「セックスレス」対策!? 100日連続で挑んだ夫婦の記録【結婚は、本から学ぶ#8】
本連載の第8回では、親になったことをきっかけに少しずつ絆が揺らぎ始めた夫婦関係を蘇らせるために、「100日連続でセックスする」ことを決めた夫婦の記録である『101回目の夜』という本について書きました。突拍子もないチャレンジの詳細な記録を読み進むにつれ、思いがけない感慨が湧いてくる一冊です。
『101回目の夜』は100日間連続セックスを記録した物語
『101回目の夜』は、アメリカの新聞記者ダグラス・ブラウンが、妻のアニーと取り組んだ「100日間連続セックス」の様子を記録した物語です。
原書には、”Just Do It"というフレーズと、「テレビを消してふたりのセックス・ライフに向き合ったあるカップルの記録」という副題がついています。日本語版では「101回目の夜」というシンプルな題名になっていました。
妻のクレイジーな提案
著者であり夫のダグラスをして「正気でない」と言わせているこのアイデアは、実は妻アニーからの提案でした。
新聞記者であるダグラスは、仕事中に出会ったデンマーク人の男性から、「100日クラブ」の話を聞きます。パートナーがいるのに100日以上セックスをしていない友達数人と、その悲しい状況をさかなに愚痴をこぼし合うというクラブを作っているというのです。
その話をダグラスから聞いたアニーは、しばらく考えていましたが、ふと「いいことを思いついた! 私たちもクラブを作りましょうよ。ただし、私たちのは正反対で、100日連続でセックスするの!」と言ったのです。
結婚して14年がたち、ふたりの幼い子どもたちがいるカップルに訪れた突然の転機。
まずふたりは、100日間を乗り切るための作戦会議をします。
毎日「しなければならない」となると、100日はとても長く感じられます。
その節目節目に小旅行やちょっとしたイベントを考えておいたり、子どもたちの世話をしてくれる家族やベビーシッターの手配について話し合ったり、はたまた寝室をもっとムードあるものに整える、服装、化粧、身だしなみ、ふたりで取り組める運動についてなど……そして開始の前にふたりとも医者にかかってアドバイスをもらうこともしました。
ふたりの思慮深いプランニングの様子が描かれたこの最初の章だけでも、読んで学ぶところのある本だと思います。
仕事、育児、家事……「疲れ」との闘い
100日の間に、ふたりだけの小旅行がいくつかあるのを除けば、大半は「日常生活」のなかでの試みになります。
そして、その日常生活とは、幼い子どもたちを中心に回る「両親」としての役割をこなす毎日。
ふたりとも働いており、子どもたちの世話をして、家事をこなして……子どもがいる共働きのカップルにとってはおなじみの光景が続いていきます。
そんな生活のなかで、セックスを「毎日やらなくてはならないタスク」と同列に並べるために、ふたりは多大な努力を払います。
夕食をお腹がいっぱいになるまで食べないというのもそのひとつ。
慢性的に睡眠不足な共働きの親にとって、最大の敵は「疲れ」であり、寝る前の時間に満腹になることは、目標達成には逆効果だと判断したのです。
また、ふたりともヨガに頻繁に通い、ダグラスは筋トレもして、体を健康に保つための努力を続けます。
100日のうちには「もう今日は疲れてダメだ」「やめちゃおうか」という会話が起こる日もありましたが、さまざまな「ヘルプ」を活用したり、延々とおしゃべりをしたりするうちに気力を回復し(ときには奮い立たせて)、ついに100日連続でゴールを達成しました。
プロジェクトの終わり
かねてから同僚に「100日終わっても、縁起をかついでもう1日だけやるべき」と言われていたダグラスは、101日目をもって正式にプロジェクトの終わりを宣言しました。
この100日の間、ふたりはそれまでの14年の結婚生活よりも絆を深めていました。
金銭的な問題から引っ越しばかりしていたふたりは、100日の間に、本当に自分たちが求めているものについてトコトン話し合い、考えをまとめ、数カ月後に家を買いました。
ダグラスは「結婚してから初めて、僕たちは本当の意味でかみ合い始めたのだと思う。デートのときだけでなく、楽しい休暇のあいだだけでなく、セックスの最中に時々起こるきらめきの(だが短い)瞬間だけでなく、料理しているときも、子どもと遊んでいる土曜日の午後も、そしてあくせく仕事をしているときも」と書いています。
ふたりは14年の結婚生活で少しずつ緩んできたネジを締めなおしたのです。ダグラスは本書をこう締めくくっています。
「100日間連続のセックスは、最高に楽しい部分もあるとはいえ、まったく必要ないことがわかった。一か月愛し合うだけで驚くほど効果があると思う。あるいは2週間でも、10日でも、1週間でも。とにかくやろう (Just do it.)。」
日本では夫婦の半数以上がセックスレスとも言われています。
そうなる過程にはそれなりの事情があり、頭で考えたり、話し合いを重ねるだけでは解消できないこともあるでしょう。
でも、100日間という荒療治は難しくとも、思考よりも身体の感覚を優先させてみることで、お互いについて、自分について、学べることはあるのではないでしょうか。
長い間、夫婦関係を続けていくことに不安を感じている人に、特におすすめの一冊です。