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発達障害・うつ病の「生きづらさ」を解消するためには? 当事者が語り合う。ほっしー×姫野桂 対談レポート

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うつ病・発達障害の当事者たちが語る「生きやすくなるための小さな工夫」

発達障害・うつ病の「生きづらさ」を解消するためには? 当事者が語り合う。ほっしー×姫野桂 対談レポート

専門学校で国家資格をふたつとり、エンジニアとしてIT企業に新卒入社。しかし、その半年後にうつ病を発症し退職。その後ブログ「メンタルハック」を運営し、「新しい時代の働き方・生き方」をメンタル疾患経験者の視点から発信し、人気ブロガーとして活躍するほっしーさん。

そんなほっしーさん初の著書『うつを治す努力をしてきたので、効果と難易度でマッピングしてみた』が発売。自らの体験や根拠を交えながら、「効果高い・お手軽」な対処法から「効果低い・難しい」対処法まで具体的に解説した一冊。

その発売記念として、下北沢のB &Bにて「『生きづらさ』を『生きやすさ』に変える小さな工夫について話そう」が開催された。

ゲストは、発達障害当事者を多く取材し、『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』の著書を持つと同時に、ご自身も発達障害当事者であることを明かしているフリーライターの姫野桂さん。

うつ病・発達障害の当事者が日々感じている「生きづらさ」と、それを解消するためにできる小さな工夫とは? 当日の模様を一部レポートとしてお届けする。

■やる気が起きないと「うつ病を治す」気力もなくなる

姫野桂(以下、姫野):ほっしーさん、今日は福岡からいらっしゃったんですよね。

ほっしー:ここに来る途中も迷っちゃって……東京は難しいですね。

姫野:ちょうどさっき担当の編集さんが下北沢の駅まで迎えに行って、やっとここにたどり着けたという。まずは、うつ病と発達障害の当事者の立場から「生きづらさ」についてお話したいと思います。

ほっしー:そもそもの前提として「うつ病とはなんぞや」というところからお話ししますね。みなさんは「単極性うつ病」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは双極性障害との対比で、躁がないうつ状態のことを言います。以前は単極性うつ病と双極性障害は「気分障害」という言葉で一括りにされていたのですが、最近はまったく別の病気として扱われることが一般的です。そして、最近は「新型うつ病」というのもあります。正式には、「非定型うつ病」といって、若者に多く、好きなことをやっているときは元気になるのが特徴的です。

姫野:家にいるときは元気なのに、とよく言われるやつですね。

ほっしー:そうですね。そしてうつ病の生きづらさとして挙げられるのが、まず“「気持ちの問題では?」と言われる”こと。

姫野:ああ。

ほっしー:これ、いまだに、この時代でも言われるんですよね。実際僕は両親にも言われます。当事者ではないとわからない苦しみではあるのですが。

ほっしーさん(@hossymentalhack

ほっしー:そして、次に“文字通り「なにも」やる気が起きない(タイプによる)”。これは実はかなり切実な問題なんです。というのも、仕事でやる気が起きないというのも大変ではあるのですが、「うつ病を治すぞ」という気力すら湧かなくなってしまうからです。精神科に行くだけの日ですら辛くなる。

姫野:何もしたくない状態って、どういう気分なのでしょう。

ほっしー:これはうつ病になったことがある人ならわかると思うのですが、体がベッドに張り付いて動けなくなってしまうんです。普通のときに比べて重力が異常にかかっているようなイメージです。そして、最後に“そもそも「うつ病」ではない可能性も(他の精神疾患)”というのもあります。

姫野:これはどういうことですか。

ほっしー:ブログにも書いているのですが、私は診断が双極性障害を経てうつ病に変遷しています。もともとうつ病と双極性障害の見分けってすごく難しいんです。ずっとうつ病の治療を受けていたのに双極性障害でした、というパターンもある。困るのが、うつ病って基本的に抗うつ剤で治療を行うのですが、その薬を双極性障害の人が飲むと躁転して躁の状態が上がりすぎてしまったりするんですね。それを繰り返していると治りづらくなってしまう。

■発達障害もうつ病は無関係じゃない(二次障害)

姫野桂さん(@himeno_kei

ほっしー:発達障害の方も二次障害でうつ病を発症する方が多いんですよね?

姫野:そうですね。うつ病になっている方が多いです。私の方でもまず「発達障害とはなんぞや」という部分を説明すると、まず発達障害というのは、具体的にADHD(注意欠如・多動性障害)とASD(自閉スペクトラム症)、LD(学習障害)の三つに分類されます。

ただ、ADHDの中にも2パターンあって、ぼうっとしているタイプの人もいれば、衝動的な人もいます。ASDはコミュニケーションが苦手だったり極度のこだわりを持つ人が多くて、ちょっと変わった人だと思われやすい。LDは、知的な遅れはないのに読み書きや計算がうまくできないことがある。読み書きができないというのは、たとえば字が滲んで見えてしまう、ひらがなとカタカナが混同して見えてしまう、とかですね。

ほっしー:へえ。

姫野:人によって程度に差があるので、発達障害といっても一概にこうとは言い切れないところがあります。ちなみに私はLDが一番強くて、暗算ができません。その次にADHDの不注意が強い、ASDも少し入っていると診断を受けました。担当の医師からは障害者手帳がとれると言われています。

ほっしー:僕は自分の弟が、生まれた頃は自閉症だと言われていたのですが、結果的にASDだと診断されました。こだわりが強くて、こっそりリモコンの位置を変えても、すぐに気づいてものすごく怒る。

姫野:発達障害の生きづらさでいうと、まず「仕事でミスが多い、仕事が続かない」ことや「対人関係でトラブルを起こしてしまう」などが挙げられます。取材させていただいた方々の中には、転職を7回8回繰り返している人はざらにいて、コンビニのアルバイトを2週間でクビになった、という人もいました。そして、何よりも二次障害がとにかく辛い。それこそうつ病を併発している人はとても多いです。

■うつ病になるための「それなりの理由」を欲していた

ほっしー:仕事でミスを連発する、仕事が続かない、というのはうつ病の人にもけっこう多いんですよね。ただ、発達障害の人たちと違うのは、できる能力はあるのに気持ちができない、という点です。発達障害の人たちは自分がそもそも苦手であることをしようとしている。それに対して、うつ病の人たちは、かつてはできていたことができなくて、昔はできていたのにと落ち込んで、負のループに陥っていく。生きづらさは似ているのですが、そこはちょっと違いますね。

姫野:そうですね。ただ、仕事って人生の大半を占めるものでもあるので、ここを解決しない限り生きづらさってなかなか解消されないなとも思っていて。ほっしーさんは、学校を卒業したあとに新卒入社で入った会社でうつを発症されたんですよね?

ほっしー:そうですね、そうブログにも書いていました……書いていたんですけど、実は最近ちょっと違うぞってことに気づいてしまって。

姫野:え、そうなんですか。

ほっしー:ちょうど今日このイベント前に取材を受けてきたんですが、事前に質問事項をいただいていたので、それに沿っていろいろと過去を振り返りながら回答を書いていたんですね。そしたら、実は自分は入社前から精神的に調子が悪かったんです。というのも、僕はずっと勉強をしてこなくて、大学卒業後に偏差値35の状態から専門学校で猛勉強をしてエンジニアになるための国家資格をふたつとった。ですが、その無理がたたったのか、就職が決まった頃からずっと37度5分くらいの微熱が続いていて、落ち込みやすくなっていた。

姫野:勉強のしすぎで入社前からメンタルが崩れていたんですね。

ほっしー:あとは、両親との関係性や、小学校の頃のいじめの体験や、そういったさまざまな要素を重ねていて。だから、会社というのはあくまで引き金でしかなかったんですよ。正直、よくよく思い出してみると、すごくいい会社だったんです。上司は部下の話を聞いてくれるタイプの人たちで、お給料もいいし、残業代もちゃんと出る。めっちゃホワイトでした。

でも、そんなホワイトな会社にいたからこそ、うつ病になった自分を責めちゃったんですよね。ブラック企業だったりパワハラによって落ち込む場合は、それだけの理由がある。でも、僕の場合は「ただ自分が弱かっただけじゃないのか?」って。だからブログに書くときは、一生懸命会社の嫌なことを思い出しながら書いてました。

■完璧主義をやめるためにはTwitterがいい?

姫野:次は、生きづらさを生きやすさにチェンジする工夫について。まずはうつ病について教えてください。

ほっしー:正直、「知っているけどできないよ」って人の方が多いとは思うんですが、「他人と比べない」ことと「睡眠リズムを整える」このふたつだけちゃんとできれば、うつ病が治るとまではいかないけど、かなりの効果はあると思うんですよね。

姫野:他人と比べないって、なかなか難しいですよね。

ほっしー:完全にやめることは難しいんですよ。他人と比較したときに「あ、俺いま他人と比べちゃったな」って気づけるだけでもOKってことにしておく。それだけでもかなり変わるんですよ。比較して凹むときって、「誰かと比べると凹む」ということに気づいていなかったりするんですよね。ネガティブは連鎖するので、最初の段階で「どうして落ち込んでるんだっけ」と気づけるだけでも、メンタルの調子が良ければネガティブの連鎖は断ち切れます。これは、もうひとつの工夫である「完璧主義をやめる」にもつながるところですね。

姫野:完璧主義をやめるというのが、けっこう難しいですよね。ASDの人にも完璧主義の人は多くて、私も病院の診断でその傾向があると出ました。ただ、私は完璧主義なのだけど、できないことの方が多いから無駄にイライラしてしまう。

ほっしー:実は、完璧主義をやめるのに一番おすすめしているのがTwitterなんですよ。

姫野:Twitterですか。

ほっしー:僕、ブログでは偉そうに「他人の評価を気にするな」とか書いているけど、自分のツイートのRT数やいいね数はめちゃくちゃ気にして見てるんですね。そうすると気づくんですが、練りに練った渾身のツイートは大して反応がない一方で、適当に呟いたツイートが200リツイートされていたりする。みんな自分は完璧を求めているわりに、応援している人に対しては完璧を求めてなかったりするんですよね。だいぶ前に書いてバズった記事も、僕がすごく落ち込んでるときに勢いで5分くらいで書いたやつだったりするんです。

姫野:なるほど。そして最後に、「小さな達成が何よりも大切」

ほっしー:今日のお客さんの立場でいえば、このイベントに来ている時点で「すげえな俺」って感じです。いい質問をして帰らないといけない、僕や姫野さんに印象を残さないといけない、みたいなことを目的にしてしまうと、何も達成できない人生になってしまう。今日まずここに来た、来れなかったとしても来ようと思った、それだけで十分だと思う。

姫野:目標設定を下げるんですね。

ほっしー:もちろん「うつ病を治す」みたいな大きな目標はあってもいいけど、そこに至るまでに小さな目標をたくさん設定しておくと、自己肯定感って高まりやすいです。人間に記憶力ってけっこう適当で、達成した質よりも量の方が大事だったりする。いきなり跳び箱の八段を飛ばなくても、一段を毎日飛んで喜んでるだけでもいいんです。

■メタ認知は発達障害にもうつ病にもオススメ

姫野:次に発達障害の人たちが生きやすくなる工夫について。まず、発達障害は人よりもできないことが多いので、「普通の人と同じようにやろう」と頑張ってしまうと潰れてしまいます。私は自分が苦手なことはもう諦めて、たとえば経理は税理士さんにお願いしています。

あとは、人に頼ることですね。取材させていただいた方の中には、職場で発達障害だとは伝えていないのですが「自分はミスが多いのでダブルチェックをお願いしてもいいですか?」と職場の人にお願いしているそうです。

あとは、聞き慣れない言葉かもしれないですが「メタ認知」はとても大事だと思います。発達障害の人たちは自分のことを客観的に見れない人が多くて、勝手にひとりで盛り上がってしまったり、現実的に無理だろうと思うような量の仕事の計画を立ててしまいがちです。それを客観視できる。

ほっしー:これはうつ病の人にも有効かもしれませんね。というのも、うつの状態のときって全てをマイナスに考えやすいんです。たとえば、会社を辞めないといけなくなったとき、「ここでやっていけないような自分は生きていく価値がもうない」と思い込んでしまうことがある。

でも本当は、起業とかフリーランスとか、精神科に通いながら働き続けるとか、いろんな選択肢があるはずなんです。そういう部分が客観視できず、今の自分の選択肢しか見えなくてどんどん落ち込んでしまっていくことがあるので。

姫野:メタ認知はうつ病の人の認知の歪みを直す上でも効果的かもしれないですね。

■生きづらさを抱えながらも考える未来図について

姫野:参加者の方々からの質問も伺いたいと思います。

質問者:私はいま抑鬱状態で、毒親もいます。結婚とか子供を考える年になっていて、パートナーとも相談はしているんですけど、普通の人のように当たり前に出産したりするということは考えられません。おふたりが結婚や子育てについて考えているのか知りたいです。

姫野:正直私は、結婚自体できるのかなって感じなんですが。

ほっしー:僕はけっこうタイムリーな話題で、まさにそのことについて、この間9年間付き合っている彼女と話し合ったところなんですよ。

姫野:そうだったんですか!

ほっしー:子どもについてはお互いに触れなかったですが、結婚についてはかなり真剣に話し合いました。お互いに実家暮らしで、彼女は両親の手前30歳までには籍を入れたいと思っている。

でも、やっぱり今質問で仰っていた通り、普通の人みたいに勢いで結婚するというのはなかなか難しい。なので、籍は入れるけど一緒には住まない、というお互いに無理のないところに着地したいね、と。ただこれはパートナーのご両親にまだお話ししていないことだし、僕も正直悩んでいる最中という感じなのですが。

姫野:私は、自分自身、彼氏がもう4年くらいいなくて、えらそうなことが言えないのですが……ただ、取材してきた中で発達障害の当事者同士のカップルって意外と多いんですよね。

特徴的だったのは、男性側がASDだと女性の方が共感を得られないことによる「カサンドラ症候群(※)」で参ってしまうケースがあって、そこは難しいところだなと思いました。

※カサンドラ症候群:ADHDのパートナーを持つ人が陥りがちな身体的・精神的な不調。相手のあまりの共感力の低さ――共感力が低いというのは「人の気持ちがわからない」とううこと――から一緒にいる人が、「なんでわかってくれないんだろう」「なんでできないんだろう」と悩んだ末に、鬱になったり、無気力になったり、片頭痛など心身に支障をきたすこと。

ほっしー:なるほど。

姫野:ただ一方で、お互いの凸凹がぴったりと合って、できることとできないことを補完しあえる関係であれば相性はいいともいえます。妊娠については、発達障害の場合は遺伝なども含まれてくるので悩む方は多いみたいですね。

ただ、先日精神科の友人と奥さんの間に子どもができたんですが、彼は発達障害の当事者でもあって「どんなADHDの子が生まれてくるかな」とかなり前向きに捉えていました。

ほっしー:すごく楽観的ですが、発達障害に対する価値観もまた人それぞれですもんね。僕自身はいままさに悩んでいる最中ではありますが、ひとつだけ確実言えるのは、10年20年前に比べれば、人生計画は自由度が上がっているのかな、ということです。

結婚しなくても子どもを産まなくても、そこは多様な選択肢が人それぞれにあるんだ、というくらいの心構えでいてもいいのかな、と思っています。

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DRESS編集部

いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。

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