「信頼残高」貯めていますか?将来のキャリアに不安を抱くすべての人へ【大人のキャリア】
働く女性が未来のライフステージについて考えるとき、結婚や出産のタイミングなどキャリア以外のことにも想いを巡らせることがあります。そんなライフステージへの不安を持つ女性をマネジメントする立場の人も多いはず。トレンダーズ株式会社取締役副社長COOの黒川涼子さんに、多様化するキャリアとマネジメントについてお伺いしました。
■「働き方の多様化」が進む環境を理解する
――今の世の中には、さまざまな働き方の選択肢が生まれ、「多様化」という言葉がよく聞かれるようになりました。「働き方の多様化」についてどのように捉えていますか?
多様化には「雇用形態の多様化」と「就業形態の多様化」の大きく2種類あると考えます。
雇用形態でいえば、正社員のようにひとつの企業に属するのではなく、フリーランス、クラウドワーカーなど企業に属さない働き方が注目を集めています。
また、就業形態の多様化としては、リモートワークや時短、パラレルキャリアなど、ひとつの企業に属しながらも、さまざまな働き方を提示する企業が増えています。
労働人口が減少していく日本では、企業は働く人の子育て・介護といったライフステージや独立・起業などのキャリアプランに対応した人材活用が、ますます重要になっていくでしょう。
――たしかに業務委託、インターンなどを積極的に活用する企業、増えていますよね。
私もそういった方と一緒にお仕事をすることは多いですね。
中でも私がとくに推奨しているのは、「卒業生」との取り組みです。
――卒業生とは?
トレンダーズでは退職した人を「卒業生」と呼んでいるのですが、卒業生の中には独立して自分の得意分野を追求し続けている人がたくさんいます。
ひと昔前であれば、退職者とまた一緒に働くなんて考えられないと思われていましたが、今はそういう時代ではありません。
お互いの性格をよく理解していて信頼関係があるので、関係構築のコストがかからないし、会社や事業を知り尽くしているので、業務でのキャッチアップがスムーズなのが良いところですね。すでに10名以上の卒業生と一緒に仕事をしましたが、今後も積極的にこういった取り組みをしていきたいと思います。
■マネジメントと信頼関係はセット
――正社員でも、リモートワークや時短など働き方の幅が広がりました。いろいろな働き方をする社員のマネジメントって大変そうです。
多様な働き方の人たちをマネジメントするには、評価のあり方と目標設定を必ずセットで考えることが大切です。
企業の制度そのものに関わる問題なので、ハードルが高い側面もありますが、トレンダーズでは1年前から「時短」や「契約社員」といった括りを撤廃し、成果と次に担うミッションで査定を行う新しい人事制度を取り入れています。今後ますます働き方の多様化が加速することを視野に入れ、さらに制度を進化させていきたいと考えています。
――マネジメントで気をつけていることはありますか?
マネジメントに限ったことではありませんが、「信頼関係」はとても大切にしています。信頼関係があるからこそ、部下にある程度の判断を任せて、プロセスより成果にフォーカスしたマネジメントができます。またポジショントークではなく、互いに本音を言い合えるのでコミュニケーションに無駄がありません。
――部下との信頼関係を築くためには?
常に心がけているのは、どんな小さなことでも聞き逃さずに誠実に丁寧に向き合うことですね。
マネジメントする人数が少ないときは、部下との密なコミュニケーションを取りやすいのですが、人数が増えると当然ひとりあたりと接する時間が減るので、小さな接点で信頼関係を築く必要があります。
少ない機会を逃さないためにはとにかく話をよく聞くこと、言語化された課題や要望だけでなく、言語化できない思いをくみ取る努力をすること。そして速やかに対応すること。スピードは最もわかりやすく伝わりやすい誠意のひとつだと思います。
そして最終的には、相手のことを本人以上に信じること。本人すら気づいていないような能力や可能性を見出して、信じて任せることが上司の大切な役割だと思っています。
■キャリアプランに必要な信頼残高
――未来のキャリアに不安を抱く女性もたくさんいますよね。
結婚するかも、出産するかも、パートナーの転勤があるかも……と、未来に対して漠然と不安を感じ、次のキャリアステップに全力で踏み込めない女性は多いと思います。
もちろん環境にもよりますが、目の前のことに一生懸命取り組んで信頼関係を積み重ねることで、結果的にライフステージに左右されないキャリアプランを描けるようになるのではないでしょうか。
――「信頼残高」を積み上げていくことで、キャリアプランの選択肢が広がるということでしょうか。
そうですね。
たとえば、トレンダーズにもご主人の転勤で長野に引っ越し、退職せざるを得ないメンバーがいたのですが、結局リモートワークで勤務を続けてもらうことになりました。その後、ご主人が東京に帰ってくることになったため、再度オフィス勤務として活躍しています。
彼女のように柔軟な働き方が実現できるのは、まさに積み上げた信頼残高がベースにあったからこそだと思います。
「仕事での信頼残高」は努力次第で確実に手に入る、未来への貯金のようなもの。未来に不安を感じやすい女性はなおさら、早いうちからこの信頼残高を積み上げることが大切なのではないでしょうか。
マネジメントする側もされる側も、お互いに「仕事での信頼残高」を築き上げることが、働き方の多様化を実現するための大きな一歩になるだろう。
取材協力/トレンダーズ株式会社
Text/Mediajo(取材:ZENKUMI/ライター:NAHOMI)
ミーハーと私(ME)彼女(SHE・HER)を掛け合わせた造語で
ミーハーな女子ゴコロ=“女性の情報源”という意味を込めています