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年の差デートを楽しむ極意 ~年齢をかせにしたくないから~

「年齢はただの数字!」と言えども、こと恋愛となるとそう簡単には考えられないもの。年の差デートを楽しむための心構えとは? 数々のデートを重ねてきた編集者・藤田華子さんが多様なデートの提案を綴る「すべてのデートに祝福を」、最終回です。

年の差デートを楽しむ極意 ~年齢をかせにしたくないから~

かつて詩人の谷川俊太郎は、『100万回生きたねこ』を代表作に持つ絵本作家の佐野洋子と婚姻関係にありました。谷川さんは、彼女のどういうところが好きだったのか聞かれたとき、こう答えています。

彼女は、ぼくの作品についてはそんなに批評しなかったんですが、ぼくという人間を批評してくれた。それは、ぼくにとってすごく良かったですね。

『あの人に会いに 穂村弘対談集』, 穂村弘著, 毎日新聞出版, 2019年



なるほどこれは、恋愛の真理だなあと感激し、私は思わず本に線を引きました。

今回は年の差デートについてです。年齢や肩書きではなく、大切なのは谷川さんの言うように“相手を見つめる”こと。年の差恋愛に踏み出そうか、まずはデートだけでも行ってみようか、悩んでいる方が笑顔になれますように!

■70歳のおじさまに言われた「時をかけさせる少女」

「“時をかけさせる”少女だね」と、少女じゃない歳ですが、言われたことがありました。

神保町に「燭台」というbarがあったんです。もう今はなくなってしまったのですが、夜な夜な編集者や作家先生が集うお店は、お酒とタバコの煙、乾いた本の香りでむせ返るような空間で。カーペンターズやパティ・オースティンが心地よく流れ、ちょっと現世を忘れるような不思議なお店でした。

私は、そこで一時期働いていました。常連のIさんに「好きだと言っていたミュージシャンが来日するよ、良かったら一緒に」とお誘いいただいたんです。Iさんはカルチャーへの造詣が深く、70歳だけれど少年みたいな感性で、本や音楽を楽しんでいる方。もちろん行きますとお返事し、デートが決まりました。

表参道駅から骨董通りを抜け、ブルーノートまで歩いたら汗ばんでしまうような初夏でした。開演前、お酒を飲みながら音楽や本、私の恋愛相談をしていたとき、こんな会話になったんです。

私「Iさんは若いころ、どんな恋愛をしていましたか?」
Iさん「う~ん、当時には珍しく、ずいぶんコロコロと彼女が変わっていたね」
私「まあ、プレイボーイだったのね!」
Iさん「そんなことはない。ただ、自分とは正反対の人と一緒にいたくて。たとえば僕は本をよく読んでいたんだけど、『人生で3冊しか本を読んだことがない』っていう子と付き合ってみたり。女性というよりも、人間に興味があったんだと思う」
私「でも、相手がすぐに変わっていたんでしょう? 少し寂しそうにも思えます」
Iさん「うん、寂しかった。とはいえ、そんなことをしているうちに、今の奥さんと知り合ったんだ」
私「どうして結婚を決めたの?」
Iさん「3カ月以上、付き合いが続いたから(笑)。ああ、若いころの話なんて久しぶりにしたよ。華ちゃんは“時をかけさせる少女”だね」


原田知世は“時をかける少女”だったけど、私はIさんの“時をかけさせた”と、言いたいらしい。

日常ではいろいろあるかもしれないけど、私の目に映るIさんは豊かに歳を重ねているように見えるから、同世代の彼を想像したくて聞いてみた30歳のときのこと。それが“時をかけさせる”魔法になりうるなんて。

もしかしたら、これは年の差を埋める魔法の言葉かもしれないなと面白くなったものです。

■22歳、インターンに来ていた彼とデートへ

一方次は、年下の彼とのデートです。
過ぎ去りし2019年、心の中で1万回「いいね!」を押した身のまわりの出来事は、友人K子(32歳)が、大学4年生の男の子Aくん(22歳)と恋愛の一歩を踏み出したこと。ふたりの年の差10歳。

女三十路を超えると、年下の男性と恋愛を始めるにはなにかと、本当になにかと気を使うことが多いのです。

たとえば、自分が若い彼の未来を奪ってしまうのではないかと考えたり。逆に男性は女性の年齢が責任としてのしかかったり。そういった人生に関わることから、生活の些細なことまで。そのへんの葛藤は、一度も彼氏ができたことのない33歳の主人公が、会社にアルバイトとしてやってきた21歳の男性と恋に落ちる漫画『きょうは会社休みます』に描かれているのでぜひ読んでみてください。

話を、私の友人に戻します。
Aくんは友人のオフィスで、半年前からインターンをしている大学生。32歳でしばらく愛だの恋だのから遠ざかっているK子が、当時「可愛い男の子がインターンに来たの!」と喜んでいたので、それは良かったと仲間内で乾杯をしました。

初対面からお互い惹かれ合っていたにもかかわらず、最初のデートがなかなか決まらない。なぜならK子は「どこで何を食べて良いかもわからないし、お会計も悩んじゃう。そして何より、もっと好きになっちゃったらどうしよう、もにゃもにゃ……」と、彼を大切にしたいからこそ揺れ、迷っていたんです。

ここで、煮え切らない彼女に対しAくんが放った一言が素晴らしかった。

「K子さんの気持ちもわかります。じゃあ、Kさんが気を使わなくて済むデートしましょう。俺が普段いる場所で、K子さんも楽しめそうな遊びをするはどうですか?」と。
それならAくんは背伸びをする必要はない。そして彼がいろんな提案をしてくれた末、デートコースができました。

13:00 彼の大学の学食でランチ
14:00 映画
17:00 お茶
18:00 彼のバイト先の居酒屋で食事


K子「学食、私も行ってみたかったからうれしかったよ。それにわかってはいたけど、高いお店でデートしても何だかしっくりこなくて、私、ひとりで近所の居酒屋でホッピー飲んでから帰宅したりしてたんだよね。何を食べるかとか、どこに行くかとかじゃなくて、誰としたいかだよなあって、よく理解した」

「年齢はジャストナンバー、ただの数字!」という方もいますし、私も自分の人生を考えるならば、それには賛成です。でも、こと恋愛となると、年齢ってそんなに簡単に「ただの数字よ!」と割り切れないもの。

ライフステージや生物学的老化の具合が同じパートナーを選ぶほうが、いろいろと、ことをスムーズに運びやすいから。それを埋めるのは愛や思いやりといったソフトな部分と、今回のような協議(提案、アイデア)、そういったものなのかなと思います。

まだまだ彼らの関係がどうなるかわかりませんが、K子に幸あれと願います。

■何はともあれ、いろんなデートを楽しんで

K子のように、デートに行くことすら、躊躇ってしまうこともあるでしょう。

美味しい高級店に行くのが良いのか?
お会計はどうするのか?
相手の生活エリアに合わせたほうが良いのか?
二軒目のお店も考えたほうが良いのか?

……考えだしたらキリがないし、「わ〜ん、面倒!」と投げ出したくなるくらい高度な気遣いが必要です。
でも、デートの正解はひとつではありません。学食でランチを食べるのもいいし、公園で朝ごはんをともにするのも素敵。
カップルの数だけ、楽しいデートは存在すると思います。

これまで本連載「すべてのデートに祝福を」では、さまざまなデートのかたちを紹介&提案してきましたので、ぜひ迷ったときに頭の片隅に思い出していただけるとうれしいです。

みなさまの幸せなデートライフを祈って!


『すべてのデートに祝福を』のバックナンバー


#1待ち合わせは朝6時半、朝デートのすすめ 〜だって夜は忙しいから〜

#2『足袋持ってきてね』? 変わり種デートのすすめ 〜お食事だけが正解じゃないから〜

#3高級店のお礼は“500円”でいい。知的好奇心を満たす贈り物のすすめ

#4デートで相手との距離を縮める3手 〜話題探しに疲れた、優しいあなたへ〜

#5元カレとのデート。『忘れられない、いい女』を貫くための3手

#6気軽なのに新鮮、ユルいのに楽しい。ピクニックデートのススメ

#7デート後のお礼合戦を愉しむために心がけたいこと

#8江國香織、片岡義男、加賀まりこに学ぶ、ロマン溢れるデート3つ

#9年上も年下も、楽しき年の差デート ~年齢をかせにしたくないから~

藤田 華子

編集者、エッセイスト。休日はお湯に浸かって読書か場末の飲み屋。将棋、竹原ピストル、江國香織が好き。ベリーダンサーの時は別の名。

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