私がこないだ流産したことを、誰も知らない【母でも妻でも、私#10】 3/3
■妊娠超初期の「化学流産」は、まだ流産ともいえない
妊娠初期の流産は、受精卵や胎児にうまれつきの異常があり、どうしても妊娠を継続できないケースがほとんどだという。
だから、妊婦が気をつけたから防げる、というものではない。
さらに私は、医学的には「流産」の域にも達していないらしい。
私が経験したのは、妊娠“超”初期の「化学流産」と呼ばれる現象。
化学流産とは、受精はしたものの、その受精卵がなんらかの理由によって着床できず(もしくは着床したものの継続できず)、そのまま生理がはじまる場合を指す。
つまり、検査薬をつかわなければ、ほぼ気づくことのない妊娠&流産。
気づかなければ「ちょっと身体がだるい」とか「今回の生理は遅れてきたな」で済む。でも、手軽に使える検査薬が発達したいまでは、かなり早期の妊娠もわかってしまう。
■誰のせいでもない流産を、背負う
繰り返すけれど、妊娠初期の流産でさえ、妊婦の行動しだいで防げるものではない。
妊娠超初期の化学流産なんて、なおさらそう。
私にできることは、何ひとつなかった。
親しい友人のなかに何人か経験者がいたりもして、それなりに化学流産の知識はあった。
私は普段からわりと前向きで、自分の努力でどうにもならないことや、思い悩んでも意味がない問題にくよくよすることがない。
だから、今回の妊娠もダメならダメで仕方ないと、心の底から思っていた。
それでも流産が確定したとき、私はほんの一瞬、自分を疑った。
「こないだ、思ったより寒い日に薄着で出かけちゃったけど、それが悪かったのかも……」
数日前の、サンダルで冷えたつま先の感触が、はっきりとよみがえった。
思わず、背すじが寒くなる。
■胸を張って、この妊娠を終えましょう
背すじが寒くなったのは、自分のせいで流産したのかも、と思ったからではない。
妊婦の行動とこの流産が関係ないことをよく知っているうえ、普段ならそんな根拠のないネガティブ思考を絶対にしない自分が、反射的に自分を責めるようなことを思ったから、だ。
もちろん本当に一瞬のことで、いまは自分のせいだなんて1ミリも思っていない。
仕方のない出来事だったし、まったく落ち込んでもいない。
だからこそ、とっさに出たネガティブに驚いた。
きっと同じように自分を責めてしまったり、消えた命に涙を流したりするひとが、少なくないのだろうと思った。
でも、私たちのせいではありません。だから、まずは胸を張っていきましょう。
化学流産の悲しみは、目に見えない。
そもそも順調な妊娠でさえ、安定期を迎えるまでは周りに報告しない人がほとんど。
だから超初期や初期の流産は、ほぼ夫婦のなかだけで、ひっそりと終わっていく。
もし深く傷ついたとしても、その衝撃は、夫婦2人で処理しなければならない。
きっと私が知らないだけで、静かに同じ経験をしている人は、周りにもっといるんだろうな。
妊娠と流産をやり遂げたすべての人を、ねぎらいたい。
そして、その経験の先に、望む命が産まれることを心から願う。
※医学的な妊娠・流産の条件などには諸説あります