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天空のもとで見る能楽の世界──開業1周年を記念してGINZA SIXガーデンで薪能を開催

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GINZA SIXの開業1周年を記念して、観世能楽堂とのコラボレーション企画「GINZA SIX薪能特別公演」が開催された。会場の風景とともに当日のレポートをお届けする。

天空のもとで見る能楽の世界──開業1周年を記念してGINZA SIXガーデンで薪能を開催

2017年4月にオープンしたGINZA SIX。吹き抜けに展示された巨大なアートインスタレーションや、オープン当日の大行列も、まだ記憶に新しい。

そのGINZA SIXで、開業1周年を記念して、初の試みである屋上庭園での薪能が5月4日、5日に行われた。

■銀座の地に根を下ろした能楽最大流派・観世流

薪能(たきぎのう)。一度は耳にしたことのある人も多いのではないだろうか。屋内ではなく、屋外で薪を焚いて、かがり火のもと上演される能楽のことである。

多くは神社仏閣など地域のランドマークで行われ、近隣の住民を中心に遠方からも観客が集う、知る人ぞ知るイベントだ。銀座6丁目、東京の中心街でそれが行われたのは、ほかならぬ「観世能楽堂」がGINZA SIXにあるからだろう。

▲GINZA SIX地下3階に位置する観世能楽堂。能舞台は松濤の時代から守り伝えてきた檜舞台を移設した。

能楽最大流派である観世流の拠点「観世能楽堂」は、戦後約40年に渡って親しまれてきた渋谷区松濤の能楽堂の取り壊しに伴い、銀座に新しく居を構えた。開業から約1年、のべ300日以上の能楽公演やイベントが開催されてきた。

今回初の試みとなる「GINZA SIX薪能特別公演」は、GINZA SIX主催・観世能楽堂共催のもと、地上56mの高さに位置する緑豊かな屋上庭園「GINZA SIXガーデン」に舞台を特設し、約500席を用意。初日にはシテ方観世流宗家・観世清和氏が出演し、GINZA SIXメンバーシップ会員が抽選で招待されたほか、一般販売のチケットも用意され、多くの観客が集まった。

■天空のもと行われる薪能

特設の能舞台は、屋上庭園の回廊内側に設置された。

回廊を歩けば、眼下には立ち並ぶビルが広がるが、その内側にいると視界を遮るものは何もない。ビルの周囲を囲うように植えられた木々が空との隙間を埋め、空の中にいるような感覚さえおぼえる。
そうかと思えば、目の前に飛び込んでくる1棟の高層ビルが、かえって都会の谷間だということを思い出させてくるのがまた面白い。

一見ちぐはぐなようでいて、意外にもこの都会の屋上に、演能の背景として邪魔になるものは何もないようであった。

■初心者でも楽しめる上演演目

上演が始まるころには、昼間の陽気とはうって変わって、徐々に強くなる風が屋上庭園の木々を揺らした。
当日上演された演目は、狂言『柿山伏』と能『土蜘蛛』という曲である。

▲狂言『柿山伏』は柿を盗み食いする山伏と柿畑の持ち主のやり取りを描く。いつの時代にも人は必死に自分の罪を取り繕おうとするものだ。(右:山伏=野村太一郎氏、左:畑主=飯田豪氏)

狂言『柿山伏』が終わる頃には、あたりもすっかり暗くなり、舞台前方に設置された薪へ点火する火入れ式が行われた。

▲火入れ式後に上演された能『土蜘蛛』。橋掛かりに立つ怪しげな僧の正体は実は土蜘蛛の精である。(シテ(土蜘蛛の精)=観世流宗家・観世清和氏)

続く能『土蜘蛛』は源頼光の土蜘蛛退治の伝説に依拠した物語であり、蜘蛛の糸を投げかけ舞台を白く染めていく土蜘蛛の精と、頼光たちの攻防が見どころのダイナミックな一曲である。

病床の頼光のもとに現れた怪しげな僧の正体は、頼光の命を狙う土蜘蛛の精であった。土蜘蛛の精は、蜘蛛の糸を投げかけ頼光を襲うが、返り討ちに遭い姿を消す。頼光の従者たちは土蜘蛛を退治せんと土蜘蛛の住処へと向かうのであった。

▲後場ではついに土蜘蛛がその正体を現す。(左:頼光の従者=森常太郎氏、右:土蜘蛛の精=観世清和氏)

いよいよ土蜘蛛の精との斬組みの場面となると、蜘蛛の糸が舞台に激しく飛び交う。
場面の盛り上がりを後押しするかのように、風もだんだんと強まり、土蜘蛛の糸は空に舞い上がった。
風の効果で、蜘蛛の糸が四方八方に飛び散り、どこへ行くか予測もつかない。物語は通常の進行とは変わらないはずが、屋外上演ならではの効果に、思わず手に汗を握った。

『土蜘蛛』の持つダイナミックな要素がより際立ち、「幽玄」だけでない能の姿を見ることができたのではないだろうか。

■開かれた文化体験の場へ

観世能楽堂は、「若い方々に、能に限らず、日本の伝統文化の豊かさや深さにもっと気楽に触れてもらいたい」(GINZA SIX 公式HP 観世清和氏インタビュー記事より)という想いから、銀座へ移転したという。

GINZA SIX開業から1年、若年層だけでなく、外国人観光客向けの取り組みや、子どもも一緒に楽しめる企画を盛んに行ってきた。今回、薪能と同日の日中、観世能楽堂にて開催された「親子能体験教室」もそのひとつである。

銀座のさらなる進化を引き出す複合商業施設GINZA SIXと、伝統を受け継ぎながら新しい挑戦を続ける観世能楽堂。両者のコラボレーションは、伝統芸能の世界をより私たちの近くへと広げてくれるに違いない。

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下心のハルカ

舞台狂いが転じて、能にのぼせ上がる日々を送る会社員。 能を観始めたきっかけは、「生きている小面(能面の一種)が見たい」「美しいものを見たい」という一心から。内容はよくわからないながら、観能を重ねるごとに気づきを得ることに面...

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