ミラノで音色が響き渡る3日間「ピアノシティーミラノ」~ミラノ通信#27
イタリアのミラノでは、5月に3日間ピアノの美しい音色が街を響き渡ります。思い思いのスタイルで聴くことができ、楽しみ方もさまざまです。ミラノ在住の河見恵子さんにレポートしていただきました。
■街中がピアノの音色で満たされるイベント Piano City Milano
5月の風薫る新緑の季節、ミラノでは「ピアノシティーミラノ(Piano City Milano)」というイベントが開催されます。
金曜日の夜から日曜日の夜まで足かけ3日間、およそ50時間に渡ってミラノの街中がピアノの音色で満たされるこのイベントは2012年にスタート。7回目を迎えた今年は、18日から20日に開催されました。
オープニング演奏は、「王宮別邸(Villa Reale)」の中庭で21時から。
20時過ぎに到着すると、すでに長蛇の列でしたが、これは入口で手荷物検査をしていたからなかなか進まなかった模様。
なんと、ビン類の持ち込み禁止でした。
友人たちと演奏を聴きながら飲もうと思い持参していた冷やしたフランチャコルタ(イタリア版シャンパーニュ)は没収。サッカー観戦のフーリガンのように、クラシックピアノを聴いて暴れる人はいないと思うので、これは清掃の都合か、はたまたビールやドリンクの売れ行きが悪くなるから、なのか。
そう、中ではドリンク販売スタンドがあり、ビールなどをプラスティックカップで提供していました。
飲みものを調達する人々、もう一方には子供の遊び場も完備
■夕暮れ時にライトアップされていくパラッツォ
この期間、ミラノの天候は不安定で、この日も夜から雨の予報。
ピアノシティーは多少の雨でも決行なので、野外ならピアノの上にはテントが、客席では各自が敷物や傘を持参して臨みます。
そして、演奏開始。5月は日が長く、日没は21時近くです。
暮れていく時間、空の色は刻々と変わり、中庭の向こうのパラッツォはライトアップされ、美しいことこの上なし。
ライトアップされるパラッツォ
そんな中、芝生の上で思い思いの格好で寛ぎながら聴くクラシックは最高です。
寝そべったり抱き合ったり、あまりの人気に芝生の外に立ち見客も多数でした。
周りの人々、寝そべったり抱き合ったり、立ち見客も多数
普段は入れない王宮別邸(パラッツォ)の中や中庭を始め、劇場、美術館、公園や広場、ミラノ市内のあらゆるところでピアノ演奏が聴けるとあって、事前にパンフレットとにらめっこして動線を考えるのも楽しい。
ちなみに、館内でも屋外でも、使用されるピアノは全て、グランドピアノです(トラムは除く)。
50時間で、なんと500近いイベントが満載。中には個人の邸宅もあり、こちらは案内の冊子には時間と演奏者、地域のみ記されていました。
Albaとあるのは夜明け前の早朝5時から、深夜過ぎても(限られた会場で)ピアノ演奏が聴ける、ノンストップでの50時間、圧巻です。
ピアノシティーミラノのパンフレット、500近いイベントが満載
■ミラノの路面電車「トラム」に乗りながらも楽しめる
走るトラムの中にもピアノが持ち込まれ、トラムに揺られてミラノ市内の景色を楽しみながら、演奏を聴くこともできます。スタート時間に合わせて、始発の停留所で並んで乗車券をゲットするのだとか。
スカラ座でもふたつの演目がエントリーされていました。こちらは事前に予約が必要です。
そうそう、ピアノシティーミラノは、ミラノ市はじめロンバルディア州、大手銀行、新聞社、放送局、プラダ財団、など多くの協賛によりすべて無料で楽しめます。
ピアノ提供や技術面では、スタインウェイなど10社が協力、日本からはKAWAI、YAMAHAが参加しています。
夏は広場で音楽演奏があったり、映画上映があったり、というのはイタリア映画のシーンでも紹介されて有名ですね。夏だけでなく普段からもアンテナを張っていると無料でいろいろなイベントが楽しめるのが、イタリアの素晴らしいところ。幼い頃から芸術が身近にある、そんな環境で育つイタリア人のセンスは自然に磨かれるわけです。
翌日はミラノに遊びに来ていた友人と、買い物や食事の合間に幾つかのコンサートを満喫。
まずは近所のパラッツォ中庭で。
■ピアノ演奏も褒めて育てるイタリア
次は「ヴェルメ劇場(Teatro dal Verme)」の小さなホールにて。下は3歳くらいから、小さな子どもたちの発表会でした。
昔ピアノを習っていた頃は発表会というと猛練習、そして当日は大変緊張したものですが、イタリアはもっとゆるい感じ。
登場する子どもたちも、カチカチに緊張する様子は微塵もなくさらっと演奏、間違えても少々つっかえても空気は変わりません。賞賛の嵐です。さすが、褒めて育てるイタリア。
失敗を恐れず、間違えても動揺しない。こんな風にのびのび育つと、感性豊かな、ファンタジー溢れる人間になるのですね。
Verme劇場
小ホールで、子どもたちのピアノ発表会
「リッタ宮(Palazzo Litta)」は、バロックロココ調の美しい邸宅。素晴らしい内装にうっとりしながら、会場へ。
かつてはここで演奏会や舞踏会、晩餐会が夜毎に開かれていたのだなぁ、と往年の栄華が偲ばれる、そんな空間です。大理石の階段に、控えの間、この空間はなんだったのだろう、思いを馳せながら。胸踊る時間です。
ピアノ演奏は鏡の間で開催されました。豪華絢爛な空間に、カルテル社の現代的な透明プラスティック素材の椅子が映えます。こんなバランス感覚がまた素敵。
鏡の間でのピアノ演奏
この日は、若く美しいピアニスタの演奏で、リストとマーラーを。鏡の間での立ち見は許されず、溢れた人々は隣の控えの間で演奏に酔いしれていました。
控えの間、ここも開演時にはいっぱいに
■普段の生活でたまたま出くわすことも
ミラノがピアノ演奏で溢れる3日間、街角や公園などでも演奏があるので、たまたま出くわすことも。いつもの散歩コース、或いは少し回り道をして、ふらりと立ち寄り楽しめるピアノシティーミラノ。
新緑の美しい爽やかな季節にぴったりの嬉しいイベントです。
公園内でのピアノ演奏
2017年の様子
3 giorni di concerti di pianofore diffusi in tutta la città. Piano City Milano è un evento culturale in cui i veri protagonisti sono tutti i cittadini: spettatori, appassionati di musica, giovani talenti e grandi pianisti.
Piano City Milano sono oltre 300 concerti per pianoforte di qualsiasi genere musicale in un weekend. Concerti nelle case dei pianisti, sui tram, sui battelli...