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気軽なのに新鮮、ユルいのに楽しい。ピクニックデートのススメ

「銀座の夜の蝶をデートに誘いたい」という男性からの相談。提案したのは、あえての「真昼のピクニック」! ふたりの行く末は? 26歳で離婚後、数々のデートを重ねてきた編集者・藤田華子さんが語る、愉しいデートについてのめくるめく考察。

気軽なのに新鮮、ユルいのに楽しい。ピクニックデートのススメ

かつての合コン仲間とのあいだで、数年経った今も「あれは事件だった」と反省する夜があるんです。

それはずいぶん昔、相手はお笑い関係者。
売れっ子放送作家&芸人さん、その後輩芸人であるAくんとBくん。
対する女性陣は、地下系グラドルIちゃん、銀座のホステスMちゃん、パン屋店番U子、私。ちなみに私はMちゃんに呼ばれ、お笑い好きなU子ちゃんを召喚した次第。

「かんぱ~い」と和やかに飲み始めたら、若手のBくんが「なんか、緊張しますね。NGとかないんで、何でも話してください!」なんて言うもんで。女子たち気を許しちゃったんですよね。明け透けなトークが始まるわけです。

まずは、銀座で10年ホステスをするMちゃんのお仕事談義、バーキン講座が始まりました。この日も、もちろんバーキン&ルブタン。「バーキンは銀座のランドセルだから」とピシャリ言い放ち、タバコをくゆらせる。

そしてグラドルIちゃんが語る、壮絶な豊胸手術の経験談。「見ます?」って水着に着替えてくれようとしたけど、生々しい話を聞いた男性陣は尻込み。

ほかにも、パン屋店番U子の迷惑極まりない酒乱伝説や、私のすったもんだ離婚劇などなど、ありのままを話していたら、男性たちが浮かない顔に。

男性陣が他所で話しているであろう鉄板ネタ「高校時代ワルだった」武勇伝を、女性陣の奇天烈な話が食ってしまったんです

途中から自粛したのですが、時すでに遅し。「楽しかったです!」とお礼のLINEをしたものの、先方は「なんか……力及ばずすみません。精進します」と落ち込む事態に。
申し訳ないことをしたと、今でもあの夜を思い出しては反省する私たちなのです。アーメン。

■銀座の夜の蝶を、昼の代々木公園に

しかしですよ。なんと、ここからロマンスが生まれたんです。
若手芸人のAくんが、銀座のホステスMちゃんをデートに誘いたいと相談のLINEを私に送ってきました。触れたら絶対に傷を負うことがわかる類の美女に、惚れてしまったと。その気概に、まずは拍手です!!

Aくん「デートしたいんですけど、俺、金なくて……彼女が行きたいようなお店、ご馳走できません」

私「Mちゃんは吉野家も好きって言ってたよ。男気あるし、何なら食べさせてくれそう」

Aくん「いや、最初のデートくらいは格好つけたいです。ご馳走になるのは、ダメっす」

私「うう〜ん……じゃあ代々木公園でピクニックすれば? ふだん夜の世界にいるから、太陽を浴びませんかって」

Aくん「そ・れ・だ!」


こんなやりとりをしたんですよ。
で、彼は銀座の夜の蝶を真昼間の代々木公園に誘い、デートが決まったわけです。

■銀座の女Mちゃんは、代々木公園でもやっぱりいい

数日後、こんどはMちゃんから電話が入りました。

Mちゃん「ねえ、このあいだのAくんから『ピクニックに行こう』って誘われたんだけど、手作りのお弁当用意して行こうかな。レジャーシートとお酒はあちらに任せてもいいよね? お金ないって言ってたけど大丈夫かな?」


さすが銀座の女。相手の懐具合を考えたうえで、彼に引け目を感じさせないよう役割分担を提案します。聞けばAくんのこと「ラブではないけど、気が合いそう」という感触。

私「彼、甲斐性ないって悲しんでたけど、シートとお酒ならば無理のない範囲で買ってきてくれると思うよ」

Mちゃん「そしたら私、手が汚れてても食べられるようなピンチョスとかロールサンド作っていくわ」


私は「下に敷くかわいい布と、チーズとか並べる木製のプレートがあると一層おしゃれで盛り上がるって女性誌に書いてあったよ。楽しんできてね」と伝えて電話を切りました。

お店では、Mちゃんの隣に座るだけで5万円(!)です。
一枚のレジャーシートに隣り合わせで座って手作り弁当を食べられるなんて、Aくん昇天するんじゃないか?

■青空を背景に、缶ビールで乾杯

当日、ふたりから写真が送られてきました。

シャボン玉遊びをして、はしゃいでいるMちゃん。
Mちゃんのお弁当を前にニコニコのAくん。
青空を背景に、缶ビールでの乾杯。
飲みすぎたらしく赤ら顔でうたた寝するAくん。

楽しい時間を過ごせたことが画面越しに伝わってくる。
ふたりは恋愛には発展しなかったけれど、良き友としていまも連絡を取り合っているらしいです。

▲Mちゃんが寝坊して5分で作ったガパオライスと、西友で買ったフルーツ盛り。布を持っていったら、それなりにおしゃれに見えたと喜んでいた

■PCもスマホも置いて、外に出よう

この話を聞いて、私も当時よくデートしていた男性をピクニックに誘いました。

その方は、毎日ロキソニンを2錠飲んでいるほど肩こりが酷く、超ヘビースモーカーの作家さん。昼夜問わずPCと向き合い、常にストレスフルな環境に身を晒しているであろう彼は、明らかにいつも不健康そうな顔をしていたのです(笑)。

ちょっと外の空気を吸いましょうと誘ったら、最初は億劫がっていたものの、「せっかくならPCもスマホも置いていくか」と乗り気になってくれました。

ただ、ぼんやりと青空を眺める時間。
「深呼吸したくなったのは、久しぶりだ」とビールを片手に彼は呟きました。

気持ちよさそうにシートに寝転び、閉じた目のまつ毛が風に揺れたとき、私は心底、こういうデートもいいなあと思ったのです。

・「デートといえば夜、いい感じのお店で食事するもの」という定石を破る新鮮さ
・疲れている人にとって、リフレッシュタイムにもなりうるユルさ
・相手の懐具合を気にせず楽しめる気兼ねなさ
・知り合ったばかりの相手にも警戒されにくい気軽さ

……とっても素敵だと思いませんか?

作家の片岡義男はある作品のあとがきで、「グッド・アイディアを実現させようとしている女性は、魅力的」と書いています。

秋は公園遊びにぴったりの季節。
大切な恋人と、気になっているあの人と、ぜひお出かけしてみてください。
みなさんが、実りあるひとときを過ごせますように。

『すべてのデートに祝福を』のバックナンバー


#1待ち合わせは朝6時半、朝デートのすすめ 〜だって夜は忙しいから〜

#2「足袋持ってきてね」? 変わり種デートのすすめ 〜お食事だけが正解じゃないから〜

#3高級店のお礼は“500円”でいい。知的好奇心を満たす贈り物のすすめ

#4デートで相手との距離を縮める3手 〜話題探しに疲れた、優しいあなたへ〜

#5元カレとのデート。「忘れられない、いい女」を貫くための3手

#6気軽なのに新鮮、ユルいのに楽しい。ピクニックデートのススメ

藤田 華子

編集者、エッセイスト。休日はお湯に浸かって読書か場末の飲み屋。将棋、竹原ピストル、江國香織が好き。ベリーダンサーの時は別の名。

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