「神様の足のにおい」というチーズはいったいどのくらいくさいのか?
8月末に行った9日間のパリ旅行。市内のアパルトモン滞在中、毎日地元のスーパーやマルシェに食材の買い出しに行くのが楽しみでした。世界三大「くさい」チーズと言われるフランス・ブルゴーニュ産の「エポワス」。本場のチーズがいったいどのくらい強烈な臭気を放つのか? その味は? を試してみたくて、パリ最古のデパート「ボンマルシェ」の隣の「グルメ館」に潜入してみました。
ボンマルシェのグルメ館には、296種類ものチーズが売られていた!
フランス人って、本当に乳製品が好きです。ふつうのスーパーでもかなりの種類のチーズが売られていてちょっとびっくりしましたが「ボンマルシェ」のチーズの量は、日本人の私から見るとちょっと尋常ではありません!
ここはチーズを対面販売している量り売りコーナーです。数えたら98種類ありました。いかにもグルメそうな紳士が、ガラスケースに顔をくっつけるようにして、いろいろなチーズをカットしてもらっていたので、その様子を観察してから、私も何種類かのチーズをカットしてもらいました。
対面販売コーナー以外にも、「チーズ売り場」があります。全部で198種類。リコッタチーズ、カッテージチーズ、マスカルポーネ……とチーズの種類ごとにすら~り。フランス人って一生のうちにいったいどのくらいの量のチーズを食べるんでしょうか?
ボンマルシェのグルメ館は食のワンダーランド
種類が多いのはチーズだけではありません。ハム、トリュフ、フォアグラ……。理科実験室のような容器の中にプカプカとトリュフが浮いている豪快な量り売りもありました。手づかみでりんごみたいにがぶっとかじってみたい衝動にかられます。
カウンターから、なにかの足が「ニュッ!」と出ていたので近づいてみると、鹿の足を燻製にしたものを、目の前で削ってもらって白ワインを飲みながら食す紳士淑女。さすがナポレオンの国だけのことはあります。
対面販売カウンターのわきにはこうした小さなテーブルがいくつもあって、買ったものをその場で食べられるようになっています。会社帰りと思われる紳士が、買ったばかりのハムの包みをひろげて、かぶりついていました。
ワイン売り場には、嬉しいことにハーフボトルばかりを集めたコーナーもあります。ちょこっと一人分のワインを買いたい人にはいいですね!いやいやもしかしたら、この売り場で全部飲み干す用かもしれません……。
くさいチーズ「エポワス」との食べ合わせ対決!
チーズに話を戻します。エポワスと他数種類のチーズを買い込み、このチーズに合わせる食材もボンマルシェで選びました。食べ物とワインは同じ産地がよいと聞いたことがあるので、同郷のフランス・ブルゴーニュ産の赤ワインを。その他、マスカット、いちじく、アーモンド、くさい魚のマリネ、くさくないサーモンのマリネ、ジャガイモのオリーブオイルづけ、インゲン豆とトマトのサラダ。
アパルトモンに帰ってチーズの包みをあけてみると……1日運動したあとのスニーカー的な、なんとも言えないにおいが、もわ〜んと部屋に充満します。日本で買うのより何倍も強烈です。でもどこか懐かしいにおい。切ってみると、思ったより柔らかいチーズの断面がどろりと流れ出ます。味は、かなり濃厚です。勇気を出して鼻を近づけくんくん嗅いでみると、臭いのはウオッシュされたチーズの周りだけ。中身はさほど強烈には香りません。味は塩けが強くコクと旨味があり、思わず「ん〜」とうなる深い味わい。この個性的なチーズに一番あったのは、「いちじく」でした。どろりとこくがあるので水っぽい食べものは相性がよくありません。いちじくの甘さとチーズの塩けが絶妙にマッチして、「チョコレート柿の種」的な、甘くてしょっぱい複雑な味わいになりました。
今回のまとめ
前回行ったポートランドと違い、グルテンフリーやヴィーガンなどというメニューは、ここパリではほとんど見かけませんでした。カフェやレストランのメニューもバターたっぷりの重い伝統的なフレンチです。三大成人病の人が医者から止められているような食べ物に、舌なめずりするフランス人。世界中で流行っていようが、健康によかろうが、「ヴィーガンなんて関係ないね!」といわんばかりのフランス人の美食っぷり。そのどこ吹く風な姿勢に、歴史上幾度も他国に侵略されながら独立国家を勝ち取ってきたフランス国民の真髄を見ました!
プロフィール
ボタニカルプレス(押し花)作家
輪湖 もなみ
ファッション業界で16年バリキャリ生活をおくったのち、40歳で起業。現在都内著名レストランと契約し、年間100組のブーケの押し花を制作する(有)モナミアンドケイを経営。技術者育成のため、目黒区碑文谷の自宅で押し花スクールも開催し全国から生徒を集める。インテリアライフスタイル誌や、新聞のくらし生活欄の取材実績多数。
http://www.monami-k.com/