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私が「働かないで家にいて」と言われたら困る3つの理由

「男は外で働き、女は家を守るもの」。共働き世帯数が、専業主婦世帯を上回って久しい今も、このような主張を聞くことがあります。もちろん誰もが外で働くべき、というわけではありません。各家庭やカップルの事情に応じて形を選べばいい。ジェイ・キャストで執行役員を務める蜷川聡子さんが、「女は外で働くな」と言われたら困る理由とは。

私が「働かないで家にいて」と言われたら困る3つの理由

「女が働くことは社会の害悪だ」

大学時代に付き合っていた同い年の男性に言われたセリフです。当時の私は彼を論破しようとも考えず、「そうかなあ」なんて聞いていましたが、20年以上経っても覚えているということは、心の底では納得していなかったのでしょう。

彼の言い分は、女は仕事を教えても、すぐに結婚で辞めたり、妊娠で休んだりするので、採用するだけ無駄だということでした。まだ働いてもいない彼が言うのですから、きっと彼の父親など、身近な大人の影響を受けていたのだと思います。

■全女性が家事に向いているわけじゃない

今でも、こんな考えを持った年配の方の話を聞くことがあります。

「男は外で働き、女は家を守るものよ。女性が家事をして、子どもを産み育て、男性が帰る場所を作る。それも尊い仕事だもの」

確かにこういう役割分担が成り立っていた時代なら、少子化問題なんて起こらなかったのかも、と思うと、この考え方に正面から挑もうとは思いません。しかし、こと私に関していえば、とても受け入れがたいものです……。

第一に、夫はとても器用で、掃除も料理も得意です。本当は夫が専業主夫になってくれたらいいと思うくらいですが、私の収入もまだまだですし、彼は仕事もできるので外で働いています。

もしも家事が苦手でがさつな私が、外で働くことをやめてしまったら、きっと夫も「何をやっているのか」とイライラするに違いありません。できる範囲で家事を済ませたら、私も外で働いて家計を支えた方が合理的だからです。

■自分で生き方を決めるにはお金も必要

第二に、自分に収入源がないのは、やはり不安があります。我が家には今のところ離婚危機はありませんが、もし万が一、結婚を続けている意味がないとなった場合、私が働いていなければ選択肢が限られます。

ブロガー・作家のはあちゅうさんの『「自分」を仕事にする生き方』(幻冬舎)に、こんな記述がありました。

「最近、父と母は熟年離婚しました。私が子供の頃から二人はずっと仲が悪かったのでもっと早くに離婚したほうがよかったと思うのですが、離婚を考えるタイミングで常にネックになったのは母の経済力です(中略)自分の力でお金を稼がないと自分の人生の舵取りさえ出来ないのだと、これまた、私の頭の深い部分にインプットされました」(『「自分」を仕事にする生き方』19ページより引用)

この一点だけ取っても、女性に対して「女は家にいるべきだ」という考え方を押し付けるべきではない、ということがわかるでしょう。

女の生殺与奪は男に握られ、男は自分のプライドを満たすとともに好き放題できるようになってしまうのです。たとえ本人がそのつもりはないと言っても、特に子どもがいれば女性側の選択は限られてしまうでしょう。

■このままじゃ男性も倒れてしまうのでは

これと関連しますが、第三に、やっぱり社会と関わることのできる仕事というのは、人間の自尊心を高め、自己実現欲求を果たすためには、とてもいい手段だと思います。それを女性から奪えというのは横暴な考えでしょう。

先日、某医科大学での女性受験者の得点操作が明るみに出たとき、女性合格者を減らしていた理由が、「女性はすぐに辞めてしまうから」「男性より体力が劣るから」と元彼が言っていたことと同じで、20年経っても過去形になっていなかったのか、と驚愕しました。

体力があり、短い睡眠時間でハードに働ける男性が、これまでの仕事を切り拓いてきたことには敬意を抱きます。しかし、今後も、

「俺もやってきたんだからお前もやれ」
「拒む権利はお前にはない」

という地獄のバトンが受け渡されていると考えると、それってもう持続可能性のないやり方なんじゃないかと思ってしまいます。実際、看護師さんは女性ばかりで、ハードな深夜勤務を担っているではありませんか(もちろんこれにも課題があると思いますが)。

■「決められた形」にこだわらず、良い選択ができればいい

日本の労働人口は減り続けています。男性だけで仕事を背負い続けるとなると、今まで以上にハードに働いてもらわなければなりませんが、それはちょっと辛そうですよね。

これからの時代を考えている企業は、女性の活用についてもしっかり考えていくでしょう。

とはいえ、私は誰もが共働きをすべきと考えているわけではありません。ここまで書いてきたのは、あくまで私個人の事情であり、「決められた形」を押し付けられたくないだけであって、それぞれの家庭やカップルの事情に応じて形を選べばいいと思っています。

北条かやさんが弊社の連載「女子マネー考現学」(J-CAST会社ウォッチ)で、元ホストのヒモさんの存在をカミングアウトしたときには驚きました。しかし、彼の存在によって彼女の仕事や生活がうまくいっている様子は、読んでいてほっこりします。

何もせずに貢がせるだけのダメ男ならともかく、家のことをやり、働いている女性が気持ちよく帰ってくることができるなら、それも良い気がします。

仕事でも家庭でも、性別を超えてお互いが得意なことを活かし、助け合える社会がやってくるのを願います。

画像/Shutterstock

蜷川 聡子

株式会社ジェイ・キャスト 執行役員。 インターネットメディア協会 理事 1972年生まれ。商社系マーケティング会社を経て、2002年入社。2006年の「J-CASTニュース」創刊時には営業部長として、創成期のウェブメディ...

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