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2人目が「育てやすい」3つの理由(下)

2人目が「育てやすい」3つの理由(下)

 

2人目が「育てやすい」3つ目の要因としては、前回書いた1つ目の要因(母親としてのハードルが下がっている)と絡んで、子どもの性質が実際に「育てやすい」子になっているという可能性があります。

上の子が1歳を過ぎてから『フランスの子どもは夜泣きをしない』という本を読んで「失敗した!」と思いました。この本によると、赤ちゃんは寝ているときに多少ぐずってもしばらくは観察をして、自然に眠りにもどってしまうようであればそのままにしておいていい。しばらく泣き止まないときに、そこではじめて授乳をする。その方が自力で睡眠サイクルを身に着けていくことができる…のだそうです。

たしかに、赤ん坊はちょっとフガフガ言っていても、そのまま寝てしまうことがあります。ここで逐一抱き上げて授乳してしまうと、かえって起こしてしまうとのこと。1つ目の要因で書いたことと重複しますが、第1子のとき私は、ちょっとでも泣くと飛び起きて「どうしたの?」「おなかすいたの?」と対応していました。

これにより、上の子は実際にあまり長く寝ない子になってしまった可能性があります。実は我が家で上の子は3歳4カ月まで夜泣きらしきものをしており、3年以上私は夜中に起こされ続けていました。子育てのストレスは子どもが寝てくれるかどうかにかなり左右される気がします。

睡眠時間が短いことよりも、自分のペースで眠れないこと、何をしても寝てくれないことが辛く、イライラしてしまう。そうすると子供はますます寝ない。しかも2~3歳にもなると暴れるときの力も強いし、泣くときの泣き声もすさまじいし、隣の部屋にいても追いかけてくる……など、対応の大変さレベルは新生児の比じゃありません。

これに対し下の子は、上の子の世話もあるので自動的に多少放っておかれることになる。全力で暴れる3歳児と比べて新生児のほうが楽だと感じやすい面もあるでしょうし、放っておかれることで実際に第2子のほうが自分で睡眠のリズムを作れる子になっている可能性があります。

まぁ、きょうだいの年齢差にもよるでしょうし、もちろん第2子のほうが手間がかかるという事例もあるでしょう。何より、私もこんなことを言っていられるのは今のうちかもしれません。仕事に完全復帰すると2人育児と仕事の両立は、保育園を2か所まわらないといけない、感染症が順番にまわってくる、など子供が1人のときの2倍以上大変、という声もよく聞きます。

 

でも、1人ずつの子育ての大変さを比べれば、1人目の子育てはやはり余裕を持ちづらいものだと思います。先日、あるママが「2人目を産んだときの余裕で、1人目の育児を楽しめたらよかったのに。1人目のときは初めてのことだらけでオロオロせざるをえないし、子育てに対する気持ちの余裕がある2人目のときは上の子の世話もあるから、結局いつも楽しんでる暇がない」とおっしゃっていました。1人目の育児経験があまりにも大変だと、2人目以降を作るのをためらう「2人目の壁」にもなると思います。

これは、親になる私達が、実際に親になるまでほとんど育児というものに触れたことがないせいかもしれません。堀江敦子さんという私の幼馴染が、スリールという会社で「大学生を共働き家庭にインターンさせる」という事業をしています。彼女は「昔は近所の子ども、親戚の子どもを育てたりしていたのに、はじめて赤ちゃんを抱くのが自分の産んだ子、という人が増えている」と言います。

私自身、妊娠前は子育てに興味のある人間ではなかったし、人の子どもを抱くのなんて怖くて、ましてやお世話を手伝おう、体験しようという気にはなりませんでした。でも、スリールの大学生のように、子育てと仕事の両立に若いときから触れていたら。もう少し第1子を産む前に「子供って、子育てってこういうものだ」ということを知っていたら。第1子の育児経験はもう少し肩の力の抜けたものになり、「2人目の壁」も低くなっていたかもしれません。

産んでからも他の人の子育てをリアルに見る機会が少ないママ・パパもいるのではないでしょうか。経済的に余裕がある人では入院期間中ずっと個室という人も多いです。私は前回も今回も産院で大部屋も経験していますが、隣のベッドの話し声が聞こえると「助産師さんにこんなこと相談してもいいんだ」「こういう赤ちゃんとママもいるんだ」と勉強になったりします。

産んでから数カ月外に出ずに「孤育て」になってしまうという人もいます。体調や季節の要因もあるので、私のように産後1か月から活動しはじめることを推奨はしませんが、同じくらいの月齢または数カ月先の赤ちゃんを育てているママ同士で情報交換をするのも、自分の育児を客観視することになると思います。

自分が外に出るのが大変であれば、誰かに来てもらう、というのも手です。経験のあるシッターさんや産後ドゥーラの方にお願いすることでお世話の仕方を学ばせてもらうこともあるでしょう。大学生に手伝ってもらうことは次世代の子育てに貢献することにもなります。

早くから情報を集めすぎると不安になる面もあると思いますが、適度に取捨選択し、完璧な母・妻・女になることを目指さない。使えるリソースは使い、子育てをツライものにしないことが、子供たち、ママ、パパ、皆にとっての幸せにつながり、おそらくまわりまわって少子化対策にもなるのではないでしょうか。

中野 円佳

女性活用ジャーナリスト/研究者。『「育休世代」のジレンマ』(光文社新書)著者。東京大学教育学部卒業後、日本経済新聞社入社。金融機関を中心とする大企業の財務や経営、厚生労働政策などを担当。14年、育休中に立命館大学大学院先端総...

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