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恋をする自由について考える【結婚は、本から学ぶ#10】

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本連載の最終回となる今回は、スペインの作家によるLGBTがテーマの小説『ぼくを燃やす炎』という本について書きました。誰でも一度は人を好きになるという経験を通して「自分は何者なのか」という問いに直面し悩みます。無理解な親、いじめなど困難な状況にあっても希望を捨てない主人公の姿を通して、恋愛ができる自由について考えました。

恋をする自由について考える【結婚は、本から学ぶ#10】

『ぼくを燃やす炎』のあらすじ

『ぼくを燃やす炎』(マイク・ライトウッド著,村岡直子訳)‎ は、スペインの作家によって書かれた「若いLGBT」をテーマにした小説。

16歳のオスカルは、ゲイであることを信頼していた友達からクラスメートに暴露されてしまい、いじめの標的になってしまいます。家でも父親から物理的・精神的な暴力を受けており、安らげる場のないオスカル。

少しでも家から離れていたくて通い始めた柔道教室で、新しい友達セルビオに出会います。
ふたりは次第に惹かれ合っていき、オスカルの人生にも希望が見えてくるのですが、現実は厳しく、さらなる試練が待っていて……というストーリーです。

自分は大切な存在であると実感できる恋愛

『ぼくを燃やす炎』を読みながら「人が人を好きになるときに感じる心の揺れに、性的指向は関係ない」と改めて感じました。

オスカルがセルビオと知り合い、彼が自分を気に入っているのかどうか思い悩んだり、テキストメッセージで交わされる会話の中で相手の意図を推しはかろうとしたり、馬鹿なことを言ってしまった……と思い悩んだりする姿は、異性間の恋愛となんら変わりありません。


オスカルは 『The Perks of Being a Wallflower』(日本語訳タイトルは『ウォールフラワー』)という小説を気に入り、好きなフレーズを書きだしているのですが、そのひとつに《人は(自分にとって)ふさわしいと信じる愛を受け入れる》というものがありました。

お付き合いをしている相手から軽々しく扱われても、それを受け入れて付き合い続ける人は、「自分にはその程度の愛情しか与えられる価値がない」と感じている、という意味です(もちろん、その反対もあります)。

この言葉は「自分が自分という人間についてどう感じているか」ということにつながっています。恋愛や夫婦関係のご相談を受けてきた私の立場からも、これは人間関係における真理だと思います。

オスカルも以前は、自分を大切にしてくれない相手から「パンくずみたいな愛情でももらえればいい」と思っていたところがありました。自分にはそのくらいの価値しかないのだから、と。

ですが、セルビオと出会ったことで、自分はもっと大切にされるべき存在だと感じるようになったのです。相手の目を通して自己イメージが高まり、自分のことをもっと大切にしたいと思う――これは、今のままの自分が受け入れられ、愛される形の恋愛の醍醐味です。

恋する自由は誰にでもある

主人公がセクシャルマイノリティであることの苦悩も、この本にはあますところなく書かれています。

信頼していた友人からクラスメートに同性愛者であるということを公表されていじめの標的になり、家では父親にさげすまれるオスカルは、「自分は誰からも受け入れられない人間だ」と感じ、心の痛みを感じないようにするためにリストカットをしてしまいます。

この「アウティング(暴露)」という行為により、日本でもLGBTの若者が自殺するという事件が2015年にありました。

人を好きになるという自然なことが、自然でないと考えられ、社会的に受容されない、という現状があります。
小説の舞台であるスペインでも、また同性婚が合法になったアメリカでも、差別に耐え切れずに死を選ぶ10代の若者がいます。

ストーリーの中で、ずっと自分を愛し支援してくれていた母親が、リストカットの証拠を見つけ、オスカルが苦しかった胸のうちを明かすシーンはとても印象に残っています。そして、その勢いでゲイであることも打ち明けるオスカル。

それに対して、母親は「なにがあろうと、あなたが誰を好きであろうと、あなたを愛し続ける。わたしにとってあなたはあなたのままだし、この気持ちが変わることはない」と力強く答えます。

誰を好きになるのか自由に選べること。

マジョリティである異性愛者にとって、これはしごく当たり前のことのように思えますが、LGBTとして生きる人たちにとって、それは時には生死に関わる命がけの選択でもあることを、このストーリーは気付かせてくれます。

LGBTを支援する本のシリーズ

『ぼくを燃やす炎』の原書はスペイン語。クラウドファンディングで翻訳プロジェクトが成立したら出版作業に入るという仕組みの「サウザンブックス」によって日本語版が世に出ることになりました。

サウザンブックス社はこの本の出版をきっかけに「PRIDE叢書(そうしょ)」というシリーズを立ち上げ、LGBTを支援する内容の本の翻訳出版を行っています。

アメリカや諸外国に比べると、LGBTやその支援についての研究も遅れている日本ですが、こういった外国語の本が翻訳されて多くの日本人が読めるようになることはとても意義のあることです。

LGBTをとりまく話題のひとつに「結婚」があります。
社会的な受容を示す基準のひとつとして、同性婚が認められるようになることがマイルストーンのひとつであることは確かでしょう。

私自身も、LGBTを社会的に受け入れるということは、いずれは制度も変わることを意味していると感じています。

オスカルとセルビアの関係がこのままうまくいき、大人になれば、やがてそういう話にも発展するかもしれません。

でも、このストーリーの中のオスカルやセルビオはまだ10代。
彼らにとってはまず「自分に正直に、つらいことがあっても死なないで生き続けること」、そして「自分の選んだ相手を精一杯愛すること」が目下の最重要事項です。

同性愛者としていじめられたリ差別されたりすることなく、選んだ相手と恋をする自由を享受したい。そんな切実なメッセージを感じました。

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塚越 悦子

カップル&ファミリーコーチ。好きな人と結婚して、結婚した人を好きでいる方法を日夜研究中。 著書「国際結婚一年生」(主婦の友社)、訳書<a href="https://www.amazon.co.jp/gp/prod...

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