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オダギリジョー×永山瑛太。30代で人生の大切なことに気付いたら、仕事への気負いがなくなった

なんのことはない路地を、ただ歩く姿に目を奪われる。そんなふたりが初めて本格的にタッグを組んだのが、オダギリジョーが脚本・演出・出演を務めるオリジナルドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』(NHK)だ。第一線を走り続ける彼らの言葉から、自分らしい人生を歩むためのヒントを探したい。

オダギリジョー×永山瑛太。30代で人生の大切なことに気付いたら、仕事への気負いがなくなった

■お互いの存在に、ずっと刺激をもらっていた

――本作は、池松壮亮さん演じる警察官と警察犬オリバーの凸凹バディが不可解な事件に挑む、異色のサスペンスとのこと。まずは共演を振り返って、おふたりの感想を伺いたいです。

オダギリジョー(以下、オダギリ):瑛太くんとは意外といままで共演することがなくて、だからこそ今回お願いしてみたかったんです。せっかくちょっと遊べる企画というか、お祭りみたいな出来事だと思ったから、一緒に遊びませんか、みたいな感覚でオファーをしました。

永山瑛太(以下、瑛太):少し上の世代の先輩方のなかでも、オダギリさんだけはやっぱりどこか特別視していた部分があって……ずっと「オダギリさん、次はどんな洋服を着て、どんな髪型をして、どんなアプローチをするんだろう」って見ていたし、刺激をいただいてきました。だから、念願叶って今回ご一緒できることになり、うれしかったですね。コロナを経てお芝居をしたい気持ちが強まったり、これまでのお芝居の概念みたいなものを壊していかなくちゃなと思ったりしている時期だったから、この作品で僕は何をすればいいのかなとも考えて。そんな僕のアプローチを、オダギリさんは包容力を持って全部受け止めてくれました。

オダギリ:瑛太くんはいろいろと挑戦的に、台本を超えたお芝居を投げかけてくれたから、すごく楽しかったですね。この作品の絶妙なスパイスになってくれたと思っています。

瑛太:ずっとご一緒できたらいいなと思っていたのにすごく時間がかかってしまいましたが、このタイミングだったんだろうなと感じています。なんというか……有意義な時間、でした。

――瑛太さんのなかで、どうしてオダギリさんはそんなに特別な存在だったのでしょうか。

瑛太:たとえばドラマにはドラマの、映画には映画のアプローチがあります。そのなかで僕らの世代は、オダギリさんたちひとつ上の世代の背中を見ながら、「どうやって僕らの時代の新しい何かをつくれるか」ってことを模索し続けてきたと思うんです。だけどオダギリさんは「ドラマ」「俳優」みたいなカテゴリーにはまらず、「アーティスト」として存在していらっしゃった。仕事を抱え込みすぎて大変なようにも見えないし、ちゃんとオダギリさん自身のペースで、国内でも海外でも活躍していらっしゃったんです。それがやっぱりかっこいいなというか……ずるいなっていうか(笑)。

オダギリ:(笑)。

――見ている側からすると、おふたりそれぞれにずっと活躍を続けられています。だから「先輩・後輩」みたいな感覚をお持ちなのが、まずちょっと意外でした。

オダギリ:僕のほうはそんなにないですよ。2000年代頭くらいの日本映画界って、インディーズがすごく盛り上がっていたころだし、作家性の強い面白い作品がいっぱいあったんです。だから、年齢的には確かに一世代下なんだけど、大げさにいうと戦友というか……あのころの日本映画をともに盛り上げたチームっていう感覚があります。瑛太くんや(松田)龍平くんとかから、僕もたくさん刺激をもらっていました。逆に、池松(壮亮)くんたちの世代は、あの時代をギリギリ経験していないから、いろんな話を聞きたがってくれるんです。そういうところで、じつはジェネレーションギャップを感じたりしてるんだけど……瑛太くんたちとはそういうギャップがない。だから後輩というよりも、やっぱり刺激を分け合う良い仲間なんです。

オダギリジョー
永山瑛太

■いい意味で「仕事なんてどうでもいい」と思えるように

――そうした日本映画の黄金期も経て、いまのおふたりはとても楽しく、自分らしくお仕事されているように見えます。キャリアが長くなるにつれて、仕事との向き合い方は変わってきていますか?

瑛太:僕の20代は、事務所がちゃんとディスカッションしながらレールを敷いてくれて、すごくいい経験をさせてもらえたんです。それこそインディーズの日本映画だったり、反対に大きなバジェットの映画だったり、連ドラや舞台だったり、たくさんの現場を踏ませていただきました。それで、2021年の4月からは独立して、いまはすべて自分の責任でやっています。僕は写真も映画も撮りたいし、連続ドラマにも出たいし、街を歩いてキャーキャーも言われたい……んだけど(笑)、いまは焦りがなくなったというか、急がなくていいかなって思っているんです。仕事を遊びの延長線上に置いて、自分の許容範囲を少しだけ超えるくらいのことを、ちゃんとまっとうできたら、と。

――そう思えるのは、20代のうちにがむしゃらにやった素地があるから、でしょうか。

瑛太:そうですね。「苦しい」「つらい」みたいな記憶はないんですが、どこかで疲弊していた部分はあったと思うんです。ただ、それは当時の自分に必要なプレッシャーだったんだけど、いまはあんまり必要なくなった気がする。もっと自由でいいんじゃないかなって。でも、お仕事をいただけるということはやっぱりすごく幸せなことなので、自分がどんなふうに応えていけるかは、毎回きちんと考えていきたいと思っています。

オダギリ:20代ってやりたいことはいっぱいあるけど、未熟だから、やらせてもらえないじゃないですか(笑)。そのなかで「もっとできるのに」「わかってほしい」みたいな自分勝手なイラつきを抱えつつ、もがきながら闘ってきた気がするんです。でも、僕は30歳くらいのときにふとそういう気持ちから解き放たれる瞬間があって、以降はすごく楽になりました。大げさにいうと、いい意味で「仕事なんてどうでもいい」って思えたんです。仕事なんて人生のひとつの側面でしかないから、そこにだけがむしゃらになっていた自分がもったいない気がして……人間としてもっと豊かに営まなきゃいけないことがあるって気付いたんですね。それからは、気負いがなくなって自由になれたんです。仕事でもめることも少なくなったし、柔軟に対応できるようになりました。「自分は俳優だ」ということを引きずりすぎず、人間的な人生を歩めるようになったんだと思います。

瑛太:たしかに、自分の子がなにか問題を抱えていたら、ちゃんと向き合って何かを言ってあげなきゃいけないんじゃないかなって思ったりしますね。たとえそのために僕が現場に遅刻して、こいつはダメな俳優だって思われてもいいから、子どもたちがその問題をどう前向きに乗り越えていけるかを一緒に考えてあげたい。30代後半になって、オダギリさんがおっしゃったような仕事以外の大事なものが、僕も身に染みてきたように思います。

■自分らしくぶれずに生きていく、無駄な我慢はつくりたくない

――人生で大切にしたいことや本当にやりたいことが見えてきたとしても、自分の意志を尊重するのは、なかなか難しいように感じます。つい、周りから求められる役割を優先してしまったりして。

オダギリ:でも、求められることを自分が苦しみながら無理してやっても、結局はいい結果に結びつかないじゃないですか。それじゃ誰にもメリットがないし、だったらやらないほうがいいと思うんです。言い方はちょっと悪いかもしれないけど、やめればいいし、逃げればいい。または、何事でも自分がポジティブに向き合える状況をつくれたらいいですよね。僕だったら、人生であといくつの作品に関われるかわからないのに、気乗りしない作品に関わっている場合じゃないと思っちゃうんです。思い残すことのない人生を歩むには、限られた時間で無駄な我慢をしたくないから、やりたいと思えることに一つひとつちゃんと向き合っていきたいなって思っています。

――「自分の残り時間」や「これからの人生をどうするか」みたいなことは、瑛太さんも意識されていますか?

瑛太:そうですね。オダギリさんと同じように、苦しむぐらいだったら逃げていいし、やめてもいいと思います。……たとえば僕は、40代でサッカー選手になりたいです。1500mを5分台で走れるようになりたい。もしも俳優がいやになっちゃったら、そういうチャレンジをしたって全然面白いと思ってます。

オダギリ:面白すぎるでしょ(笑)。

瑛太:たとえばの話ですけど(笑)。まぁ、僕はもともと体育会系なので、精神と肉体がずっとつながってるんですよ。太りたくないとか健康でいたいという思いもあいまって、いまも基本的には毎日身体を動かしています。ランニングしたり歩いたり、鉄棒にぶら下がったり、そういう時間をとらないと、精神のバランスが崩れていく。

オダギリ:僕はそのへん真逆で、身体を動かす習慣がまったくないですね。本当にやばいです。家でだらだらしちゃう。瑛太くんがうらやましいです。

――じゃあ、オダギリさんはどうやって気分転換したり、ガス抜きしたりしてるんですか?

オダギリ:僕はそんなにたくさん働くタイプでもないから、あんまりストレスがないのかなって気がしますけど……。俳優って、現場も仕事相手もいつも違う、変わった職業だと思うんですよね。だから、仕事にストレスを感じることもあれば、別の仕事で発散することもできる。僕の場合はお芝居だけでなく、音楽をつくったり脚本を書いたりといろいろマルチタスクをこなすことで、逆にすこやかにいられるのかもしれません。

――おふたりは別に「自分らしく生きよう」と思っているわけじゃないんだろうけど、すごく自分らしく生きているように見えます。どうすれば、そうやってぶれずにいられるんでしょうか。

瑛太:僕は、虚勢を張ることはすごく大事だと思いますね。根拠がなくても自信を持って、口に出して言っちゃえばそうなる。「ぶれちゃうんです」なんて言わずに「僕はぶれないです。他人のことはあまり見てないし、意識はつねに内側にあります」って言葉にすれば、自然とそっちに引っ張られていくんじゃないかなと。

オダギリ:そうですね……。僕は今回のドラマをつくるときにも、周りからは結構「こんな変わった作品をNHKでやるなんて大丈夫か」って心配されたりしたんですよ。でも、ものづくりをするなら、批判や反論が生まれるのは当たり前。むしろ、そういう波紋を広げないものづくりなんて、意味がないと思うんです。だからこそ僕は、議論を喜んで受け入れながらも、このドラマで挑戦したいと思ったんですね。見る方にどう受け取られるかはわからないけれど、どう受け取られても正解だし、それぞれの感性でなにかを感じることがもう素晴らしいんですよ。
同じように、人生でなにか悩む局面があったとしたら、まずは悩んでいることをそのまま受け入れたほうがいい。そのうえで、自分を信じて肯定してあげられたらと思うんです。自分の悩みや感じ方をしっかり認めて、どう感じても正解だって思えたら、きっとぶれずに生きていけるんじゃないかなと思います。

取材+文:菅原さくら
写真:タケシタトモヒロ
編集:小林航平
ヘアメイク:シラトリユウキ(オダギリジョーさん)、勇見勝彦(THYMON Inc.)(永山瑛太さん)
スタイリスト:西村哲也(オダギリジョーさん)、壽村太一(永山瑛太さん)

オダギリジョーさん衣裳
ジャケット¥77,000、カットソー¥23,100、パンツ¥52,800(すべてJULIUS/JULIUS TOKYO STORE)シューズ¥121,000、メタルパーツ¥35,200(ともにJOHN LAWRENCE SULLIVAN)、ソックス スタイリスト私物 ▼お問い合わせ先JULIUS TOKYO STORE(03-5728-4900)

番組情報

ドラマ10『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』
脚本・演出・出演:オダギリジョー
出演:池松壮亮、永瀬正敏、麻生久美子、本田翼、永山瑛太、佐藤浩市 ほか
放送:2021年9月17日、24日、10月1日<全3回>
NHK総合 毎週金曜 よる10時~10時45分
公式Instagram:https://www.instagram.com/nhk_oliver/
番組公式HP:https://www.nhk.jp/p/ts/ZPZJP2WJ9R/

DRESS編集部

いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。

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