夏は海へ。イタリア人の過ごし方〜ミラノ通信#16
日焼けが大好きなイタリア人は、夏はビーチへバカンスに出かけます。パラソルと透き通った海、新鮮な魚介類など、のんびり日焼けしながら過ごすバカンスは優雅ながらとても人間らしい時間ではないでしょうか。ミラノ在住の河見恵子さんにレポートしていただきました。
イタリアの学校は6月はじめから3カ月の夏休みに突入します。海に囲まれ、北から南まで数多くの山々が連なるイタリアは、ビーチ天国、ハイキング天国。
なかでも夏はやはり海が人気、なぜならイタリア人は日焼けが大好き。大好きを超え、いかにブロンズ色に肌を焼くかに命をかけているくらいの気合いが感じられます。
男性はもちろんのこと、女性も! というのがすごいところ。イタリアに美白なんて言葉はありません。夏に白い肌でいるのは、バカンスにも行けない可哀想な人、という認識なのです。
ヨーロピアンの中でも、イタリア人はオリーブ色の肌を持つと言われ、真っ白な肌ではありません。日焼けして真っ赤になる肌質ではない上に、見事なブロンズ色に変身します。
それが彫りの深い、ガッチリした彫刻のような体型と相まって、素晴らしい効果を生み出すのです。
■週末を利用してビーチの旅へ
4月に気候が良くなってくると公園などで日焼けに勤しみ、来たる夏の日に備えるイタリア人。6月からは学校の休みとなり、週末ごとに海に向かう高速がかなりの混雑を見せ始めます。
まずは子供と妻が海辺の町へ、夫は週末だけ参加。8月になると、仕事もおしまい、およそ1カ月の休暇がスタートして家族と合流、というのが大抵のイタリア家庭。なんだか羨ましい限りです。
さて、今夏、アフリカからシロッコと呼ばれる熱波が襲来していたイタリア、ミラノでは連日37〜38℃、フィレンツェは40℃超えを記録する猛暑日が1週間ほど続きました。日陰や家の中にいればまだしのぎやすいとはいえ、街中ではぐったりする日差しが容赦なく照りつけてきます。
海に行きたい! と思っていたところに、海辺の町に住む友人からタイムリーなお誘いがあり、週末を利用してビーチ三昧してきました。
日の出は車窓から、サングラスをかけると誰もがカッコよくなるイタリア人。彫りが深いせい?
アドリア海に面するアンコーナの街は、ギリシアやクロアチアにもフェリーが出る港町ですが、界隈には数多くのビーチがあり、どこも多くのイタリア人で賑わっています。
ミラノを出て3時間、海沿いを走る列車から見えるビーチはどこも大賑わい
■プライベートとパブリックに分かれた、快適なイタリアのビーチ
イタリアのビーチのいいところはたくさんありますが、まずは人が多すぎないところ。海に囲まれたイタリア、至るところにビーチがあるので人が分散、どこでも快適に過ごせます。また、プライベートとパブリックのスペースに分かれています。
プライベートスペースは「Bagno(バーニョ)」というイタリア版・海の家が経営するフルサービスで、パラソルと寝椅子2つを1日単位で貸してくれて、レストランも併設、飲み物やジェラート、ちょっとした軽食を買えるバールもあります。
パラソルと寝椅子は、庶民的なところでは1日20ユーロから、高級バーニョでは80〜100ユーロほど。高級なところでは、3メートル四方ほどの屋根付き天蓋に寝椅子、椅子が2つずつ、テーブルや金庫(!)まで完備されている至れり尽くせりなところもあります。
1〜3カ月契約をして好きなときにビーチで寛ぎ、海辺の生活を満喫する家族が多いのです。片や、パブリックスペースはパラソルや椅子は持参で、大多数はビーチタオルだけ持って寝そべって過ごします。パブリックスペースは圧倒的に少ないので、ビーチの景観を保てるのでしょう。
店ごとに色の揃ったパラソルが整然と並ぶ、美しい夏のビーチ
■とにかく、日焼け! 海辺での過ごし方
プライベートビーチでは、波打ち際から最も近い最前列が一番人気で価格も高く、奥の列に行くに従って空きも出てきます。綺麗に列をなして並べられ、番号で振り分けされているので、基本的に割り当てられた場所から動かずに過ごします。
太陽の当たる位置に合わせて少しずつ寝椅子を移動するのはアリで、できるだけたっぷり日差しを浴びるよう、日時計のようにくるくる回るのがイタリア人、パラソルの陰からはみ出さないよう移動するのがアジア人。
海辺での過ごし方は、とにかく日焼け、日焼け。裏も表も念入りに、ムラなく焼けるようトップレスも当たり前。トップレスで焼いている最中に知り合いに会っても、慌てることなくそのまま「チャオ」などと平気で話しています。あまりに平然としているので、逆にいやらしさが微塵もありません。
イタリア女性の夏の装いは、肌の露出が激しく、胸元に至っては半分見せているようなもの。それでも淫猥な感じがしないのは、焼けた肌と堂々たる態度なのかもしれません。
■澄み渡った美しい海岸
この日、久しぶりの海で1時間くらい沖まで泳いでいたら、心配顔で青ざめたふたりがもう少しで捜索願いを出そうと思っていた、と腰まで海に浸かり、消えた日本人を探し続けていたのでした。
そう、イタリア人は海でもメインは日焼け、少し暑くなるとチャプっと水に浸かり、また浜辺に横たわって日焼け。海で本気で泳ぐなんてあり得ないのでした。
イタリアのビーチは空も海も澄み渡って綺麗、小魚が泳いでいるのがクリアに見えるくらいです。波もほとんどなく穏やかな海、遠浅なところが多いので、子供連れも安心です。
■新鮮なシーフードをワインと一緒に楽しむ
ビーチはフルサービスで快適、そして忘れてはならないのが、レストランがどこも最高に美味しいこと! 新鮮なシーフード三昧、よく冷えたワインと一緒に海辺でつまむフリットは最高です。
そして、価格も普通であること、よほど高級なエリアのレストランでない限り、至って気軽に美味しくシーフード三昧できるのが良いところです。
まずは海辺の新鮮な魚のフリットを、よく冷えた地元の白ワインで
この日は、友人夫妻の地元のビーチで懇意にしているレストランでのランチ。前菜をつまみながらよく冷えた白ワインで乾杯、シーフードパスタに、今日のオススメの大きなロンボ(日本でいうヒラメ)をグリルにしていただきました。
翌日は違うビーチに。こちらでは、オリーブにひき肉を詰めてフライにしたアンコーナの名物、「Ascolane(アスコラーネ)」をつまみ、同じく名物のムール貝と小粒で美味しいボンゴレ(アサリ)で白ワインを。海の幸のキタッラ(ギターの弦が由来のパスタの名前)とボンゴレパスタでお腹いっぱい。海辺で食べるシーフードは格別です。
シーフード三昧な海辺のランチ
■ビーチには物売りも。木の工芸品を購入
物売りがやってきてはいろいろなものを見せてくれるのも面白いところ。寝椅子に敷く大判ビーチタオルや、砂浜に直に敷く大判の綿の敷物、水着の上に着るのにちょうどいいコットンワンピース、サングラス、などなど。
アフリカ系の外国人がそれぞれ大量の売り物を器用に頭に乗せて、歩いています。見せてほしいものがあれば、目配せすればすぐに気づいて、寝椅子の傍らで店開き。大きな布なども次々に広げて見せてくれます。
大判の敷物を広げて見せてくれる物売り
今回は、初めて訪れたビーチで、面白い木製品の物売りを発見。畳むと鍋敷き、開くとカゴになる、リンゴやパイナップル、魚の形の木の工芸品を、お隣のイタリア人たちが見せてもらっているのをチラ見。私も見せてもらい、魚を購入、友人はパイナップルを買っていました。
魚のかご、組み立てるとこんな感じ
■のんびりしたイタリアの夏を思い出しながら
朝から晩までビーチ三昧のイタリアの夏、今回は週末利用の1泊2日でしたが、イタリア人はバカンスの時期ずっと滞在しています。なんとも優雅でのんびりしたライフスタイル、人間らしい生活です。
後ろ髪を引かれながらミラノへ、今、東京で魚のかごとビーチで拾って来た小石を見て、楽しいバカンスを思い出しながらこれを書いています。