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排卵誘発剤の種類と使うときの注意点【知っておきたい、体外受精の基礎知識#6】

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体外受精という不妊治療が一般的に知られるようになった昨今。不妊症に悩むカップルは6〜10組に1組と言われる今、体外受精を受けている方は珍しくありません。この体外受精という治療について、山中智哉医師が詳しく解説する連載、6回目では「排卵誘発剤」の「注射薬」のしくみを説明します。

排卵誘発剤の種類と使うときの注意点【知っておきたい、体外受精の基礎知識#6】

排卵誘発剤には「内服薬」と「注射薬」があります。
今回は、体外受精でよく使用される「注射薬」についてお話しします。

もともと、ヒトの体の中では、脳下垂体から「ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)」というホルモンが放出されています。

「ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)」は、性腺(女性なら卵巣、男性なら精巣)を刺激し、女性ホルモンや男性ホルモンの分泌を促します。

女性ホルモン(エストロゲン)は、主に卵巣から分泌されていますが、ホルモンの分泌量が増える過程の中で、卵巣内には卵胞が形成されて、排卵される卵子の準備が進んでいきます。

つまり、「ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)」が、女性が体内に持っている「排卵誘発ホルモン」ということになります。

「排卵誘発剤」は、その排卵誘発ホルモンを薬剤として製剤化したものになります。それでは、その排卵誘発剤はどのように作られるのでしょうか。

■排卵誘発剤と「閉経した女性の尿」の密接な関係

排卵誘発剤は、「FSH製剤」や「HMG製剤」という呼ばれ方をします。

FSHという言葉は、「Follicle Stimulate Hormone」という言葉の頭文字で、Follicle(卵胞)、Stimulate(刺激)、Hormone(ホルモン)つまり「卵胞刺激ホルモン」ということになります。

一方、HMGという言葉は、「Human Menopausal Gonadotrophin」という言葉の頭文字です。閉経のことを英語でmenopause(meno → mense(生理)、pause → 止まる)と言うことから、HMGは「閉経したヒトのゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)」という意味で、実際に閉経した女性の尿から抽出されています。

閉経した女性の卵巣は、機能が衰え、女性ホルモン(エストロゲン)を産生することができません。しかし、脳下垂体は機能しているので、女性ホルモンが不足すればするほど、脳下垂体は女性ホルモンを増やそうとしてより活発に働き、ゴナドトロピンの産生量は増えていきます。

したがって、閉経女性の尿中には、多量のゴナドトロピンが含まれていることから、そこから排卵誘発剤としてゴナドトロピンを抽出する方法が確立されました。

脳下垂体から分泌されるゴナドトロピンには、FSH(卵巣刺激ホルモン)とLH(黄体化ホルモン)の2種類があります。

閉経女性の尿から抽出したゴナドトロピンには、FSH、LHともに含まれていますが、製剤の過程で、それぞれ異なる含有量の製剤が各製薬会社によって作られています。

製剤がほぼFSHだけで構成されている薬剤を「FSH製剤」、FSHとLHが混合されている薬剤を「HMG製剤」と呼び、患者さんのホルモンバランスに合わせて、投薬が行われています。

また最近では、「リコンビナントFSH製剤」という遺伝子組み換え技術を用いて作られた排卵誘発剤も使用されています。

遺伝子組み換え技術は、大腸菌などの微生物の遺伝子を操作し、この場合、FSHを産生するように細胞をコントロールし薬剤を抽出する方法です。尿由来のゴナドトロピンと異なり、LHが混じることのないピュアなFSH製剤として、近年、臨床の場でも使用される機会が増えています。

■排卵誘発剤を使っても、期待した反応が得られないケースも

排卵誘発剤を注射すると、卵巣には、本来のゴナドトロピン以上の排卵誘発ホルモンが届くことになります。それによって、排卵障害がある女性では卵胞形成が進むようになったり、体外受精においては、もともとひとつしか育たない卵胞が、複数個育ち、2個以上の卵子を採取することができるようになるわけです。

ひとつ大切なのは、排卵誘発剤を使用すれば、卵胞が確実に育つようになるわけではないということです。

先に、閉経後の女性の体の中では、ゴナドトロピンの産生量が増えているということを書きました。しかし、ゴナドトロピンが増えても、卵巣機能が衰えていれば卵胞形成が進むことはありません。つまり、閉経までいかなくとも、卵巣機能が低下してきている女性には、排卵誘発剤を使用しても、使用量に応じた反応は見込めない可能性があるということになります。

最近では、不妊治療を行っているご夫婦の年齢は上がってきており、卵巣機能の低下が不妊の原因となっていることも多くあります。そのため、排卵誘発剤を使用する際には、その方の卵巣機能がどの程度あるのかということに、十分注意を払って使用することが大切なことだと考えています。

今回は、ホルモンの名前やその機能など、やや難しい内容になりました。

引き続き、体外受精や排卵誘発についてお話ししていく予定ですが、次回はいったんブレイクとして、最近不妊治療の世界で話題になっている「ERA検査(子宮内膜着床能検査)」について、お話しします。

これは、繰り返し体外受精を行なっても妊娠しない方だけでなく、自然妊娠や人工授精を行なっている方にも関係する検査です。

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山中 智哉

医学博士、日本産科婦人科学会専門医、日本抗加齢医学会専門医 現在、東京都内のクリニックにて、体外受精を中心とした不妊治療を専門に診療を行なっています。 不妊治療は「ご夫婦の妊娠をサポートする」ことがその課題となりますが、...

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