初心者でも楽しめるストリップ! 女性ファンも急増する理由とは?【編集部体験談も】
興味はあるけれどなかなか足を運ぶことが難しいストリップ。初心者でも楽しめるための基礎知識やその魅力をストリッパーとしても活躍する、松本菜奈実さんに解説いただきました。女性人気も増えているというストリップにはどのような快味があるのでしょうか。その秘密に迫ります。編集部による体験談もあわせてご紹介!
※この記事は2021年8月24日に公開されたものです。
ストリップと聞くと“裸の女性が踊る、いやらしいもの”というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。昨今ではストリップ劇場が公然猥褻容疑で摘発されるなど、見にいくこと自体が後ろめたいものなのでは……と思われている方も多いかもしれません。
風営法によればストリップは「性的好奇心をそそるため衣服を脱いだ人の姿態を見せる興行」と定義されている他、日本芸術労働協会の代表者など多くのアーティスト達も「ストリップは演者・観客両者の同意のうえで成り立っている。公然猥褻罪の改正を求めます」といった声を挙げるなど、今まさにそのあり方が問われている舞台表現のひとつなのです。
さらに昨今では『女子のためのストリップ劇場入門』(講談社)なる漫画入門が出たり“スト女”なんて言葉も生まれ(ストリップにハマる女子の総称)、某劇場ではBL(ボーイズ・ラブ)をテーマとしたストリップが興行されたときには、場内の女性客の数が男性客を上回ることもあるなど、女性人気が好調に高まっているのです。
そんな中、2021年7月にストリップ劇場の聖地“浅草ロック座”で舞台にデビューしたAV女優の松本菜奈実さん。今回は、彼女へのインタビューを通じて、ストリップの魅力を語ってもらいます。舞台に立つからこそわかるストリップの世界もさることながら、観客としての視点からもその至高の体験を解説してくださった松本さんの、熱き思いをとくとご覧ください!
<松本菜奈実プロフィール>
1994年生まれ。広島県出身。2015年にバスト100cmを武器にしたグラビアアイドルとしてデビュー2016年7月『週刊SPA!』(扶桑社)の「グラビアン魂」に掲載(2016年8月2日号)「グラビアン魂アワード2016」でみうらじゅん個別賞(ルノアールの絵画で賞)を受賞。AV女優として活躍しながらも、ストリップの領域にも活動の場を広げる。
■ストリップ初舞台に立ち、大きな変化は女性ファンが増えたこと
――AV女優として、ふだん映像の世界で活躍する松本さんが、なぜ生身の舞台で、しかもストリップに挑戦しようと思ったのですか。
私が初めてストリップを見たのは同じ事務所の先輩で『全裸監督』にも出演している川上奈々美さんの舞台だったんです。そこで川上さんの身体や踊りを見たときに「本当に綺麗だなあ」と感動したんですよ。しかも綺麗なだけでなく、せりふがないながらも感情を露わにした表情や動きで表現するストーリー、心躍るようなうれしい顔も、こちらまで悲しくなる顔にも、その全てに引き込まれたんです。
それまで、ストリップは“単なるエロ”だと思い込んでいたから、こんなにも美しいのかと、むしろエロとはまったく違う方向に心揺さぶられるものなのかと衝撃を受けたんです。それで女優として活動5年目となった今年、新たなことに挑戦してみたい気持ちと、それに挑戦することで受ける刺激を楽しみたいと思い、ストリップの舞台に立ったんです。
――実際に舞台に立ってみていかがでしたか?
とにかく楽しい、の一言ですね! 踊るのも楽しいし、それを見て喜んでくれるみなさんの反応を見るのも楽しい。それにストリップの公演は1日4回で20日間もの間続くので、1ステージごとに、1日ごとに進化してるんですよ。何度も見てくれるお客様からも“どんどんよくなっていくね”と言われることがあるように、お客様を飽きさせないように少しずつ踊りをバージョンアップさせていく。これまで私が携わってきたAVという映像作品においては役柄を一回演じ切って撮ったらそれで終わりでしたけど、この公演においては何度も踊って演じて洗練させられることにもやりがいを感じているし、この新しい感覚を楽しんでいます。
――AVとストリップ、同じ“演じる”という言葉でも全く違う演じ方なわけですね。
はい。AVは男性を、というか最近は女性のAVファンもいらっしゃるから“ヌキたい”とか“ひとりエッチしたい”方々をいかに興奮させるかを意識して魅せるわけですけど、ストリップは生身の身体ひとつで魅せるエンターテイメントというか。とにかく見てくれた方々が「感動した」とか「元気もらえた!」って言ってくださるのが、本当にうれしいですね。
――でもやはりストリップは男性ファンの方が多いでしょうか?
それがですね、私のAVファンはやっぱり巨乳好きのおじさん達が大半だったんですよ(松本さんはJカップで“乳神様”との愛称があります)。イベントをやったときにも、来てくださるのは9割近くが男性ファン。でも今回のストリップでは半分以上のお客さんが女性なんです! しかも見に来てくださった後、Twitterに「すごく世界観に引き込まれて見入ってしまった」とか、深いコメントを投稿してくださる女性の方もいて、女性ファンが増えたことは大きな収穫でしたね。
■初心者の方にも足を運んでほしい! ストリップが持つ最大の魅力
――松本さんは、ストリップの魅力はどんなところにあると思いますか?。
ストリップって、歌や映画とはまた違う魅力を持つ文化だと思うんです。たとえば「彼氏と喧嘩してモヤモヤしてたけど気持ちが晴れた」とか「やっぱり仲直りしてみようと気持ちが切り替わった」とか、何か前向きな気持ちが生まれるきっかけをくれるものだと思うんですよね。私が衣装を一枚一枚剥ぎ取りながら開放感を感じていくように、見ている人も同じように心が開放されていくのだと思います。だからこそ、気持ちが沈んでたり、なんとなく閉鎖感を抱えている人ほど、心が晴れやかになるのかなって気はします。
――浅草ロック座が他の劇場と違うのは、ひとつの公演に今回の「祭音」のような一貫したテーマがあるところですよね。今松本さんを含む7名の踊り子がバックダンサーと共にそれぞれの演目を踊り、さらにフィナーレに向けて踊り子全員集合で踊るなど、より芸術やエンターテインメントとしての色合いが強い印象を受けました。
そうなんですよ。だからひとつの作品を見るかのようにその世界観に没頭できる。それに女性の方からの感想で「私は私でいいんだ! って思えた」というお言葉をいただいたんです。その言葉の意味、いろいろと考えたんです。これは私なりの解釈ですが、踊り子達は、私みたいなちょっとグラマーもいれば、スレンダーな方もいますし、腹筋バキバキの方もいる。今回の舞台で踊っているお姐さん達も、若い子だけでなく年齢層はさまざまです。そんないろんなタイプの女性の身体を見ることで、一人ひとりの良さを感じられて……自己肯定感や自己受容感さえ高まるような、そういう前向きな気持ちになれる気もするんですよね。私もストリップに出演することになったとき、「もっと細い身体にならないとだめだよな」とか思ったんですよね。でもファンの方は「一人ひとりの身体は違って当然。それぞれに美しさは宿っているはず。だからショーが楽しいんだ」と言ってもらえたような気がして、心底「私は私でいいんだ」と思えましたから。
――ストリップに出たことでご自身の身体にも自信が持てたわけですね。
見た目や体型の評価にさらされやすい女性は特に「全ての身体はその人自身の魅力が詰まっているし、外野に評価される筋合いはない」と思えるような気がします。それでいて、見終わった後に、なんとなく自分の自信につながるんじゃないかな……つながったらいいなと思いますね。
■ストリップの経験が人生の勉強になり新たな目標もできた
――でも実際、1日4公演を20日間も続けていくなんて、かなりハードですよね。
そうですね。体力的には確かに「疲れたー」と感じることもありますけど、私、中学のときはテニス部で鬼のような特訓だとか先輩後輩といった上下関係も経験してきたし、体育会系なんですよ。だからとにかくガムシャラに日々のダンスにのめり込んでいますね。でもリハの時と本番の時に2回だけ過呼吸になってしまいました。自分で言うのもなんですけど完璧主義だから、ちょっと失敗しちゃったときに、それが悔しくて許せなくて、精神的に自分を追い込んじゃって、ゼーハーゼーハー、みたいな。でもそんなときは先輩が肩をトントンと叩いてくれて「大丈夫だよ、私もなったことあるよ」って言ってくれて。本当に心強かったです。
――そこまで追い込んででも舞台に上がるのですね。先ほど体育会系と仰ってましたけど、やはりストリップの世界では上下関係は厳しいのですか?
いや、でもだいたい当たり前のことですよ。自分よりも歴の長い踊り子さんのことは「お姐さん」と呼んで、楽屋のゴミとかは率先して下の子が綺麗にするし、スリッパの列を綺麗に並べたり、お姐さんが鏡を動かそうとしているのを見たら、率先して「やります!」って動いたり。それはまあ、当たり前のことで嫌とも思わないですよ。むしろさっきみたいに自分でも思いがけない状況になってパニクったときに、「大丈夫だとよ」と声をかけてくれるありがたい存在です。それになにより、この舞台に立ち続けていることにただただ尊敬しているから、ゴミだとかなんだとかを自分が片付けるくらいのことではなにも思わないです。
――ではストリップに出たことで、自分的にも成長できたという感じでしょうか?
そうですね。私、こう見えて本当に人見知りなんですよ。ひとりでいるときの方が楽だし、とくに20代までは一匹狼かって感じでしたし。でも今回のストリップでお姐さん達もいる楽屋で過ごす時間が長い中で、わりと素で独り言を行ったりしてお姐さんから突っ込まれたりすると、場が和んだりするんだなって思ったりして。あんまり自分の殻に閉じこもらないで、素を出してみることが人と仲良くなるきっかけにもなるんだなって勉強にもなりましたね。
――今後もストリップをやり続けたいと思いますか?
実はストリップの舞台に立つ1カ月前から自主的にダンスの先生のレッスンを受けて、身体を仕上げていく楽しさはもちろん、舞台に立って踊る楽しさを知りました。だから今後もダンス教室は通いたいと思っています。そんな中でストリップに出る機会があったら……とも思いますが、実はバーレスクにも興味があるんです。今回のストリップをバーレスク東京のオーナーさんとかも見に来てくれたので、いつかバーレスク東京のステージにも立ってみたいですね。ストリップを見た時に自分の心が浄化されたかのようになって、実際に舞台に立ってみたら、今度はお客さんの心を揺さぶることができた。バーレスクの舞台ではどんな刺激をお客さんに与えられるのかなって思うと、今から楽しみですね。
【体験談】実際にストリップを見にいってみた!
インタビューを終えて、実際に松本さんのステージを見させていただくことになったDRESS編集部。今回、松本さんをはじめとした7人の踊り子達が踊るテーマ「祭音」はひとり10分強の演目ごとにさまざまな世界観や衣装、ストーリーで展開していきました。第一景(ストリップではひとつの幕を分割した単位を順に一景、二景という表現をします)から九景までを途中10分間一回の休憩時間を挟んで1時間45分もの間、いろいろなショーが繰り広げられます。
一景目では「祭音」のテーマに相応しい、ショーパンとシャツというラフな格好にバンダナ片手に振り回しながら“夏の始まり”を彷彿とさせるパワフルなダンスショーが、二景目ではジャングルの中のような背景になり、メインの踊り子がジャングルの王者ライオンをイメージするかのような雄々しい動きで生命が生まれる喜びを踊りで表現していました。
そして三景は怪しげな洋館の部屋で女上官が女史のお尻を叩くシーンから始まるドキッとするSMのような展開に引き込まれ、ラスト近くでは踊り子全員が総出で鬼退治を繰り広げる殺陣バトルも圧巻の度迫力でした。それぞれの景の世界観のなかには文学や映画、アニメへのオマージュがあり、次々と場面展開していく様にグッと入り込んでしまいました。
そして大トリを演じた松本さん。黒いボンテージのような衣装を身にまとい、挑発するような目つきで腰をくねらせていました。その姿は強い女そのもの。マイクを舐めるような表情も、エロいというよりカッコいい! そして場面が一転してベッド着と呼ばれるロングドレスに着替え、花道の先端に突き出た回転舞台の上に向ってゆっくりと歩みを進め、ムーディな音楽に合わせて身体を大胆に露出させ、脚をゆっくりと開いていく姿を見ていると……まさに「美しい!」のひと言! これが松本さんが言うところの「女の身体は美しい」ということなのだと身をもって感じたのでした。
ショーを終え、額に汗をかいた松本さん、こんな力強い言葉をくださいました。
昭和の全盛期には400箇所以上もの劇場があったと言われるストリップ劇場。それも今や浅草ロック座を含め、全国で20もの劇場しか残っていません。それでもなお、ストリップの魅力に惹かれ、劇場に足を運ぶ人は後を絶えないのは何故なのでしょうか? 踊り子さん達が裸になって、その姿を見ているうちに、なんだか自分の心まで裸になっていくような…そしてその自分の心模様に、戸惑いながらも誰もが解放されたような気持ちになるから、なのかもしれません。
取材・文:河合桃子
写真 :宮本七生
いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。