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すべての男は『年下』である【甘糟りり子の生涯嫁入り前】

実年齢は上でも、「真実の年齢」は……?

すべての男は『年下』である【甘糟りり子の生涯嫁入り前】

まあね、わざわざ言及しなくたって、周りを見渡せばほとんどの男性が年下という状況は、それほどめずらしくもない。四十を過ぎた辺りから、ふと気がつくと、男女を問わず、その場で一番の長老が自分だったなんてことは、ごくありふれた日常の光景だ。

しかし、私がお伝えしたいのは、彼らの「現実の年齢」ではなく「真実の年齢」である。

同じ歳だろうが、五歳上だろうが、十歳上だろうが、「男」という生き物はたいてい年下のそれだと思っておいた方が、いろんなことに納得がいく。私は母性原理主義者ではないので(いるよねー、母性=いい女の証しだと信じ込んでいる単細胞)、こんなことは認めたくはないのだけれど、でも、そう思わざるを得ないことが何度もあった。ほんの二十年だか三十年の間にね。ん?  ほんの?

奴らは、とにかくほめられたがっている。けれど、それを言葉には出さない。そのわりに凹みやすく、ちっちゃなことですぐに傷つく。どうでもいい体裁を整えるために、つかなくてもいい嘘をつく。のだけれど、たいていはその場の思いつきなので、すぐにバレる。嘘がバレるとコントみたいにうろたえ、時として逆ギレという荒技を繰り広げることもある。あー、あと、気まぐれに大人ぶったり器の大きいふりしたり、心の赴くままに甘えた戯言を口にしたりもする。目先の関心をひきたいがために、くだらないイタズラをしかけたり、たいしておもしろくもない冗談を得意気に連発する。でも、笑うとちょっとだけかわいい……。

というのが奴らの実態。

ほとんど、四歳の甥っ子と変わらないんですよ。多少の下駄を履かせてみても、まあ、六歳ぐらいというところだろうか。

それに気がついてから、時々心に吹き荒れる暴風雨があまり吹かなくなった。こんな対処方法、あっているのかどうかわからないけれど、少なくとも、いちいち対等に腹をたてたり、振り回されたりしていた頃より、物事がスムースに運んでいる気がする。

これが「年齢を重ねる」ということなのかもしれないね。

許すこと、追いつめるのではなく諭すこと、見て見ぬ振りをすること、あえて自分が悪者になること、これらは大人の特権だ。正真正銘の大人
の年齢になった今、これを使わずにいつ使うというのだ!

ここで、秋元康さんの言葉を紹介しよう。その昔、お仕事のお手伝いをしていた。その合間に、みんなが「コイバナ」で盛り上がった時にこうおっしゃった。「年上がきらいな男なんて、いるわけないじゃな〜い」

あれは十年以上も前のことだけれど、このひと言がずっと頭に置きっ放しにされていた。

当時の私は三十ちょい過ぎ。若くはなければ、大人ってほどの貫禄も余裕もない、中途半端なお年頃。できるだけ「年上カテゴリー」に入るのは先延ばしにしたいとセコく思っていたので、ちょっとした衝撃だった。年上好きって、特殊なカテゴリーでもなんでもないんだな、と。

若くてかわいい女の子は毎年、いや、毎日毎日新しいのが生まれてくる。そんなことに怯えているより、 ヴィンテージものはヴィンテージものの良さを表現したほうが、楽しい展開になりやすいのだ。まあ、私なんか、 ヴィンテージというより、もはやアンティークなのだが。味わい、ありますよ〜。

そう、子供を相手するには、大人の特権をフル活用すること。たとえ現実の年齢が年上でも、年下だと思って接してみる。一度、試してみてちょ。

それから、対「男」、対「恋愛相手」だけではなく、時には、他の人間関係に当てはめてみるのもいいかもしれない。ちょっとこじれた場合なんかに。「男はいつでも少年だ」、とか何とか、いったい誰がいい出したんだろう。ったく、いい気なもんだと思うけれど、その通りだなあとも思う。ムカつくことに、そこが魅力だったりもする。

と、まあ、奴らを助長させるようなことを書いていると、「それって都合のいい女じゃないの?」という声が、どこからともなく聞こえてきた。誰だって、いわれて嬉しいフレーズではないよね。これについては、次の回で述べたいと思う。あ、今回のタイトルは『すべての男は消耗品である』(村上龍著)をパクりました……。

Illustration / Yoshiko Murata

DRESS OCTOBER 2014 P.27

甘糟 りり子

作家。都市に生きる男女と彼らを取り巻くファッションやレストラン、クルマなどの先端文化をリアルに写した小説やコラムで活躍中。『産む、産まない、産めない』など著書多数。読書会「ヨモウカフェ」主宰。公式ブログ http://ame...

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