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相手に見返りを期待するような恋に先はない

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気持ちの入った料理が食卓に並ぶとつい頬が緩む。「結婚の決め手は彼女の手料理!」はなにも男性ばかりでない。疲れているときに、「今日は僕が料理するね」とラーメンを作ってくれたことに、とても癒されたのを今でも覚えている。ただ、胃袋を掴むつもりが、逆に相手を遠ざけてしまうときもあって……。

相手に見返りを期待するような恋に先はない

20代のころは積極的に料理を振舞ったことがあまりない。


思えば料理だけでなく、相手のために尽くすタイプではなかった。そんな恋愛でも十分楽しかったし、相手のことをいつも信用していた。自分で言うのもなんだけれど、とてもいい関係性だったと勝手に思っている。


紆余曲折を得て、30を過ぎたあたりから遅ればせながら料理に興味を持ち始め、教室にも通った。

あるとき、相手がカレー好きだと言うので週末におもてなしをすることになった。そうと決まった当日までの1週間、ひたすらカレーと格闘する日々が続いた。

カレー粉からこだわるが、作っても作っても、納得のいく味にならない。気付けば1日3回、朝の出勤前から帰宅して眠るまでひたすらカレー作り。冷凍庫にどんどん溜まっていく容器。これだけがんばれるなら試験勉強もっとがんばれたよね、と思うほどのやる気。完璧を求めすぎていた。


――当日、「小腹が空いた」と彼が近所の唐揚げ屋に立ち寄ろうとしたときには、「150%空腹で来いや!」と心底思った。

「あんなに練習して、全力で作るんだから、あなただって全力で味わって……!」などという勝手な想いが胸の中を占領していた。

いざ相手が食べ終わって帰っていったときは一気に力が抜け、ひと仕事終えた気さえしてホッとした。しかし、そんな風に料理をがんばっても、相手との関係性が良い方向に発展することはなかった。

「こんなに尽くしている私、女性らしいでしょ。大事にしてね」、という無意識な期待。与えた分だけの見返りを求めていた自分に気づいた。料理と一緒にいろいろな感情も乗せていたのだろうか。カレーを見て彼を見ず。

お粗末さまです。


一方で、知り合いの女性は「結婚するまで男性に料理を作らない。当然、家にもいれない」と言う。

男性に料理を作ってあげると、女性に対して渇望感がなくなってしまい、興味半減、がんばらなくなるとのことだった。一理あるな、と思う。

そもそも相手の望みはなんだろう?

この夏の間、短期限定だが縁あって知り合いの築地の飲食店で働かせてもらった。
お客さんが帰り、仕事が終わったあとにいただく「賄い」がなにより美味しい。賄いが美味しいからこそ、がんばれた部分もある。

昼過ぎには今まで感じたことがなかった穏やかな日差しが店に入り心が和む。忙しくはあった。けれど、そこには相手への気遣いや思いやりがあふれ、時には冗談を言いながら――とても居心地が良い空間ができあがっていた。


気が上がるってこういう場所を言うのだな。


その相乗効果もあって賄いがさらに美味しかったのだと思う。もし、環境が違っていたら、こんな風に「美味しい」と思うことはなかったかも。

賄いをいただきながら改めて思った。

相手の胃袋を掴もうとする前に、居心地の良い時間を共有し、相手を思いやることができたら、初めて胃袋とともに心を掴めるようになるのではないか。20代のころの私は料理が得意でなくとも、胃袋以前にそれができていたのかもしれない。

相手に期待するよりも、まずは自分が楽しむこと。相手と向き合うこと。

胃袋も心も掴むための最初の一歩だ。

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松永 怜

東京出身。フリーライター。ワーク・ライフスタイル・恋愛・婚活を中心に執筆中。趣味は高校野球・アクリル画、銭湯。

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