バッサーノ・デル・グラッパから運河の街トレヴィーゾへ〜ミラノ通信#30
白アスパラを求め、イタリアの小さな田舎町「バッサーノ・デル・グラッパ」への旅。今回は運河の街であるトレヴィーゾへ足を延ばします。ミラノ在住の河見恵子さんにレポートしていただきました。
前編はこちらから
■おなじみのアペリティーボはミラノ中心部よりお手頃
バッサーノ・デル・グラッパの町を夕食前に散策。気候のいいシーズンなので、外のテーブルでアペリティーボ。
老いも若きも、町の広場やちょっとした木陰でおしゃべり
道端にもテーブル席が並ぶ
小さな町ならでは、「みんな知り合い」的な地元感の溢れる光景が、あちらこちらで見られます。同じ場所で同じ時間に、毎日の日課のようにカフェを飲んだり食前酒を楽しんだりするイタリア人。
「今日も素敵だね」「今日は彼の姿がまだ見えないな」など、そこには、馴染みの客と店主を超えた関係が築かれているように見えます。
ミラノ中心地では8〜19ユーロのアペリティーボ、ここでは3ユーロから5ユーロの地方価格。本当に「気軽な一杯」といった感覚です。
黒板にかかれたグラスワインのメニュー
■おまちかねの白アスパラを堪能
夕食は元ビアホールを改装したという、落ち着いた雰囲気の老舗、「オットーネ(Ottone)」へ。
店の雰囲気を見てから決めようと、予約なしで早めに訪れたら、ラストのテーブルを確保できてラッキー。
早い時間は観光客も多く、21時過ぎには家族連れや同僚グループの常連さんでいっぱいになっていました。
オットーネの店内
ひとりだけど、白アスパラの他に何皿か食べたい、迷ってしまうなぁ、と話していたら、プリモ(パスタやリゾット)もセコンド(メインディッシュ)も、半分のポーションで持ってくるよ、と親切なカメリエーラ。
お言葉に甘えて、白アスパラガス、プリモ、セコンドとフルコースで堪能しました。ちなみに、イタリアでアスパラガスはセコンドとして扱われています。
今回は、前菜として初めに持ってきてもらいました。
店によって、カジュアルなところだとゆで卵が添えられ、自分で潰してオリーブオイルやビネガーで和えるスタイル、既にペーストになっているところ、などさまざまです。
共通しているのは、シンプルに的確な時間だけ茹でた白アスパラを、素材の持つ滋味深さを味わい堪能する、ということです。
待望の白アスパラガス
アスパラに合わせた地元の白ワイン、オマール海老のパスタ、牛肉の煮込み
レストランを出たら、小雨の降る光景
■オーナーの個性があらわれるB&B
翌日はゆっくりスタート、キッチンに降りると数組の先客が既に朝食とパッキングを終えてマダム・ジュリーにお別れの挨拶に来ていました。
B&Bは、オーナーのカラーが色濃く反映されます。南フランスからイタリア、バッサーノ・デル・グラッパに移り住み、古いパラッツォを改造して居心地良い空間を作り、世界中からのゲストを迎えることが毎日の喜びだ、というジュリーの穏やかな笑顔と料理の腕前に、リピートするゲストも数多くいるのだとか。
ブレックファーストルーム、テーブルの後ろのキッチンでジュリーが手早くオムレツやパンケーキを
朝食には、お手製のフルーツジャム数種類が揃ったテーブルに、まずはカフェオレ。
パンを切って、卵をオムレツやスクランブル、チーズやハム入りのお好みでオーダー。
空気が綺麗で清々しい朝を迎えると食欲も増し、パンケーキまでペロリと食べてしまいました。
朝食、中庭へと続く扉
オーナー、ジュリーと、ちょうど帰省していたお嬢さん、犬は大型だけどまだ子どもだとか
翌日は町のメルカート(朝市)の立つ日だったので、少し覗いてみます。
どこの町にも、広場に週1〜2回立つメルカートは、イタリアの日常や旬の食べ物、掘り出し物の雑貨など、いろいろな発見があって楽しい!
バッサーノ・デル・グラッパのメルカート
■トレビスの産地、トレヴィーゾの街
そこから駅に向かい、ローカル列車で小1時間のトレヴィーゾの街へ。
バッサーノ・デル・グラッパが白アスパラガスなら、トレヴィーゾはトレビス、正式名はラディッキオ・ロッソ・ディ・トレヴィーゾ・タルティーボという、これも栽培に手間と時間のかかる特殊な冬野菜の産地で有名です。
収穫は霜の降りる頃、束にして大きさを揃え、テントを張って日光を遮断した水槽に最大20日置きます。
この水耕栽培で、枯れたような色から見事な赤紫色に変わり、茎は純白に、歯ごたえのいい苦味の効いた美味しいタルティーボができあがります。
ラディッキオ・ロッソ・ディ・トレヴィーゾ・タルティーボ
フライにしてもよし、付け合せにグリルでもよし、苦味の効いた独特の旨味ある冬野菜です。
トレヴィーゾではこれを食さなければ、と思いつつ、ミラノのメルカートでも入手できるので、結局、白アスパラを食べ比べることに。
事前に調べていた老舗リストランテを訪れると、店もメニューもモダンな雰囲気、どうやらオーナーが変わったようです。
前菜にはタコの一皿、メインに白アスパラをオーダー。ここでは、ハーブやスパイスを使ったソースといただくスタイルでした。
再びの白アスパラガス
リストランテ・ベッケリエ
■ゆったりした時間が流れる運河の街
ヴェネツィアからも列車で30〜40分のトレヴィーゾは、「小ヴェネツィア」とも呼ばれ、運河の街として有名です。
街中には古くは12世紀ルネサンス期からの運河が流れ、ポルティコと呼ばれる柱と丸天井のアーケードが美しい。旧い町並みに豊かな水の流れる風景は、ゆったりとした時間の流れを感じます。
ファッションブランド、ベネトンはここから世界に発展、郊外には本社の他に研究センターなども備えています。
運河の流れる街並み
ポルティコの下のテラス席
トレヴィーゾの街
■イタリアの良さが詰まっている、イタリアの田舎町
トレヴィーゾ周辺は、「プロセッコ(Prosecco)」と呼ばれる発泡性ワインの産地でもあり、小ぶりのグラスで供される気軽なワイン。カンパリやアペロールなどと割ったカクテル「スプリッツ(Spritz)」もイタリア全土で人気です。
ミラノから、あるいはヴェネツィアを訪れる際にちょっと寄り道して、きれいな水の流れる小さな田舎町に足を伸ばしてみるのもオススメです。
イタリアの田舎町は、イタリアの良さが凝縮されていて、本当に素晴らしいですよ!
<Ristorante Birreria Ottone>
Via Giacomo Matteotti ,50 Bassano del Grappa
<Ristorante Alle Beccherie>
Piazza Ancilotto, 9 Treviso