あなたをひとりにしない、おひとりさまエッセイ【TheBookNook #57】 2/4
1. 石黒由紀子『猫はうれしかったことしか覚えていない』
この作品は、著者である石黒由紀子さんが、共に暮らす猫“コウハイ”と、犬“センパイ”のささやかな日常を綴ったエッセイ集。
動物との暮らしを描く本ではありますが、いわゆるペット本やかわいい癒し系だけに収まらないのがこの作品の魅力です。
作中にあるさまざまな猫にまつわるエピソードは、ただのエピソードではなく、著者の視線を通して生き物が持つ自由さや一緒に暮らすことの面白さへと変わっていきます。そして、本書の随所に登場する“気づき”は押しつけがましくないのに、読み手の心に静かに残るのです。
猫はうれしかったことしか覚えていない。その真意は人間である私たちには分かりません。でも、著者自身が生き物に寄り添うことで嫌な記憶や焦りをそっと手放して行くという事実はエッセイという形で柔らかく描かれていますが、紛れもない事実。
猫のおかげなのです。きっと、実際に猫を飼われている方は共感できる場面がさらに多いかもしれません。読み進めていくほど、猫や犬だけではなく自分の生活まで愛おしく見えてくる本作品。
忙しさで目が曇ってしまう日々に、少しだけ呼吸を取り戻したいとき。そんな時に開きたくなる静かで優しいエッセイ集でした。全国の猫ちゃんに、幸あれ。
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