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「感情に支配されないで」 日々の暮らしの中に“隙間”をつくるべき理由

「洗濯機のようにグルグルと回り続ける暮らしの中にこそ、隙間を作り出し、体と呼吸を整える時間をつくってほしい」そう話す女性僧侶・大澤香有さんの想いとは。

「感情に支配されないで」 日々の暮らしの中に“隙間”をつくるべき理由

「心を整えましょう」
「自分の心と向き合いましょう」


こう言われたとき、目に見えない“心“という存在に、迷わずアプローチをすることができる人はどれくらいいるのでしょうか。そもそも、心を整える・心と向き合うとは、具体的にどういうことなのでしょう?

「私たちの心は『これです』と、目に見える形で出すことができません。それでは、どうのように心にアプローチをするかというと、まず一番外側にある私たちの体を整える。それから体の中を通っている呼吸を整えていくことによって、心を整えていくのが現実的なんです。直接アプローチできないものに対して、こういったテクニックを駆使して触れていく。それが坐禅だったりヨガだったりするわけなんですよ」

そう話してくれたのは、美坊主コンテストグランプリにも輝いたことのある、曹洞宗の僧侶・大澤香有(おおさわ・こうゆう)さん。

仕事に恋愛、または家族のこと、家事に子育てにプライベート……現代を生きる女性たちの生活には、あらゆる要素が詰め込まれており、少しの隙間さえあっという間に埋められていきます。

「洗濯機のようにグルグルと回り続ける暮らしの中にこそ、隙間を作り出し、体と呼吸を整える時間をつくってほしい」

そう真剣に語る彼女に詳しいお話を伺いました。女性僧侶として、坐禅会やヨガのレッスンを開いている大澤さん。彼女が「心を整えるためには、まずは姿勢を正すことが必要」だと伝える理由とは――。

■心が整うとはどういうことなのか?

「心が整うというのは、精神が平穏な状態であることを意味しています。妬みや不安みたいなものを解消するということもそうですけれども、そもそもそういった感情が生まれなくなる状態にすること。これが心を整えるということですね。


“妬み”という感情も、自己肯定感が高まると必要がなくなるんです。自分は自分で良いんだって気持ちがないから、『あの人の方が……』という感情が生まれてしまう」

自分の中にある自己否定を自己肯定に変えていく行為が、心を整えること。また、心を整えることは、感情によって自分を支配されないためのものだと大澤さんは話します。

「例えば、お菓子を食べることを止めたいのに、止められない人がいる。この人って、もうその場に自分がいなくなってしまっている。自分の感情に支配されてしまっている状態です。

感情とか思考はどこからともなくやって来て、どこへともなく去っていきます。流動的なんですよ。だから必ずしもその感情自体がその人であるということではありません。つまり、感情に支配されているということは、自分ではない何かに、自分自身を預けてしまっている状態。この支配された尊厳を取り戻すためのツールとして、ヨガや坐禅などがとても役に立ちます

感情のままに、自身の欲求に忠実に生きることが「自分らしく」と表現されることもある世の中で、大澤さんの言うように感情に支配されることが、完全に悪いことなのでしょうか。疑問を持つ方も少なくないと思います。

「食べたい時に食べる。これが私なんだ!って、それはそれでいいです。でも、『本当はダメだ』ってわかっていたり、『やめたい』と思っているのに、やってしまう。それは、あなたの本心ではありませんよね。ましてや、衝動的に自分や相手に危害を加えてしまう。それを“自分がやりたかったから”では済ませられません。

『カッとなって暴力を振るいました、これが私なんです』って言われたとしても、カッとなってる時点で、すでに感情に支配されていますし、もはや感情の奴隷になっている状態ですね」

■心を整えるために、まずは自分の体を見つめてほしい

「心にアプローチするためには順を追っていかなければいけません。体を整えて、呼吸を整えいく必要があります」

この体を整える・呼吸を整えることが、どのように心に影響を与えるのか。

大澤さんは次のように語ってくれました。

「まず、深く呼吸をすることで自分の心の中に隙間が生まれます。隙間が生まれると、そこに自分の考察を入れることができます。もうひとり、自分を客観視する観察者を作り出すイメージですね。


これが習慣的にできるようになると、自分の中に沸き上がる感情や、他人にぶつけられた感情、その場で起きた状況を客観的に観測することができます。そうすると、自分の感情でいっぱいになってしまわずに、目の前の出来事がどういう状態なのかということに目を向けることができます」

怒りをコントロールするアンガーマネジメントでも、「怒りの原因は、自分自身のゆずれない価値観」だと言われていますが、マイナスの感情を手放すコツは、自分中心的な考え方ではなく、客観的に相手の(または自分の)気持ちを考えることだそうです。

■相手を許せないということは、自分へ罰を与え続けるということ

「人間ならどうしても嫌いな人っているじゃないですか。相手を許せないということだってあると思います。


でも、そういうことって自分の中で克服していかないといけないんですよ。
相手を許せないという感情は、結局自分を苦しみで縛り付け続けることになります。そして、憎しみに時間とエネルギーを注ぎ続けてしまう。これでは、本当の意味で豊かな人生を送ることはできません」

相手を許すことで、本当の意味で豊かな人生を送ることができる……というと聞こえは良いですが、なかなか実行できることではありません。

とどめることのできない怒りや悲しみを乗り越えて、相手を許すという行為が、理想論のように聞こえる方もいるでしょう。ですが、これも自分が感情に支配されないためのテクニックなのだと彼女は言います。

「たしかに、とても難しいんです……。私も長年許せない人がいて、本当に苦しみました。 でも、結局“許せない意識”があるということは、自分を許さないのと同じです。 相手が“憎い”という嫌な感情を自分に与えつづけることが、自分への罰になっている。

自分が楽になりたければ、相手を許す以外に方法はないんですよ。誰かに腹を立て続けて、その日一日の気分が良くないのはその人自身ですから」

自分の心に隙間をつくり、客観的な視点を自分の中に持つこと。そして状況をありのままに把握することは、人間関係において非常に役に立つと大澤さんは話します。

そしてこのテクニックは、自分の体の姿勢と呼吸を整えることによって身につけることができるのだと。



ここまで、心を整えるために自分の体の姿勢と呼吸を正すことがいかに大切かを紹介していただきました。次回の記事では、大澤さんに「具体的な姿勢を正すテクニック」について伺っています。

キーワードは「背骨の柔軟性=年齢」。
毎日の生活の中に1分間だけでも取り入れる簡単なものなので、ぜひご覧ください。健全で健康や生活にきっと役立つはず……!

取材協力/大澤香有

大澤さんのブログはこちら
https://ameblo.jp/koyu-zenyoga/

取材・撮影/小林航平

DRESS編集部

いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。

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