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世の中から小さな“嫌い”をなくしたい――シャンデリアアーティストが作品に込めた想い

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些細な”嫌い”や”憎しみ”から大きな争いが始まることがある。だから、彼女は身近にある小さな場所から、人種や性別などによる差別を変えるための表現を続けている。

世の中から小さな“嫌い”をなくしたい――シャンデリアアーティストが作品に込めた想い

私たちには“常識”があります。
それは、幼いころから環境や周囲の人たちと触れ合いながら暮らしていく中で身についたもの。人それぞれ少しずつ違った“常識”や“固定概念”を持ち、モノゴトの判断を委ねています。

しかし、大きく膨れ上がった固定概念は、ときに誰かを傷つけ、居場所を奪ってしまう可能性があります。みんなの「当たり前」が、誰かをこの世界の片隅に追いやってしまっているとしたら――。

そんな“固定概念”を壊すことで、見たこともないような世界を演出し、観客にドキドキとワクワクを届けてくれるのが、シャンデリアアーティストのキム・ソンへさん。


ぬいぐるみやおもちゃなどを用いて、既存のアイテムをコラージュする表現手法が特徴的で、木村カエラやきゃりーぱみゅぱみゅとのコラボレーションも行う、いま注目されるアーティストのひとりです。

DRESS1月大特集「強運をまとう」の表紙にも飾られていますが、『DRESS』をテーマに熊手をつくっていただきました。

今回は、キムさんが作品へ込めたある想いを、インタビューを通じてご紹介します。

■これが熊手⁉ DRESSをテーマに作られた作品

キム・ソンへさんによって作られた『DRESS』をテーマにした熊手

――このたびはDRESSのために熊手を作っていただきまして、ありがとうございます。今回の作品は、どんなことを意識して作られたのでしょうか?

DRESSさんのイメージを熊手に取り組みたかったので、女性が好きなキラキラしたモノやコスメ、ファッションのような普段の生活の中で身近に感じられるアイテムをたくさん盛り付けられたらいいなと。

それから、お酒ですね。特別な日には、ちょっと高級なシャンパンとか開けているイメージがあったので。

――いろいろなアイテムを使っていますよね。よく見るとDRESSにちなんだアイテムが発見できるのも楽しいです。

今回の作品だけに限らないのですが、キラキラした、ワクワクするような世界観になればいいなと思っていて。

作品に使用する素材は毎回違いますけど、結局は見た人をドキドキさせたいし、「こんなの見たことない」という気持ちになってもらいたいんです。そう感じてもらえるのが一番嬉しいですね。

■性別や人種が違っても、お互いを認め合える世界観

――DRESSは「多様性」をコンセプトのひとつにしたメディアなのですが、今回作っていただいた作品には、まさにその多様性が表現されていると感じます。

素材の組み合わせによっては、パッと見、マッチしないような印象があるんですけど、一緒になってみると“意外に調和する”というような感覚が好きなんです。

実は、私も「多様性」を作品のコンセプトにしていて……。ボーダレスとかジェンダーレスとか、そういったものを作品のテーマにしているんです。

こういった作品に使うアイテムは“モノ”なんですけど、私としては“人”として扱っています。

世界にはいろんな性別や人種の方々がいる。そこに違いはあるけれど、ひとつの作品になることで新しい調和が生まれるのだと、作品を通して伝えたいんです。だから、一見交わらないようなアイテム同士を組み合わせたり。

根底にあるのは、「立場」や「性別」、「人種」が違っても、お互いを認め合うことができる世界観なんです。

■自分の周りから少しずつ、世界を良くしていきたい

――そういった想いはいつから?

最近までは感覚で作品を作っていたんです。そもそも自分のことを言葉にすることや相手に伝えることがあまり得意ではなくて……。

でも、2年前くらいに個展を開いたとき、「どうしてこういった作品を作ってるのか?」という質問を多く受けて。それで、原点を振り返ってみると、やっぱり“自分が育ってきた環境”っていうのがあるんです。

私は在日朝鮮人で、子どものころから差別を受けてきました。
日本では外国人として扱われる。けれど韓国に行ったら日本人として扱われる。
それで、「自分の居場所ってどこにあるんだろう」「どこにも自分のアイデンティティーがない」ということを常に考えていました。それがコンプレックスだったんですよ。だから、「差別なんてなくなればいいのに」って。

「私とあの人は違う」という歪みから“嫌い”や“憎しみ”という感情が始まって、“喧嘩”になって、それから“戦争”が生まれることもあります。きっかけはほんとに小さなことだったりしますよね。だからこそ自分の周りの、小さいところから良くしていきたい。

私の作品が、そういったきっかけになれば嬉しいです。

――受けてきた“差別”を“表現する力”に変えてきたんですね。

自分だけの力で世の中がどうなるかはわからないです。でも、自分が作った作品を見てくれた人たちのなかから、固定概念がなくなっていけば良いなと思います。

こんな仕事もあるんだなぁ、って感じたり(笑)。
「熊手ってこういう風にしちゃっていいんだ」ということをみんなが思ってくれて、そこから固定概念がなくなれば、少しずつ平和になっていくんじゃないかなと思います。

――最後に2018年に挑戦してみたいことを教えてください。

2017年はマイアミで初めてアートフェアに出展できたので、今年はもっと世界中の、たくさんの人に作品を見てもらえる場所を作りたいです。

そこで、私が抱えている想いとかもきちんと伝わるような演出ができればいいですね。

(編集後記)

確固たる“常識”や“価値観”はモノゴトの白と黒を明確にしてくれます。
しかし、そういった二極の判断軸を持つことが、かえって息苦しいと感じることはありませんか? 

キムさんの作品からは、すべての人が少しずつ違った考えを持っていて、それらが色鮮やかなグラデーションとなって世界に広がっていく――そんな景色を感じることができます。


DRESSをイメージにつくられた熊手には、大人の女性だからこそ面白いと思える仕掛けがたくさん。ぜひ、楽しんでご覧ください。


それではDRESS1月大特集「強運をまとう」スタートです。


取材協力/キム・ソンへ

取材・Text/小林航平

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DRESS編集部

人生を自分らしく楽しむ大人の女性たちに、多様な生き方や選択肢を提案します。

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