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映画『29歳問題』キーレン・パン監督インタビュー。幸せになるためのいくつかの事柄について。

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シネマの時間第28回は、香港電影金像奨最優秀新人監督賞受賞したキーレン・パン監督の映画『29歳問題』をご紹介。キャリアなクリスティーと夢見がちなティンロ。30歳目前の対照的なふたりのヒロインを描き、あらゆる世代の女性たちの共感を集め、香港で大ヒットを記録した感動作! 5月19日(土)より全国順次ロードショー。

映画『29歳問題』キーレン・パン監督インタビュー。幸せになるためのいくつかの事柄について。

こんにちは。アートディレクターの諸戸佑美です。

今回ご紹介する映画は、2005年の香港を舞台に、30歳を目前にした対照的な2人の女性を主人公に描き、あらゆる世代の女性たちの共感を呼び、本国で20万以上を動員する大ヒットを記録した香港映画『29歳問題』をお送りします。

香港を代表する舞台女優であり舞台演出家、クロスメディア・クリエーター、作家、脚本家としても活躍するキーレン・パンが、自身が13年間演じ続けたひとり芝居の舞台劇『29+1』を映画化し見事、香港電影金像奨(香港アカデミー賞)最優秀新人監督賞受賞など数々の賞も受賞した本作。

ヒロインふたりの心のひだを繊細に描き出し、ウォン・カーウアイ監督の直筆サイン入り『花様年華』ポスターやレスリー・チャンが出演した映画『日没のパリ』や『由零開始(0から始めよう)』の音楽がエンディング曲で流れるなど香港明星たちへのオマージュがたっぷりと散りばめられた演出は、香港エンタメファンにはたまらないでしょう。

才気溢れるキーレン・パン監督のインタビューもあわせてお楽しみください!

■映画『29歳問題』あらすじーキャリアなクリスティーと夢見がちなティンロ。香港を舞台に交差するふたりの生き方

2005年、香港。

化粧品会社に勤めるクリスティは、あと1カ月で30歳を迎えようとしています。

容姿端麗で尊敬する敏腕社長のもと仕事にもやりがいを感じ、長年付き合っている恋人や友人たちもいて、公私ともに順風万風のつもりでした。

しかし実のところ、晴れて部長に昇進したもののプレッシャーでストレスが多く、彼氏のチーホウともすれ違いばかりで口論となってしまいます。

実家の父親に認知症の症状が出始めたのも気がかりでした。

しかも、住み慣れたアパートの部屋が家主によって売却され、退去を言い渡されてしまいます。

困り果てたクリスティは、とりあえず1カ月間、大家に紹介されたティンロという女性の部屋に間借りすることに。

ティンロがパリ旅行に行っている間だけ彼女の部屋に住むことになったのです。

ビデオメッセージで迎えてくれたティンロの姿は、底抜けに明るく笑顔で天真爛漫。

大ファンであるレスリー・チャンが出演した映画『日没のパリ』の影響から、エッフェル塔をかたどった壁一面のポラロイド写真や、女の子らしい小物でいっぱいのティンロの部屋で、クリスティは彼女の自叙伝風の日記を見つけます。

自分の人生とはまったく違う道を歩んできた、同じ年のティンロの日常を垣間見るクリスティ。

辛いことがあっても笑顔で乗り越え、大好きな映画や音楽、ペット、たくさんではないけれど本当に信頼の置ける温かな人たちに囲まれて自由に暮らすティンロの姿は、クリスティーの目には新鮮に映るのでした。

そんな最中、ついに父親が亡くなってしまいます。

元気だった頃の父を思い出しながら、忙しさのために父の最期の日々に優しく接することができなかったことを悔やむクリスティ。

今のままで自分は幸せなのだろうか?

仕事、恋愛、結婚…etc.30歳を目前に彼女は自分の人生を見つめ直すことに。

ティンロもまた同様で、悩みを抱えながら生きるひとりの女性に変わりないのでした。

なぜ、ティンロはフランスに渡ったのか……。

彼女たちは自分の進むべき道を見つけることができるのでしょうか?

■映画『29歳問題』キーレン・パン監督インタビュー

【キーレン・パン監督プロフィール】
1975年2月11日香港生まれ。
香港で最も有名な舞台女優で舞台演出家、クロスメディア・クリエーター、作家、脚本家、映画監督。
本作はもともとキーレン・パン監督が演じていた一人舞台。主人公をキーレン・パン監督自身が一人二役で演じていたが、映画版では2人の役者が演じた。初脚本はパン・ホーチョン監督『イサベラ』。2018年第37回香港電影金像奨で最優秀新人監督賞を受賞したほか、ニース国際映画祭2017で外国語映画最優秀監督賞、2017年第12回大阪アジアン映画祭では観客賞受賞。

ーーまずは映画『29+1』が香港のアカデミー賞(香港電影金像奨)にて最優秀新人監督賞を受賞、おめでとうございます! 香港で20万人以上を動員する大ヒットを記録! 本当に素晴らしいですね。5月19日(土)からはいよいよ日本で全国順次公開となりますが、現在のお気持ちをお聞かせください。

ありがとうございます。とてもリラックスしています。昨日、日本に来たばかりなのですが、ちょうど(香港での)舞台『29+1』の再演も無事終えることができ、香港電影金像奨も受賞して日本での旅を楽しみたいと思っています。

実は昨年、すでに大阪アジアン映画祭で日本の観客の皆さんとも知り合って、多くの皆さんにこの映画が好きだと言っていただきました。日本の方々との距離も縮まったように感じているんです。


ーー原作は、2005年から13年間繰り返し再演されているキーレイ・パン監督が制作・脚本・主演を兼ねたひとり芝居の舞台劇『29+1』の満を持しての映画化ですが、そもそも『29+1』を思いついたきっかけは?

私は、香港演芸学院を卒業した人間です。最初、舞台劇の俳優になったのです。基本的に役者は、監督に選ばれて脚本を渡されて演じる立場です。あるとき、ふと自分を変えてみたいと思いました。自分で書いたものを自分で演じてみたらどうなるんだろうかということをちょっとやってみたかった。それもあって思い切って劇団の仕事を辞めてしまいました。

自分ひとりでやるということは非常に大変なことなんですが。まず資金がない。だから、自分ひとりでやるんだったら小さな舞台でやろうと思いました。大変ですがメリットもあります。好きなことを書いて自分のやりたいことをやれるんです。そのとき私も30歳を迎えようとしてたんですが、30歳を迎えることは恐れてはいませんでした。

ところがまわりの人たちは、みんな恐れているような気がしたんです。それでこのテーマで書けるかもしれないと思いました。私のまわりに30歳前後の人たちがいっぱいいて、参考になると思ったんです。それでこのような形で物語が生まれたわけです。


ーー舞台表現の良さ、映画の良さそれぞれあると思うのですが映画化にあたり監督としての思いや工夫された点、見どころをお聞かせください。出演者たちの台詞も絶妙で、舞台的かつファンタジックな演出が素敵だと思いました。

舞台も映画もそれぞれに工夫を凝らしてますが、特に役者の演技の指導の部分に力を入れました。観た方の多くは、観るたびに新たな発見があり、何度も何度も観たくなる映画だと言ってくださいます。映画の中にいろいろな演出やディテールがあるのが見どころです。


ーー舞台ではひとり芝居ですが、映画化にあたりW主演のキャリアなクリスティー役のクリッシー・チャウと夢見がちなティンロ役のジョイス・チェンの配役もぴったりでどちらにも共感でき魅力的でした。彼女たちを起用した理由を教えてください。

まずクリッシー・チャウとは、長年の知り合いで彼女がデビューして映画界で色んな人に知られるようになる前からお付き合いががありました。すごくがんばり屋でキャラクター的にもこの役のクリスティと共通してる部分があるんです。前向きで一生懸命に仕事をする人で、向上心がある。

一方のジョイスは、ティンロ役はこの人しかできないと思いました。ジョイス自身も楽天的で明るくて、私は彼女の笑顔が大好きなんですが、本当に魅力的で人を惹きつける力があるんですね。ただティンロというキャラクターは、我々が普段思うようなメジャーな人物ではない。どちらかというと少数派です。大多数は、クリスティのような人たちが多い。いつまでも若くてきれいでありたい、毎日いろいろと忙しく締め切りがいっぱいあって、それでもがんばらなきゃいけないと思っている人たち。

ところがティンロという人は、ある意味それとは違っていて独自の世界がある。彼女のまわりの人たちは、何でこうなの、と思ったりしている。実際のジョイスも自我をとても大切にしていて、ティンロと似ているところがあります。彼女のバックグランドは、父母がとても有名な俳優ですし、体型がちょっとポッチャリとしてまわりの人にあなたはもっとダイエットをしたらと恐らく言われているでしょう。でも、彼女はあまり気にしてないようで、いつも自分自身の世界を楽しんでいるところが私はとても好きなんです。


ーー映画『29歳問題』は、全編に散りばめられた80年代~90年代の香港映画やエンタメのオマージュがとても楽しく、ファンにはたまらないと思うのですが、逆にレスリー・チャンのことや『日没のパリ』のこと、ウォン・カーウアイ監督の映画『花様年華』、BEYOND、レオン・ライなどのことを全然知らない人が観たとしてもとても魅力的な映画だと思いました。日本では、この映画をきっかけに香港映画のことに興味を持ち、これから好きになる方も多いと思います。これらの演出についてお聞かせください。

この映画のテーマは、”人物の成長や思い出”という部分が描かれているわけです。実際この映画の中で人物の成長に伴って登場する香港の映画や音楽は、私自身が香港で生まれ育ったときの状況と似ているんですよね。皆さんがよく知っている香港の流行文化の中で代表的なのは、レスリー・チャンやBEYOND、ミルクティーや古いスタイルのレコード店など香港人にとってとても懐かしいものたち。現在、香港はどんどん新しく変わっていっています。

私は、この映画を語るときに当時の流行を取り入れてこういうものが昔はあったのね、というところを描きたかった。あと、もうひとつ共感について考えました。映画を観る人たちがみんな知っているような音楽などを取り入れることで、瞬時に共感を得ることができる効果があるんです。でもただ懐かしいからこの映画を観にくるのではなく、映画で一番大切なのは物語とテーマだと思っています。


ーー映画の中でティンロは、レスリー・チャンの『日没のパリ』の影響でパリのエッフェル塔へ行きますが、映画『29歳問題』を観る人たちへ香港のおすすめスポットがあれば教えてください。

現在、香港はどんどん変わっていってます。発展して今まであったものが消えて新しく生まれ変わっている。例えば建物など香港人としても、ああ、なくなってしまい残念だな、もったいないなと思う場所があります。古いスタイルの飲茶のレストランの建物もどんどん壊されて、高層ビルになってしまっている。映画の中で彼女たちが住んでるような家は、唐の時代の楼閣の中国式の建物ですが、今の香港ではどんどん消えてしまっています。

我々映画を撮る人間にとって困ることは、昔の香港を再現するためにこういった撮影はどこでやるのかということですね。ティンロがホンミンと語らう海辺や思い出の店はシャーティン(Sha Tin/沙田)からタイポー(Tai Po/大埔)エリアで撮影しました。昔の香港は、道端でよく露天商などの屋台がいっぱいあって、いろんなものを売っていた。ところが今は、不衛生だとかで管理下に置かれ、小さくてもお店を出すように言われます。まあ、デパートなどは日本にもありますから、日本の皆さんが香港へ行くとしたら古いエリアへ行ってみるのはどうでしょうか。離島などは昔の香港の良さもまだ残っています。

また映画の中で登場する香港式のカフェなども人気のようです。ぜひ行ってみてください。


ーーキーレン・パン監督自身、29歳の頃思い描いていた理想と現在の自分を比べていかがですか? 女優でありながら脚本や演出までこなす舞台演劇界の第一人者であり、今回映画監督としてもアカデミー賞(香港電影金像奨)最優秀新人監督賞を受賞され素晴らしいご活躍です。あの頃、思い描いていた理想通りの自分ですか? 今後の展望についてもお聞かせください。

実は、29歳のときも、現在もこれからの自分がどうなりたいか考えたことがないんですよ。

私の人生については、消去法ということで物事を考えています。つまり自分自身は、こういう風になりたいだとか考えたことはないんですが、これはなりたくない、これはやりたくない、ということは良くわかる。例えばいつか私は映画をやるんだということも考えたことはなかった。ましてや監督なんて。

また、自分でコンサートをやるなんてことも思ったこともなかった。でも不思議なことに私の目の前にそういうチャンスが時々訪れてくるんです。それでそのとき、じゃあやりましょう、と決めたら一生懸命にやるタイプですね。こういうタイプの人間ですから当然29歳のときも、これから自分はどうなるのかということも考えたことがなかった。

とにかくあの頃は、あれこれ違うことを試してみたかった。試みたかった。で、私の結論は、ある意味私自身にはすごく良い計画があったとか良い企画があったとかそういうことが実はなかったんですが、ひとつ言えることは、非常にラッキーなことにやったことはすべて実ったということなんでしょう。結局そういった段階を経て今日の自分がいるわけです。


ーーありがとうございました。映画のご成功、今後のご活躍も心よりお祈りしております!

■映画『29歳問題』作品紹介

5月19日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー
公式ホームページ:http://montauk-movie.com

原題:29+1
監督脚本:キーレン・パン
撮影:ジェイソン・クワン
美術:チェット・チャン
衣装:セシリア・チック
音響:フィリス・チェン
音楽:アラン・ウォン、ジャネット・ユン
挿入歌:レスリー・チャン、レオン・ライ、ビヨンドほか
編集:リー・ヒンミン
字幕翻訳:鈴木真理子
制作年:2017年
制作国:香港/広東語
上映時間: 111分
配給:ザジフィルムズ/ポリゴンマジック
©2017 China 3D Digital Entertainment Limited

■映画『29歳問題』キャスト

クリッシー・チャウ=クリスティーラム・ヨックワン
ジョイス・チェン=ウォン・ティンロ
ベビージョン・チョイ=チョンホンミン
ベン・ヨン=ヨン・チーホウ
ジャン・ラム=家主
エレイン=エレイン・ジン
エリック・コット=タクシー運転手


【シネマの時間】
アートディレクション・編集・絵・文=諸戸佑美
©︎YUMIMOROTO

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諸戸 佑美

本や広告のアートディレクション/デザイン/編集/取材執筆/イラストレーションなど多方面に活躍。

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