今こそ「自分はなにがしたいのか」を考える必要がある――シェアガールが提案する新しいライフスタイル
内閣官房シェアリングエコノミー伝道師「シェアガール」の肩書で普及活動をする石山アンジュさん。複数の肩書を持ち「限りなくフリーランスに近い、社員」という新しい形のパラレルキャリアを実現されています。自分のビジョンを実現するために必要な視点の持ち方など、多様化する社会で活躍し続けるためのヒントを伺いました。
■今こそ、自分が”どんなことをしたいのか”を改めて考える
――現在、石山さんはどんな活動をされているのですか?
2社の企業の社員として働く傍ら、厚生労働省や総務省の委員やアドバイザー、また、個人事業主として副業、社会活動に務めています。限りなくフリーランスに近い社員のようなイメージで働いています。
――幅広く活動されているのですね。昨今の働き方の多様化についてどのように捉えていますか?
新卒で大企業に入社してから3年働いた後、ベンチャーの世界に飛び込んだのが2年前ほど前。
それからさまざまな機会やチャンスをいただき、今のような働き方になりました。戦略的に選択をしてきましたが、一方で、世の中的に働き方の選択肢が増えていることや、多様な働き方に対して寛容になっていることが大きな追い風になっていると思います。
とくにシェアリングエコノミーの普及が、働き方の選択肢を増やしているような気がします。
週5日フル社員で企業に勤める働き方だけでなく、
・フリマアプリで要らなくなったモノを販売する。
・経験を活かして他企業の事業をコンサルティングする。
などですね。他にも、クローゼットに眠っているブランドバックを使わない期間だけ貸し出して、稼ぐことができるシェアサービスもあるんです。
そういう意味では、生活の中や趣味の領域で収入を得ることが以前より容易になっていると思います。
「生活をするための稼ぎ方」には多くの選択肢がある今だからこそ、自分が何をしたいのか、どんなことで自己実現をしたいのか、という問いに改めて対峙するタイミングではないでしょうか。
■東日本大震災をきっかけに見つめ直した生き方
――自己実現を考えるとき、”とっかかり”として大切なことはなんだと思いますか?
まず人が働き方を選ぶ源泉には大きくふたつあると思うんです。
ひとつ目は“ミッションドリブン型”。つまり社会への使命感のようなものを感じて自分の役割を決める人。
ふたつ目は趣味や大好きなことを突き詰めてその延長を仕事にする人。
私は前者でした。
子供のころ、両親の離婚を経験したことも考えるきっかけになりました。親の子として生まれたというより、自分が生まれた意味は他にもあるのではないかと考えたんです。社会において、自分が変えられる人になりたいと思ったのもこのころです。
――子供らしくはない、大人っぽい考え方ですね。
ただ、いろいろ考えてはいましたが、地に足がついていたともいえず……。大学時代には「平和研究」を専門に、NHKや日本テレビなどでアルバイトをしながら、漠然とジャーナリストになるんだと考えていました。
ですが、就職活動中に東日本大震災が起きたのをきっかけに、生き方を見つめ直しました。明日どんなことが起きてもゼロから何かを生み出せたり、それをお金に変えられるスキルを身につけようと思いましたね。
――そこからどのようにして、自分のやりたいことを具体化していったのでしょうか?
自分の取り組んでいる目の前の仕事を通じて、サービスを受け取るカスタマー、クライアントに「どんな人を、どれくらいの人数、どんな状態にしたいのか」を具体的にイメージできるまで考えるようにしています。
言い換えれば、社会や人々の生活におけるどんな変化を自分の目で見られたら、私は幸せと感じられるのかのポイントを探すようなイメージです。
また自分の仕事を通じて、見てみたい変化に対して、自分がどのような関わり方ができるのか、もしくはどんな役割に向いているのか、を考え抜くことが大切だと思います。
■理解してもらいたいときこそ「相手のルール」に従う
――そういった自分の価値を知るために、コミュニケーションで意識していることはありますか?
市場の中で自分のことを”商品”と捉えて、専門分野から大きく外れないように気をつけています。
専門外のことをもっともらしく語ったり、世の中のことを語ったりすると、専門とは関係ない部分で評価されてしまうからです。
それから、独学ですがロジカルシンキングやフレームワークの思考術を実践しています。
――さまざまな世代や立場の方と仕事をする中で、気をつけていることはなんでしょうか?
大切にしていることは、まずは相手の言葉のルールに従うことです。
こちらの伝えようとしている内容は相手側の用語ではなんと言うのだろうか、とか。そもそも言語やライフスタイルに乖離がある者同士の場合、これを意識しておくだけでコミュニケーションは格段に取りやすくなります。
理解してもらいたいなら熱量と自分の言葉が一番! と思いがちですが、新しいことを提案するときこそ相手の言語を使うのは大切ですね。
■ビジョン実現に向けて多様な価値観に触れる
――活躍し続ける人材になるためにはどんなスキルが必要でしょうか?
非常に難しいですし、解は見つからないのですが、今は競争社会ではなく共存社会になりつつあると思います。お金や社会的地位ではなく、人からの信頼をどれだけ集められるかが、とても大切になるのではないでしょうか。
人から学び人から多くのチャンスをもらえる今だからこそ、共存社会の中でさまざまな軸や環境・バックグラウンドを持つ人と関わり続けて、いつでも多くのことを受け入れられるスポンジ力を持っていたいと思いますね。
いつか、世代やステータスなど関係なく、どんな人にも自分がやっていることを広げていける世の中にしたいです。
自分のビジョンを実現するためには、多様な人と関わり続けて、市場や自分の市場価値を認識することと、実現したいことを理解してもらうためにまずは自分が受け入れることが大切だと石山さんは言う。
柔らかな物腰で自ら社会を変えたいと語る石山さん、その目の奥に光る確固たる信念のようなものに人を惹きつける魅力があることは間違いないだろう。
取材協力/シェアリングエコノミー伝道師・シェアガール 石山アンジュさん
Text/Mediajo(取材:ZENKUMI/ライター:NAHOMI)
ミーハーと私(ME)彼女(SHE・HER)を掛け合わせた造語で
ミーハーな女子ゴコロ=“女性の情報源”という意味を込めています