃発。シーレとヴァリは時代の波に翻弄されていきます……。

■エゴン・シーレについて

芸術やアートに詳しい方はエゴン・シーレについて既にご存知の方も多いと思いますが、より劇場で楽しんでいただくために生い立ちなど背景を少し記しておきます。

エゴン・シーレは、オーストリア・ハンガリーの首都ウィーン近郊にあるトゥルテン・アン・デア・ドナウに生まれました。

父親は帝国鉄道の鉄道員をしていましたが、シーレが幼い頃に脳梅毒で狂気に陥って一家の財産たる証券類を全て燃やして亡くなり、生活が苦しくなります。そういった理由もあり、4歳年下の妹ゲルティとの絆は密接でゲルティーは15歳の頃からシーレのヌードモデルをつとめました。

劇中では、鉄道にまつわるシーンが印象的に演出されています。

その後、シーレは16歳のとき抜群の描写力によって名門ウィーン美術アカデミーに史上最年少で入学。2歳年下のアドルフ・ヒトラーは受験するも2年連続で失敗しているのでいかにシーレが優秀だったかわかります。

しかし、せっかく入ったアカデミーも失望して退学。尊敬する画家グスタフ・クリムトや親戚の援助を受けつつ、独自の作風を展開し芸術にすべてを捧げていくのでした。

劇中で17歳でウィーンにアトリエを構えたシーレが、クリムトのアトリエを訪ねる場面があるのですが私などはこの場面を見れただけでもこの映画に出逢って良かったと思いました。

クリムトが「僕もこんな顔を描けたらな」という言葉に応えてシーレは「僕は内面を描く」と言うのです。シーレの試みは、ただ単に美しいものを描くことではありませんでした。模写ではなく人物から何かを引き出し絵にしようとしたのです。

「絵(イラストレーション)は、感動をビジュアライズすること」。

私が、絵を描く際にいつも心がけていることですが、この場面を見て絵の神様に呼ばれたんだと思いました。

クリムトは熱心な後輩をとても可愛がり自分のモデルであったヴァリも紹介しています。

後に「金のクリムト、銀のシーレ」または「陽のクリムト、陰のシーレ」などと言われますが、同じ美とエロスを追求しつつもクリムトが黄金色を多用した豪華で煌びやかな絵を描くのに対し、シーレーは対象の内面をみつめ退廃的な作品を多く描きました。

ヌードや少女などの退廃的な絵は好きで描いていただけでなく需要がすごくあったのでした。日本の浮世絵の春画を見ながらポーズをとらせて描く場面もあり、数々の制作シーンも見所のひとつです。

いつ何時でも描かずにいられないシーレ。それは結婚を決める際にも当たり前のように優先されました。

シーレの最高傑作「死と乙女」をはじめ「ヴァリの肖像」やセセッシオンのクリムト「ヴェートーヴェン・フリーズ」など十数点の名画が、全編にわたって効果的に映し出されるのも見逃せません!

■大抜擢された美しきニューフェイス、ノア・サーベトラ!

エゴン・シーレを演じるのは、モデル出身の新人ノア・サーベドラです。

1991年、オーストリア東部オーパプレンドルフ生まれ。ウィーン音楽芸術大学の演劇科で学び15年にはエルンスト・ブッシュ演劇大学で合格し、本作で本格的に長編映画デビューを飾りました。

才能と美しい容姿を存分に生かし生涯のパートナーとも目されたヴァリを棄て、良家の子女を妻に迎えるエゴイスティックで野心的なシーレを端正な美貌、優しい笑顔とともに説得力たっぷりに演じて魅力的です。

また、ディーター・ベルナー監督の瑞々しい演出によって、オーストリアの森や河などの自然の描写も叙情的でとても美しい。

悲劇的な愛を描きつつも、若い主人公たちの生き生きとした青春の躍動感も感じられ心に残ります。魂を揺さぶる鮮烈な作風で独自の美とエロスを描き、20世紀初頭ウィーンで活躍した夭折の天才画家エゴン・シーレ。

名画「死と乙女」に秘められた愛の物語をこの機会にぜひお楽しみください!

■映画『エゴン・シーレ 死と乙女』作品紹介

2017年1月28日(土)より「Bunkamuraル・シネマ」
「ヒューマントラストシネマ有楽町」ほか全国順次ロードショー。

原題:Egon Schiele: Tod und Madchen
監督:ディーター・ベルナー
脚本:ヒルデ・ベルガー、ディーター・ベルナー
製作:フランツ・ノボトニー、アレクサンダー・グレール、バディ・ミンク、
アレクサンダー・ドゥムライヒャー、イバンチヤヌ
撮影:カーステン・ティーレ
美術:ゲッツ・ワイドナー
衣装:ウリ・ジモン
音楽:アンドレ・ジェジュク
編集:ロベルト・ヘンシェル
製作年:2016年
製作国:オーストリア・ルクセンブルグ作品
配給:アルバトロス・フィルム
上映時間:109分
映倫区分:R15+
©Novotny & Novotny Filmproduktion GmbH

■『エゴン・シーレ 死と乙女』キャスト

エゴン・シーレ=ノア・サーベトラ
ゲルティ・シーレ(妹)=マレシ・リーグナー
ヴァリ・ノイツェル(モデル、恋人)=ファレリエ・ペヒナー
モア・マンドゥ(踊り子)=ラリッサ・アイミー・ブレイドバッハ
エディット・ハルムス(妻)=マリー・ユンク
アデーレ・ハルムス(エディットの姉)=エリーザベト・ウムラウフト
アントン・ペシュカ(画家仲間)=トーマス・シューベルト
ドム・オーゼン(画家仲間)=ダニエル・シュトレーサー
グスタフ・クリムト(画家。シーレの師)=コーネリウス・オボンバ

【シネマの時間】
アートディレクション・編集・絵・文=諸戸佑美
©︎YUMIMOROTO

諸戸 佑美

本や広告のアートディレクション/デザイン/編集/取材執筆/イラストレーションなど多方面に活躍。

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