何歳から「おばさん」なのか、いつからおばさん化するのか。「お姉さん」の次に必ずやってくるはずの「おばさん」はしかし、女性にとって気安く口に出せない呪いの言葉と化している。どこか大人の余裕や愛嬌を感じさせる「おじさん」という言葉と同じように、「おばさん」だってもっとライトな言葉になってもいいんじゃないか。
「おばさん」は蔑称か
おばさんはブサイクの同義語ではない。ただの時間経過を表すこと言葉で、蔑称でなくなるといい。
私は今42歳。最近、周囲のスタッフに年下が増えてきた。現場マネージャーも、その上のマネージャーも年下だ。
まだ一緒に仕事を始めて日が浅いこともあり、相手がいろいろ気遣ってくれるのがわかる。その「きっと女性は年齢を気にしているだろうから、尊敬しているけどおばさん扱いはしていませんよ、という感じで接しなくては!」という切迫した義務感を感じると、ほんとに気の毒でならない。
私は30で子供を産んでから自分をおばさんだと思っている。息子たちに「ママは、おばさん?」と聞かれた時にはいつも「もちろん、おばさんだよ。しかも、きれいなおばさんだよ!」と答えている。‘母親は綺麗な人であった’という刷り込みは思い出を美しくするはずと思って半ば押し付けでそのように答えているのだが、もう一つ理由がある。
彼らが私に何度か「ママは、おばさん?」と聞くのにはわけがあって、子供たちの間では「おばさん」と「ブサイク」がほぼ同義で使われているようなのだ。だから、自分の母親がおばさんだったらやだなー、ということらしい。私が子供の頃も、というか自分が中年になるまで、確かにおばさんという言葉を使うときには、悪口とか、そうでなくてもネガティブな意味をこめていた。
でもおばさんは、お姉さん<おばさん<おばあさん というただの時間の経過を表す言葉なのだと子供たちにはわかってほしい。おばさんはみんな若くないからブサイク、というのは、若い人はみんな老けてないから美人、が成り立たないのと同じで単なる偏見だ。というか歴とした年齢差別だ。
おばさんで、かつ、きれいという状態はじゅうぶん成り立つ。毛玉のできた部屋着で髪ぼさぼさの私がそうであるかは別として(子供達は圧倒的にその姿を見ている時間の方が長い)、そういう概念が成り立つということを是非とも知って欲しいのだ。
「おばさん」が蔑称であるってことの裏には、女は男の欲情をそそってナンボという性差別的な視点があり、若い人しか性的な対象としないロリコン文化があり、それは強烈なマザコン文化の裏返しでもある。母親と欲情は切り離しておかないと具合が悪い。単に乳離れしていない男の都合ではあるのだけれど、厄介なことに女性もその視点を取り込んで自分に向けてしまうものだから、「もう私なんておばさんだから」とか言うのだ。
血液型と性格が何にも関係ないと科学的に証明されているのにいつまでも「私ってBだからー」とか言ってる女がアホに見えるのと同じように、年齢に執着して「こんなおばさんだしー」と言ってる女はあまり賢くは見えない。かといって、あらゆる手を使って肉体の時を止めようとしているのも鬼気迫る。「おばさん」は蔑称、という思い込みを捨てれば、年齢に素直でいるのはそれほど難しいことじゃないと思うんだけどな。