1. DRESS [ドレス]トップ
  2. ライフスタイル
  3. 『スタンフォード式 最高の睡眠』に学ぶ質の高い睡眠のとりかた【積読を崩す夜 #14】

『スタンフォード式 最高の睡眠』に学ぶ質の高い睡眠のとりかた【積読を崩す夜 #14】

【積読を崩す夜】14回目は、『スタンフォード式 最高の睡眠』をご紹介します。「睡眠負債」を土日の寝だめで解消しているという人も多いようですが、そう簡単には取り返せるものではないとか。睡眠研究の総本山ともいわれるスタンフォード大学において、長年研究を続ける著者が語る睡眠メソッドをご紹介します。

『スタンフォード式 最高の睡眠』に学ぶ質の高い睡眠のとりかた【積読を崩す夜 #14】

■『スタンフォード式 最高の睡眠』から学ぶ睡眠メソッド

積んであるあの本が、私を待っている……。少し早く帰れそうな夜、DRESS世代に、じっくりと読み進めてほしい本をご紹介する連載【積読を崩す夜】。

14回目は、『スタンフォード式 最高の睡眠』(著:西野精治)を取り上げます。

働き世代は、忙しいからとつい自分の睡眠時間を削って、どうにか辻褄を合わせようとしがち。

NHKスペシャルに著者の西野精治さんが出演したことで、「睡眠負債」という言葉が大変話題になりました。

睡眠研究の総本山といわれるスタンフォード大学において、長年研究を続ける著者。日本語による初めての著作から、睡眠メソッドをご紹介します。

■最高の睡眠=量では解決しない

「最高の睡眠=量では解決しない」
「眠りについての悩み=量では解決しない」

それでは改めて、最高の睡眠とは何だろう?答えは、「脳・体・精神」を最高のコンディションに整える、「究極的に質が高まった睡眠」となる。

睡眠と覚醒(パフォーマンス)はセットになっている。脳・精神・体のコンディションを整える質の良い睡眠をとれば、仕事でも勉強でもパフォーマンスの高い一日が送れるし、単に量を求めてだらだら眠ったら、調子が崩れてしまう。

(8ページより引用)

睡眠がとれていないのだとしたら「しっかり寝てください」、という話で終わらせるつもりはないと著者は言います。実際問題、働く世代にとって、約7時間もの睡眠時間を毎日確保することは、簡単なことではありません。

手っ取り早い方法として「土日の寝だめ」で解消しているという人も多いようですが、睡眠負債はそう簡単には取り返せないようです。

どれだけ眠れば寝不足を解消できるのか。それは、実験によると、1日平均8.2時間であるといいます。たとえば、7.5時間しか睡眠がとれず、40分の睡眠負債を抱えていたとすると、それを取り戻すには、毎日14時間ベッドにいることを3週間続けなくてはならないのだとか。

日ごろの睡眠不足を、土日のたった2日間で解消することなど、到底不可能だということ。それなら、睡眠の量ではなく、いかにして質を高めるかが重要になるでしょう。

■「最初の90分」の質を高くする

優秀な人は当然ながら多忙だ。睡眠時間をしっかり確保するのは難しい。そこで私が提案するのは、「睡眠の質を最大限に高める」ことを突き詰めたメソッドである。

人は眠りに落ちてから目覚めるまで、ずっと同じように眠っているわけではない。眠りにはレム睡眠(脳は起きていて体が眠っている状態)とノンレム睡眠(脳も体も眠っている睡眠)の2種類があり、それを繰り返しながら眠っている。

寝ついたあと、すぐに訪れるのはノンレム睡眠。とりわけ最初の90分間のノンレム睡眠は、睡眠全体のなかでもっとも深い眠りである。

(53~54ページより引用)

ノンレム睡眠とレム睡眠は、明け方まで4〜5回繰り返し現れて、明け方になるとレム睡眠の出現時間が長くなると著者はいいます。浅くて長いレム睡眠時に目覚めるのが、自然な流れのようです。

ノンレム睡眠は、入眠直後に最も深くなるため、最初のノンレム睡眠をいかに深くするかが、ポイントになりそうです。

著者が「最初の90分が眠りのゴールデンタイム」と語る理由として、成長ホルモンが最も多く分泌されるというところにあります。子どもの成長だけではなく、大人にとっても細胞増殖や正常な代謝を促進させる働きもあり、アンチエイジングに効果があるともいわれています。

この90分の質が高いと、すっきりとした朝が迎えられ、昼間の眠気も抑えられるのだとか。「寝る時間がない」という人は、最初の90分の質にこだわる必要がありそうです。

■「体温スイッチ」を調節して最高の睡眠を生む

1)覚醒時は体温を上げてパフォーマンスを上げる(スイッチオン)。
2)皮膚温度を上げて(オン)熱放射すると、深部体温は下がり(オフ)入眠する。
3)黄金の90分中はしっかり体温を下げて(オフ)、眠りの質を上げる。
4)朝が近づくにつれて体温が上昇し(オン)、覚醒していく。

このメリハリがあれば、最初の90分はぐっと深くなり、すっきりと目覚められる。日中の体温も上がり、眠気もなくパフォーマンスが上がる。

(128~129ページより引用)

メジャーリーグでは「体温」に注目しているといいます。体温が高いときはパフォーマンスがいいけれど、体温が低いときはエラーが多いという実験結果も出ているのだとか。日中のパフォーマンスには体温と睡眠が大切であり、両者は密接に関係しているようです。

さらに、睡眠クオリティを上げるには、3つの「体温スイッチ」があると著者はいいます。

・就寝90分前の入浴
・足湯に秘められた驚異の「熱放射力」
・体温効果を上げる「室温コンディショニング」

「体温は上げて下げて縮める」というポイントがあるのだとか。深部体温が下がると眠くなるという話はよく耳にしますが、皮膚温度を上げて熱放射して深部体温を下げ、皮膚と深部の体温差を縮めるということを指しているようです。

寝る90分前の入浴はその働きがうまく作用して、スムーズに入眠できる。そして、意外なところで足湯は、足の血行をよくして熱放射を促す働きがあるのだとか。室温も高すぎたり低すぎたりすると、その効果が出にくいようです。

寝る前に体温環境を整えて、上手に入眠することで、質の高い睡眠を手に入れることができそう。年末年始は、睡眠の質を高める良いチャンスになりそうです。

『スタンフォード式 最高の睡眠』書籍情報

著者 西野精治さんプロフィール

スタンフォード大学医学部精神科教授、同大学睡眠生体リズム研究所(SCNラボ)所長。医師、医学博士。1955年大阪府生まれ。1987年、当時在籍していた大阪医科大学大学院からスタンフォード大学医学部精神科睡眠研究所に留学。突然眠りに落ちてしまう過眠症「ナルコレプシー」の原因究明に全力を注ぐ。
1999年にイヌの家族性ナルコレプシーにおける原因遺伝子を発見し、翌2000年にはグループの中心としてヒトのナルコレプシーの主たる発生メカニズムを突き止めた。
2005年にSCNラボの所長に就任。睡眠・覚醒のメカニズムを、分子・遺伝子レベルから個体レベルまでの幅広い視野で研究している。
「睡眠の謎を解き明かして社会に還元する」を命題としており、多くのアスリートから支持されている「エアウィーヴ」の開発研究にも携わった。
2016年4月より一般社団法人良質睡眠研究機構の代表理事に就任。科学分野の人材育成への思いから、大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎北米支部同窓会会長も務めている。
本書が日本語での初著書になる。

ナカセコ エミコ

(株)FILAGE(フィラージュ)代表。書評家/絵本作家/ブックコーディネーター。女性のキャリア・ライフスタイルを中心とした書評と絵本の執筆、選書を行っています。「働く女性のための選書サービス」“季節の本屋さん”を運営中。 ...

関連するキーワード

関連記事

Latest Article