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高級店のお礼は“500円”でいい。知的好奇心を満たす贈り物のすすめ

26歳で離婚後、数々のデートを重ねてきた編集者・藤田華子さんが語る、もっとデートを楽しむための提案。第3回のテーマは「高級店でご馳走してもらったお礼、どうする?」。デートの相手に「どうして私を高級店に誘うの?」と思い切って聞いてみると、そのヒントが返ってきました。

高級店のお礼は“500円”でいい。知的好奇心を満たす贈り物のすすめ

女30を過ぎそれなりに人生経験を重ねると、高級店にお誘いいただく機会もままあります。

シェフや板前さんの魂が込もったお料理に舌鼓を打ち、おしゃべりに花を咲かせて帰宅。きらびやかな夜を記録しておきたくて店名をググったら、食べログの「ひとりあたりの予算」に目がぱちくり

我らが串カツ田中に、20回、いや30回は行けてしまうであろうコース料金! しかも高額ワインOpus Oneも開けていただいている……。

高級店に誘いお会計で「じゃあ2000円出して?」と言うメンズはいませんから、ご馳走になってしまいました。しがない会社員で、女性として自信を持ちきれない私は、ゲンキンにも今夜の総額を想像して血圧が急上昇するわけです。「ありがたや〜」と「恐縮〜」の嵐。

■予算2000円程度。こんなお礼を贈ってきました

今回は、こういうときのお礼ってすごく悩みますよねというお話です

心を込めて感謝のLINEは送ったものの、どうにも、それではいたたまれない。かといって、相手は私の10倍以上稼ぎのある方です。欲しいものは何でも持っていて、最近は真空管アンプを買って自宅にオーディオルームを作ったというほど生活に余裕がある。

これまで私が男性にお渡ししたデートのお礼は、こんなものです。同額のお返しをするのは難しいので、相手に気を遣われないよう、2000〜5000円程度。欲しいものは何でも手に入れているとお見受けし、私が素敵と思ったものをキュレーションする感覚で選びました。

・文具ブランド・PARKERのボールペン(保証書がついていて重厚感がある)
・1792年創業・日本橋木屋の爪切り(赤いベルベットの箱に入っている)
・HOTSOXの絵画靴下(フェルメールとゴッホの絵柄の靴下)
・品川駅で買える、軽井沢いぶるの燻製醤油(何にかけてもおいしい)
・王道で、ゴディバのチョコ(ハズレなし)

などなど。

お渡ししたら、皆さん笑顔を見せてくだいます。でもフェルメールの靴下、履いていただけているのか……ううう〜ん?

■単刀直入に教えて。「どうして私を高級店に誘うの?」

この悩みに終止符を打つべく、思い切ってデートのお相手に聞いてみました。

私「高級なお食事をご馳走になってばかりで、恐縮です。何かお礼させてください!」
彼「いいんだよ、一緒においしいものを食べたくてそうしているんだから」
私「(ううむ、そう言うとは思ったけど)……単刀直入に聞きますが、なんで高級店に誘ってくれるんですか? セックスもしないのに」
彼「(笑)そうだねえ……おいしいものを、一緒に食べて共有したいのがひとつ。もうひとつは、俺の知らない世界を見せてくれるからかな。30代の女性の日常、仕事、趣味の将棋、エンタメの話。俺にとっては知的で刺激的なんだ」


なるほど。そこで私の頭に浮かんだのは、『マツコの知らない世界』です。

自分とは縁遠い「鳩時計の世界」「ちくわぶの世界」にフォーカスを当てる回も、ついワクワクして観てしまいます。番組編集の妙はありますが、ひとえに知的好奇心を満たされるから面白いんですよね。

もちろんマツコの番組に比べたら、殿方は私とのデートには多少なりとも「色めき」を持ち合わせて臨んでくださっているのでしょう。でも、現代日本に生きている私たちは、食欲や性欲といった三大欲求と同じくらいのレベルで、知的好奇心を満たしてくれる相手を求めているのかもしれません

それにアカデミックな刺激は、向上心に繋がります。ビジネスパーソンはいつだって、自分をアップデートさせる刺激を欲しがっています。

■お礼は、500円でいい

このヒアリングで、答えが見つかった気がしました。

私は彼に会うたび、本を一冊贈ることにしました。お食事中に話題に上がった一冊や、最近読んで面白かった一冊。小説、伝記、歌集、詩集、ジャンルレスで、あえて彼が読まなさそうなもの、でも今の彼に読んでほしい本を選ぶこともありました。

あまりにも好きで本棚に二冊ストックがあった小説は、ちょっとイタズラ心を込めて、私が好きなセリフに引いた線を残したまま渡しました。

「『恋は落ちるものじゃなくてするものよ』っていうセリフに波線が引いてあって笑った」と言われたのは誤算でしたが(忘れてました)、これもまた一興、男女のお戯れです。電子書籍ではこういうやり取りは生まれないから、紙の本が存在する意味を強く感じた瞬間でした。

荷物になることを考え、贈ったのは文庫がほとんど。多くは500円程度のプレゼントです。
500円で私たちは、作中の田舎道を歩く爽やかな気分になれたし、主人公が失恋して新幹線を見送る寂しさを想像したりしました。相手の心は覗けないけど、そんな想像の共有を、彼はとても喜んでくれた。心が通うって、こういうことだと思います。


恋愛に正解はありません。カップルの数だけ、最適解がある。

もっとデートに多様性を。
もっと皆さんのデートライフが楽しくなりますように。

藤田 華子

編集者、エッセイスト。休日はお湯に浸かって読書か場末の飲み屋。将棋、竹原ピストル、江國香織が好き。ベリーダンサーの時は別の名。

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