4歳の小さな恋 初めて作ったバレンタインチョコレート【あの日あの味 #2】
忘れられない味、と聞いて頭に浮かぶのはどんな味ですか? 「あの日あの味」は、フードコーディネーターの音仲紗良さんが、いつか食べた“あの味”をエピソードと共に紹介する連載コラムです。今回は、甘酸っぱいバレンタインのエピソードとともに、簡単に手作りできる「混ぜるだけ」のトリュフをご紹介。
人生で初めてバレンタインデーにチョコレートを作ったのは、4歳のころだった。
渡す相手は、クラスで人気者だったコウヤくん。
チョコレートを作るといっても、ただ溶かしたチョコレートを、ひと口サイズの小さなキラキラのアルミカップに流し込んで、ピンクや黄色や黄緑のカラフルなチョコスプレーをトッピングするだけのシンプルなものだったけれど。
親子で仲が良かったから、渡すときは母に付き添ってもらった……ような気がする。
きっと緊張していたのだろう。肝心なところを覚えていないのだ。
ホワイトデーには、コウヤくん(ではなくおそらくお母さんの)手作りの星形のクッキーをもらった。
その星形のクッキーの表面には、卵黄が薄く塗られていて、ツヤツヤとおいしそうに光っていたこと。
噛むとほろほろと解けて、バターの香りが口いっぱいに広がり甘く満たされたこと。
それだけは、おぼろげながらに覚えている。
31歳のいまでも、幼稚園のバレンタインデーの思い出をパラパラと思い出せるのは、
そんな恋の一歩手前のときめきやワクワクに、喜怒哀楽の欠片がたくさん詰まっていたからなのかもしれない。
それからずっと、「バレンタインデーは手作り派」だった。
でも社会に出ると、バレンタインデーの贈り物には有名店のチョコレートやコーヒーなどの嗜好品のほうが好まれるシーンが増え、「バレンタインデーに手作り」は少し照れ臭い“お年頃”になった。
甘いものを必ずしもみんな好きなわけではないし、健康を意識する“お年頃”になったからでもある。
そして、仕事に追われて物理的に作る余裕がなくなったことも「手作り派」を卒業した要因のひとつだ。
でもこの頃はフードコーディネーターという仕事を口実に、心置きなく手作りできるようになった。
あの頃作ったチョコレートを、いまの私が作るなら。
甘いものが好きではない方にも、健康を意識して甘いものを控えている方にも、仕事に追われて作る余裕がない方にもオススメできる「混ぜるだけ! 砂糖・乳製品不使用」のトリュフを紹介したい。
カシューナッツでコクを、レーズンで甘さや風味を、ココアパウダーでカカオの芳しさを出した大人のトリュフ。
甘すぎず、レーズンが洋酒のような風味を醸し出すので、ワインのあてにもぴったりだ。
混ぜるだけ! かんたんトリュフ
材料(作りやすい分量)
カシューナッツ:90g
レーズン(無添加):60g
A ココアパウダー:20g
A バージンココナッツオイル:20g
ココナッツパウダー(コーティング用):適量
作り方
1.カシューナッツ、レーズンをフードプロセッサーに入れて攪拌し、細かくなったらAを加え、全体がまんべんなく混ざるまでさらに攪拌する(※)。
2.1を手で丸めて、冷蔵庫で30~1時間冷やし、コーティング用のココアパウダーをまぶす。
(※)フードプロセッサーがない場合は、厚手のビニル袋に上記の手順で材料を入れ、空気を抜いて封を閉じ、麺棒でコロコロ転がしたり叩いたりして潰し、全体をよく混ぜれば、食感を楽しめるトリュフができる。
あの頃のように小さなアルミカップに入れて、さらに100円ショップで売っているお弁当用のピックを刺してみた。
これなら手が汚れずに食べられる。
ひとつずつラッピングしても、少し深めのボックスに入れても可愛らしい。
みなさんのバレンタインデーの思い出は何ですか?
手作り派を卒業した方も、もともと手作りが得意ではない方も、「混ぜるだけ! 砂糖・乳製品不使用トリュフ」で、甘酸っぱい初恋の気持ちを久しぶりに思い出してみては。
フードコーディネーター、ライター。株式会社ぽかぽかてーぶる代表取締役