出会いの幅がグンと広がる! 「2枚目の名刺」で築くパラレルキャリア
本業を持ちながら副業に限らない社外活動を営むことを、「パラレルキャリア」と定義したのは、経営学の父とも呼ばれるあの有名なピーター・ドラッガーです。生活を営むために働く本業とは別に、自分のやりたいことや夢の実現に向けて、2枚目の名刺を持ってみませんか?
日本でパラレルキャリアを提唱し、新たな社会づくりの提案を行っているNPO法人「二枚目の名刺」で代表を務める廣 優樹さんにお話を伺いました。
⬛やりたいことをあきらめない2枚目の名刺の価値
——「2枚目の名刺」とは、どのような意味なのでしょうか?
お金を稼ぐことを目的にした副業ではなく、自分が楽しむだけの趣味や娯楽でもありません。
自分が大切にする価値観をもとに、ベクトルを社会に向けて新たな価値を創造すること。本業では挑戦できないことでも、2枚目の名刺を持って活動することができます。
仕事をするとき、その目的は、もちろんお金を得るためというのは大切な要素のひとつではあるのですが、それだけでなく、社会との関係の中で自己実現を図りたいと思っている人も多いはず。
ところが、実現したいことすべてが本業……例えば会社の仕事だけで表現できるわけではないとしたら、それを「本業の仕事とは別のところで実現していくことも考えてみてはどうでしょうか」ということです。
また、本業のほかにもうひとつ。
会社の名前に頼らず、自分の名前で取り組む活動を持つことで生まれる”相乗効果”もあります。
自分自身の価値観を見直す機会になり、またそこで出会った仲間からの刺激を得ることで本業におけるモチベーションが上がったり、新たなスキルが身についてキャリアアップにつながったり……自己の変化が企業や社会に影響をもたらし、還元されていくサイクルに企業などから注目が集まり始めています。
——例えば30代女性︎がこの「2枚目の名刺」を始める意味はありますか。
そうですね。
第一線で仕事をされ部下を持ち責任あるポジションを任されている方が多いかもしれません。
また、結婚をされて子どもがいる方は、母であり妻でありながら多忙な毎日を送っていることもあるかと。
――女性に限った話ではありませんが、たしかに毎日をせわしなく過ごしている人が多いイメージです。
そんな日常の中で、どこかペルソナを被って生きていると思うときがあるかもしれません。「自分の肩書きは置いておき、社会と関わりっていきたい」と感じるときがあるのではないでしょうか。
さらに、ある程度キャリアを進めていくと「本当にこの仕事は自分がやりたかったものなのかな」、「家と会社の往復で終わる毎日に焦燥感を覚える」など、なんだかモヤモヤする気持ちを抱える方もいると思います。
そこで提案したいのは、本業や家庭以外でも自分の居場所を増やしてみること。
つまり2枚目の名刺を持ち、あえていつもの居場所から離れ、気づかぬうちに自分で設定してしまった「身の丈」を超えることです。
特に、NPOなど社会の課題解決に取り組むとき、自分の価値観を揺さぶられる経験を通して、「自分は何を実現したいのか」ということに気付くことが多々あります。
さらに、いつもの仕事のやり方から離れ正解のない社会課題解決に試行錯誤することが、自分の新たな仕事の引き出しを増やすことにもなり得ます。
職業や立場を超えて、価値観を共有する人たちとの緩やかのつながりは、この先自分の人生をきっと豊かにしていってくれるはずですよ。
⬛︎2枚目の名刺を持つためには?
——実際に「2枚目の名刺」を持って活動するにはどうしたらいいのでしょうか。
「これをやりたい!」と明確な意思と行動力がある方は、自分でどんどん環境を切り開いて、気になる人やモノにアプローチできると思います。
その一方で、「パラレルキャリアを築くことに興味があるけれど具体的な取り組み方を知りたい」、「どのような活動に参加すればいいのかわからない」といった疑問をお持ちの方には、期間限定で2枚目の名刺をもってみることをおすすめします。
――期間限定でパラレルキャリアを展開する?
NPO「二枚目の名刺」では、2枚目の名刺を持つきっかけとして、社会を創る活動に取り組むNPOなどと社会人の方をつなぐ場を設けているんです。
50人ほどの社会人に対し3つのNPOなどの代表者プレゼンをセッションの中で行います。
そこで気になる活動があったら、今度は期間限定で2枚目の名刺をもつことになるサポートプロジェクトに手をあげます。
具体的には、社会人6人がチームを組み、3〜4カ月かけてNPOなどの事業推進に取り組むプロジェクトですね。最近では、こうしたプロジェクトは、企業が人材育成などの観点からスポンサーとなることも増えており、定期的にセッションを開催しています。
⬛︎パラレルキャリアによって、新たな刺激や人との出会いがつくられる
——「二枚目の名刺」に来られて活動されている女性はいますか?
たくさんいらっしゃいますよ!
例えば、4歳の子どもを持つ母として、平日は教育関連の仕事に正社員で働きながら、「子育てをする家族のためのイベント」を行う活動を立ち上げた方がいます。
ご本人は、プロジェクトの参加を通して出会える人とのつながりをとても重視されています。リアルなパパとママの声が聞ける場は仕事に役立つだけでなく、自身の子育てにおけるネットワークの幅も広がるからだと言います。
「未来をつくる子どもたちを育てる」ことをライフテーマにして、活動されていますね。
また、自身のスキルアップのために「高校生のキャリア教育プログラム」を提供している団体に参加された方もいます。
その人は常に成果を求められるベンチャー企業で働かれており、新たなインプットを求めていました。そこでいつもとは異なることを実践できる環境に惹かれたそうです。
この活動を通して、異なる組織に属する人たちをまとめて事業を推進されたことで、多様性のあるマネジメントを経験できたと話されていました。
——廣さんご自身も商社で勤務されながら「二枚目の名刺」を運営されていますね。
きっかけは、オックスフォード大学に留学しているときでした。
前職は
金融分野だったんですがが、子どもが生まれた頃から、それとまったく異なる「食料」という社会の問題に関心を持つようになり、留学中に自分でプロジェクト立ち上げ活動を始めました。
それまで関わることのなかった異業種の人たちの出会いや分野外の出来事に接すことで、視野が広くなっただけでなく、いくつもの前向きな失敗を重ねたことが、自分自身を変化させる非常に大きな経験となりました。いつもの自分の居場所を離れたことで、予想もしなかったような変化と刺激に出会う機会なのです。
日本でも、このような機会をひとりでも多くの人に届けたい、言い換えれば、2枚目の名刺を持つきっかけとより多くの人に届けたいですし、2枚目の名刺が当たり前の選択肢にしたい、そう思ってNPO「二枚目の名刺」を運営しています。
ぜひ2枚目の名刺を持って、これまで培った経験を活かしながら、社会の中で新たなアクションを起こしてみてください。社会のこれからを創ること、そしてこれまでの自分を超えることに取り組む方たちを支援できれば嬉しいです。
取材・Text/鈴木リナ
廣 優樹さんプロフィール
慶應義塾大学卒業、オックスフォード大学にてMBAを取得。4児の父。商社勤務の傍ら自身も2枚目の名刺として、NPO法人 二枚目の名刺で代表を務める。現在、新しい働き方や人材育成のあり方として、企業・行政だけでなくアカデミアの方面でも注目されている。
http://nimaime.com
いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。