『すべてのデートに祝福を』のバックナンバー
#1「待ち合わせは朝6時半、朝デートのすすめ 〜だって夜は忙しいから〜」
#2「「足袋持ってきてね」? 変わり種デートのすすめ 〜お食事だけが正解じゃないから〜」
#3「高級店のお礼は“500円”でいい。知的好奇心を満たす贈り物のすすめ」
#4「デートで相手との距離を縮める3手 〜話題探しに疲れた、優しいあなたへ〜」
#5「元カレとのデート。「忘れられない、いい女」を貫くための3手」
#6「気軽なのに新鮮、ユルいのに楽しい。ピクニックデートのススメ」
「銀座の夜の蝶をデートに誘いたい」という男性からの相談。提案したのは、あえての「真昼のピクニック」! ふたりの行く末は? 26歳で離婚後、数々のデートを重ねてきた編集者・藤田華子さんが語る、愉しいデートについてのめくるめく考察。
かつての合コン仲間とのあいだで、数年経った今も「あれは事件だった」と反省する夜があるんです。
それはずいぶん昔、相手はお笑い関係者。
売れっ子放送作家&芸人さん、その後輩芸人であるAくんとBくん。
対する女性陣は、地下系グラドルIちゃん、銀座のホステスMちゃん、パン屋店番U子、私。ちなみに私はMちゃんに呼ばれ、お笑い好きなU子ちゃんを召喚した次第。
「かんぱ~い」と和やかに飲み始めたら、若手のBくんが「なんか、緊張しますね。NGとかないんで、何でも話してください!」なんて言うもんで。女子たち気を許しちゃったんですよね。明け透けなトークが始まるわけです。
まずは、銀座で10年ホステスをするMちゃんのお仕事談義、バーキン講座が始まりました。この日も、もちろんバーキン&ルブタン。「バーキンは銀座のランドセルだから」とピシャリ言い放ち、タバコをくゆらせる。
そしてグラドルIちゃんが語る、壮絶な豊胸手術の経験談。「見ます?」って水着に着替えてくれようとしたけど、生々しい話を聞いた男性陣は尻込み。
ほかにも、パン屋店番U子の迷惑極まりない酒乱伝説や、私のすったもんだ離婚劇などなど、ありのままを話していたら、男性たちが浮かない顔に。
男性陣が他所で話しているであろう鉄板ネタ「高校時代ワルだった」武勇伝を、女性陣の奇天烈な話が食ってしまったんです。
途中から自粛したのですが、時すでに遅し。「楽しかったです!」とお礼のLINEをしたものの、先方は「なんか……力及ばずすみません。精進します」と落ち込む事態に。
申し訳ないことをしたと、今でもあの夜を思い出しては反省する私たちなのです。アーメン。
しかしですよ。なんと、ここからロマンスが生まれたんです。
若手芸人のAくんが、銀座のホステスMちゃんをデートに誘いたいと相談のLINEを私に送ってきました。触れたら絶対に傷を負うことがわかる類の美女に、惚れてしまったと。その気概に、まずは拍手です!!
数日後、こんどはMちゃんから電話が入りました。
当日、ふたりから写真が送られてきました。
シャボン玉遊びをして、はしゃいでいるMちゃん。
Mちゃんのお弁当を前にニコニコのAくん。
青空を背景に、缶ビールでの乾杯。
飲みすぎたらしく赤ら顔でうたた寝するAくん。
楽しい時間を過ごせたことが画面越しに伝わってくる。
ふたりは恋愛には発展しなかったけれど、良き友としていまも連絡を取り合っているらしいです。
▲Mちゃんが寝坊して5分で作ったガパオライスと、西友で買ったフルーツ盛り。布を持っていったら、それなりにおしゃれに見えたと喜んでいた
この話を聞いて、私も当時よくデートしていた男性をピクニックに誘いました。
その方は、毎日ロキソニンを2錠飲んでいるほど肩こりが酷く、超ヘビースモーカーの作家さん。昼夜問わずPCと向き合い、常にストレスフルな環境に身を晒しているであろう彼は、明らかにいつも不健康そうな顔をしていたのです(笑)。
ちょっと外の空気を吸いましょうと誘ったら、最初は億劫がっていたものの、「せっかくならPCもスマホも置いていくか」と乗り気になってくれました。
ただ、ぼんやりと青空を眺める時間。
「深呼吸したくなったのは、久しぶりだ」とビールを片手に彼は呟きました。
気持ちよさそうにシートに寝転び、閉じた目のまつ毛が風に揺れたとき、私は心底、こういうデートもいいなあと思ったのです。
・「デートといえば夜、いい感じのお店で食事するもの」という定石を破る新鮮さ
・疲れている人にとって、リフレッシュタイムにもなりうるユルさ
・相手の懐具合を気にせず楽しめる気兼ねなさ
・知り合ったばかりの相手にも警戒されにくい気軽さ
……とっても素敵だと思いませんか?
作家の片岡義男はある作品のあとがきで、「グッド・アイディアを実現させようとしている女性は、魅力的」と書いています。
秋は公園遊びにぴったりの季節。
大切な恋人と、気になっているあの人と、ぜひお出かけしてみてください。
みなさんが、実りあるひとときを過ごせますように。
編集者、エッセイスト。休日はお湯に浸かって読書か場末の飲み屋。将棋、竹原ピストル、江國香織が好き。ベリーダンサーの時は別の名。