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日常生活に支障がある「生理」は「異常」。こわがらず、産婦人科に来てほしい

春。慣れない職場や厳しい環境で頑張る人のなかには、心身の不調を見逃してしまう方が少なくありません。とくに婦人科系の病気は「ちょっと生理が重いだけ」と思い込んだり、「産婦人科は抵抗がある」などと、受診を遅らせてしまいがち。気をつけたい症状や、病院を上手に活用するコツを、産婦人科医の髙橋怜奈先生が教えてくれました。

日常生活に支障がある「生理」は「異常」。こわがらず、産婦人科に来てほしい

■生理にまつわる不調のサイン

落ち着かない4月です。今年はいっそう特別とはいえ、そもそも生活が変わりやすい春は、身体にもストレスがかかりがち。生理痛やPMS(月経前症候群)は、ストレスや環境の変化によって強くなることがあります。

とくに見逃してほしくないのは、生理中のこんなサイン。

・毎回、鎮痛剤を飲まなければいけないほど生理痛が重い
・昼間でも夜用ナプキンを使わなければいけないほど、経血の量が多い
・毎回、血の塊が出る


経血の量や痛みの強さは、わかりやすいバロメーター。他人と比べることができないため、薬やナプキンの使い方でチェックするのがおすすめです。
痛みは「昔からこうだから」と気に留めない方が少なくないけれど、「生理痛で日常生活に支障が出る」のは、本来ありえないこと。生理じゃないときと同じパフォーマンスを発揮できないほど痛む方は、一度受診したほうがよいでしょう。子宮内膜症や卵巣の腫れといった異常が見つからなくても、「月経困難症」という病名がつきます。つまり、ひどい生理痛はれっきとした病気なのです。

初潮を迎えたころから痛みがひどかったのに、ずっと鎮痛剤で乗り切っていた……そんな方が、30代でようやく来院することがあります。でも、状態はすでに悪化。手術が必要なほどひどい子宮内膜症で、卵管や卵巣も癒着しており、自然妊娠が難しい身体になっていた、というケースはめずらしくないのです。10代から病院に通い、ピルを飲むなどの対処をしていれば、そこまでの事態にはなっていなかった可能性があります。

・生理が丸2カ月以上こない、または月に2回以上くる

また、頻度や回数も見逃せません。正常な月経周期は25~38日。その範囲をこえる場合は「生理不順でなかなかこない」「生理が2回きた」ではなく、不正出血や妊娠などを疑わなければならないのです。

以前、腹痛を訴える患者さんに妊娠の可能性を尋ねると「数週間前に生理が来ています」と言われました。でも、エコーで子宮を見てみると、小さな胎児が写っています。彼女が生理だと思ったのは、おそらく着床時の出血だったのでしょう。そのくらい、一般の方が言う「生理」は、実はあてになりません。

不正出血の背景には、子宮頸がんや子宮体がんが隠れていることもあります。20歳以上の性交経験がある人は、2年に一回、子宮頸がんの検査を受けるべきです。年齢によっては自治体でも補助があるので、ぜひ調べてみてください。

とにかく、自分が病気かどうかは自分や、ましてや他人が決めることではありません。医師の診察と判断によって、ようやくわかるものなのです。

■職場で体調不良が言いづらい・聞きづらいとき、どうする?

生理にまつわる不調は、つい軽視したり、隠してしまう人が少なくありません。とくに就職や転職、異動などが重なる春は、仕事を優先してしまう人が多いと思います。最初のうちは、早退や欠勤もしづらいですよね。

もしも「生理痛がつらいので休みます」と言いづらい雰囲気なら、伝え方を変えましょう。「お腹が痛いんです」でもいいし「お医者さんに『病院に来てください』と言われたから」でもかまいません。私たち医師は電話で相談を受けても、実際に診察をしないとなんともいえないため、基本的に来院を促します。それを逆手にとりましょう(笑)。
病院で異常が見つかれば治療をはじめるし、器質的な異常が見つからなくても生理痛があれば、月経困難症の診断書は出せます。そうすれば、次からはもう少し休みやすくなるはずです。

生理の異常を放置しておくと、不妊の原因になったり、治すためにもっと長く休まなければいけなくなることも……。どうしても仕事に穴をあけたくないなら、土日祝日の診察やオンライン診療に対応している病院を探しましょう。平日に休みをとらなくても受診できます。

マネジメント層は、部下や後輩の生理にどう向き合う?

また、あなたが部下や後輩をもつ立場だったとしたら、ぜひ気遣ってあげてください。とはいえ、生理について触れられることを嫌がる人もいるでしょうから、いきなり直接言うのは難しいですね。そんなときは「体調は大丈夫?」とふんわり尋ねてもいいし、自分が休んだり通院したりする姿を見せる、という手もあります。

上司が自分の身体を大切にしている姿勢や、定期検査をきちんと受けている様子を見せてあげれば、部下や後輩は自分の身体を大切にして良いのだと思えるようになるはずです。自分の身体を守ることが、結果として周囲の健康を守ることにも繋がるのだと思います。

■産婦人科は怖くない! 内診も必須ではありません

「自分の不調に気づいていない」「仕事が休めない」以外では「産婦人科が怖い」といった声もよく聞かれます。とりわけ多いのは「内診が痛そう、恥ずかしい」という意見。産婦人科を受診したら、ほぼ内診があると思っていらっしゃるのかもしれませんね。

もちろん、診察で必要があれば、内診をすすめることは少なくありません。けれど、心の準備ができていなければ、断ってもOK。「怖い」「恥ずかしい」などと正直に言ってくだされば、小さな器具を選んでなるべくゆっくり動かすようにしたり、カーテン越しにお話しながら進めたりと、こちらも工夫をします。カーテンがあると何をしているかわからなくて怖い、という方にはカーテンを開けて診察することも可能です。
貧血ぎみの人が採血をするとき、ベッドに横たわってするのと同じ。内診が怖い方には、怖さが減るようなケアをしたいと思っています。そのためにも、不安があるときは遠慮なく、一言おっしゃってください。

また、性交渉の経験がない方に、内診をすることはまずありません。どうしても必要な場合は産婦人科にある一番小さな機械を使いますが、多くはお腹の上から超音波検査をしたり、肛門から直腸エコーをとったり、ほかの手段を検討します。
ですから産婦人科診察前の問診表には必ずと言っていいほど性交経験の有無がありますが、必ず正しく記載するようにして下さい。

それでも産婦人科を敬遠する方があるとすれば、過去のトラウマでしょうか。医師の対応はやっぱり人それぞれ。対応が雑で高圧的な先生にあたり、産婦人科そのものが怖くなってしまう女性もいるとききます。でも、銀行の窓口でいやな対応をされたとして、窓口全体、銀行全体が悪いとは限りません。なんとか別の病院や別のお医者さんを選んで、大切な身体を守るための診察を受けてほしいと思います。友達の紹介やネットの口コミで、信頼できそうな病院を探すのもいいですね。

■産婦人科は「女性の悩みに寄り添う場所」

産婦人科は、生理に関することを含めて、女性の悩みならなんだって相談していい場所です。たとえば、生理前にいつも頭が痛くなる人は「月経随伴頭痛」かもしれないし、生理周期に合わせて肌が荒れるなら、ピルを飲めば一気に調子がよくなるかもしれない。子宮・卵巣に限らず、痛みやイライラ、ひどい食欲、肌荒れなど、気になる症状があったらぜひ相談しに来てください。内科や皮膚科で治らなかった悩みが、ホルモンバランスを整えるだけで、すっきり解消するかもしれません。

だからこそ病気の有無にかかわらず、気軽に相談できる「かかりつけ」を持っておきましょう。そのためには「ちょっと気になる」「なんだか痛い」くらいの、軽い症状のうちに、下見を。そうすれば、いざ深刻な不調が出てきたとき、信頼できる人に診てもらえます。

■生理は、コントロールできるもの

生理は女性にとって避けられないし、我慢するしかないものだと思っていませんか? 現代において、生理はもうコントロールできるものです。たとえばヤーズフレックスやジェミーナなど連続投与のピルを飲めば、個人差はありますがヤーズフレックスなら最大120日、ジェミーナであれば最大77日のあいだ生理を止めることができます。

いますぐ妊娠・出産を望んでいない女性にとって、生理は意味をなさない現象です。そのために月経痛やイライラなどの不調が出ているなら、妊娠したいと思うときまでピルでストップさせておくのは、むしろ合理的。子宮や卵巣を休ませてあげれば、いつかの妊娠のためだけでなく、生活の質を向上するにも役立ちます。

新しい生活がはじまって、いまこそ頑張りたい時期のはず。思うように頑張れないと、心も弱ってしまいます。だからこそ自分の生理を見直して、身体をいたわってあげてください。

編集協力/菅原さくら

髙橋 怜奈

産婦人科医 髙橋怜奈先生 東邦大学医療センター大橋病院・婦人科在籍。医学博士。趣味はベリーダンス、ボクシング、バックパッカーの旅。2016年6月にボクシングのプロテストに合格をし、世界初の女医ボクサーとして活躍中。ダイエッ...

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