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セクシー女優をイメージキャラクターに起用する中国企業に思うこと

中国のSNS「Weibo」で最もフォロワーの多い日本人は元セクシー女優の蒼井そらさんです。2018年8月、ある企業のイメージキャラクターに着任した蒼井さんは、その際に赤いネッカチーフを着用していたことで中国共産党青年団のWeiboアカウントにより非難を受けることになりました。

セクシー女優をイメージキャラクターに起用する中国企業に思うこと

海外で抱かれている「日本」のイメージといえば、寿司やてんぷらといった料理にカワイイ、サムライ、そしてアダルトビデオ(AV)。

中国ではTwitterのようなSNS「Weibo」が広く利用され、なかでもダントツにフォロワーの多い日本人は、元セクシー女優の蒼井そらさんです。

2018年8月中旬現在1892万人のフォロワーを有しています(ちなみに、経営者として中国人から支持されている稲森和夫さんのフォロワーは1200万人)。

中国でも高い人気を誇るこの元セクシー女優が8月、ある企業のイメージキャラクターに着任しました。

その際、赤いネッカチーフを着用していたことで、中国共産党青年団のWeiboアカウントにより非難を受けます。

この事件を受け、中国のメルマガ「中国婦女報」は「人の注目を集めたくて、結果として自らのブランドイメージを貶めるような人選をしてしまっている。しかしそんな企業は実は今回のこの1社だけではない」といった内容の記事を紹介。

いくつかの「セクシー女優起用により企業に対するイメージをかえってゆがめてしまった例」を伝えています。

■企業の顔に選ばれてきた、日本のセクシー女優たち

中国では日本のセクシー女優をキャンペーンキャラクターに起用するケースも少なくありません。また、小さな企業だけでなく、上場企業でも起用の実績があります。

今回の報道では複数の例を挙げています。上述の蒼井そらさんは2012年、上海の隣に位置する浙江省の銘茶「西湖龍井」の全国キャラクターを務めました。

記事では、この人選に関するネット上の声として、「このように辱められたお茶はもう二度と飲まない」といったネガティブなものを紹介しています。

2013年には、ナスダックに上場しているネットイース社のプロダクトのイメージキャラクターとして、当時セクシー女優として活動していた沖田杏梨さんを起用しています。

2年前の2016年北京モーターショーでは、江鈴汽車のイメージキャラクターとしてセクシー女優の滝澤ローラさんが登場し、多くのファンを惹きつけたとしています。

ただし、この人選はブランドのイメージアップにつながったかというと決してそんなことはなく、同社がモーターショーで発表した新SUVの売れ行きは惨憺たるものだったと伝えています。

中国でも全盛を極めているオンラインゲーム、モバイルゲームにおけるセクシー女優の起用は枚挙に暇がありません。さらに記事では、アパレル系ECサービスを展開する凡客の新年会に蒼井さんが招かれたことや、2014年には同じくセクシー女優の波多野結衣さんがとあるゲーム会社の新年会に登場し、会場が沸き立ったことを例に挙げています。

ネット業界では新年会にセクシー女優を招くことがデフォルトになっているのか? そんなことをする業界は世界中を見ても中国のネット業界だけではないのか? とも批判しています。

■セクシー女優の起用は忌避すべきことなのか?

セクシー女優をイメージキャラクターとして起用するのは、忌避すべきことなのでしょうか? 

自ら望んでその道を志す人、あるいは始まりはなんであったとしても、それに誇りを持って演じている役者はたくさんいるはずです。セクシー女優だから、あるいは元セクシー女優だからという理由だけで、女性本人に劣悪なイメージを負わせる必要はないと筆者は考えます。

その上でなお、企業イメージとして、性的なものを想起させることがイメージダウンにつながる場合や、「性行為=消費するべきもの」というイメージを与える可能性のあるセクシー女優を避ける判断はあってしかるべきでしょう。

ただし後者については、筆者はセクシー女優本人の観点がより重要となるのではないかと考えます。「性行為=消費」という観念に対し、セクシー女優だからといって賛同しているとも限らないはずです。

過去に出演している作品から、そのイメージを拭えない場合もあるかもしれません。そうであってもなお、その出演者であった女優が「私の考えは違う」と主張する場合にはむしろ、彼女は自分の考え方を変えたのだという点を評価されるかもしれません。

今回8月にニュースとなった蒼井そらさんがイメージキャラクターを務めたのは「男性用品」のブランドであり、精力剤などを取り扱っています。

この点で、当該ブランドと彼女が背負うイメージには大きな齟齬はありません。記事中の他の例で挙げられていたような「ブランドのイメージダウン」といった指摘は今回のケースには当てはまらないようです。

実際のところ、中国共産党青年団により指摘されたのは「赤いネッカチーフの着用」でした。そして、この出来事について、8月20日時点で、彼女のWeibo上では特に言及はありません。

ファンとのコミュニケーションに用いられているWeiboにおいて自ら何かを釈明する必要はない、その程度の出来事であったことがうかがえます。

本稿で紹介したニュースの内容は、セクシー女優の起用をネガティブにとらえるものですが、「中国の企業が日本のセクシー女優をキャンペーンに起用している」という事実からはむしろ、実際の中国社会は性産業に従事する女性が表舞台に出ることを肯定的にとらえているとも言えるのではないでしょうか。

そのとき、彼女たちが作品で演じている人物とそれらが描くイメージは、どこまで作品の外の女優に波及されるのが適切なのでしょうか。

セクシー女優という存在にネガティブなレッテルを貼り、それを生涯負わせるのではなく、演技経験のある者として、人格のある彼女自身をイメージキャラクターに起用できるのならば、それはむしろ健全な社会の在り方のようにも筆者には思えるのです。

山浦 雅香

85年生まれ茨城育ち。事実婚の夫、小学生の息子と東京で生活中。就職2年目の27歳で出産退職、子育て専業2年、再就職、フリーランスを経て、インバウンドメディアの編集部に。大学時代の1年間の北京留学経験を活かして、翻訳・執筆も。

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