【今からできる相続対策#8】家なき子が不動産を相続すると相続税が大幅に減少する?
相続人の人数に合わせて均等に資産を相続することよりも、ひとりが資産を相続してから代償分割する方が節税できる場合があります。今回はそんな事例を紹介します。

■3億円の不動産を3姉妹で均等に相続することに
東京の一等地に戸建て住宅を保有する一家がありました。
この一家の家族構成は、父と母の間に長女、次女、三女の三姉妹がいます。父は5年前に他界しており、その際は母親が自宅の上地と建物を100%相続しています。相続財産は自宅しかなく、評価額は路線価に基づく自用地としての原則評価で約3億円でした。
そして昨年には母が亡くなりました。
長女も次女もそれぞれ結婚して持ち家があり、三女だけが母親の近くの賃貸マンションに住んでおり持ち家を所有していません。
母の生前から自宅は姉妹で均等に3等分するという了解事項がありましたが、三女が実家に対する思い入れが最も強く、「私が実家の不動産を相続したい」と言い出しました。
長女も次女も三女が自宅を相続すること自体に反対ではありませんでしたが、3億円の不動産を相続するなら、その見返りとして他の姉妹に1億円ずつを支払うこと、つまり代償分割が条件となります。
しかし三女には2億円を支払う能力がありません。結局共有で相続して直ぐに売却し、売却代金を均等に分けてこの相続は無事に終了しました。
この事例、実は3人で自宅を相続するよりも、三女のみが相続した方が相続税を抑えることができたのです。それはどうしてでしょうか?

■「小規模宅地の特例」で評価額を80%下げられた
三女は唯一の「家なき子」なので、「小規模宅地の特例」が適用されます。小規模宅地の特例とは、被相続人や生活を共にする家族(同一生計親族)の事業用や居住用の宅地について、宅地の評価額を減額できるというものです。
本制度は被相続人が亡くなった後の遺族の生活に大きな支障が生じてしまうことを防ぐために設けられました。居住用の場合であれば330平方メートルまでは80%減額されるので、今回の事例だと3億円の評価額を6000万円まで下げられます。
まず、分割協議書上で三女が単独で実家の上地建物を相続します。その上で特例の適用を受けられるよう、相続税の申告期限まではその上地を保有し、申告期限後に売却するのです。
分割協議書には、売却代金を三女の譲渡税控除後の金額で3等分する旨を記載しておけばいいのです。
小規模宅地の特例が適用されるには申告期限まで必ず上地を保有しておかなければいけません。これは必ず守るようにしてください。