おしゃれに悩んだら素の自分を活かす - 『おしゃれの幸福論』から得たヒント
『おしゃれの幸福論』(著:光野桃)を取り上げます。ワンツーコーデが流行っている今、人とはかぶらないけれど、浮くわけでもない、自分らしいワンツーコーデがしたい。そう思った桜井真砂美さんが手に取ったのは『おしゃれの幸福論』。本書から得たヒントを紹介してくれました。
6月も半ばを過ぎました。そういえば、去年の今頃はどんな恰好をしていたかな、と、クローゼットのなかを覗いてみたものの、あれ、去年まで着ていたものが今年はなんだかしっくりこない。
わずか1年で、確実に自分のなにかが変わってしまった事実に軽く落ち込みつつ、いま巷ではどんなおしゃれが流行っているのだろうと街に出てみると、モノトーンのトップスに無地の長めのボトムスという組み合わせが目につきます。
■かぶらず、浮かず、自分らしく
そんなふうにトップスとボトムスをコーディネートするファッションに、「ワンツーコーデ」という素敵な名前がついているといまさらながら知りました。
これなら取り入れられそう。というか、トップスとボトムスをシンプルに合わせるって、それわたしの定番ファッションじゃないの!
知らず知らずのうちに自分が流行に乗っていた(?)ことに気づき、落ちていた気持ちが多少上向きになったところで、はたと考えました。
流行なればこそ、かぶらず浮かず自分だけの「ワンツーコーデ」をおしゃれに着こなせないものかしら、と。
■『おしゃれの幸福論』- 運命の本との出会いは突然に
そんな気持ちで本屋さんをぶらついていたら、なんだか良さそうな本が目に留まりました。その名も『おしゃれの幸福論』(中経出版)。
しかも、本の帯には、赤い文字で「今までの服が似合わなくなったあなたへ」と書かれています。あらま。出会うときには出会うものなんです。
手に取りページをめくると、「交差点の中心で、『ピンクが着たい!』と叫ぶ」、「一瞬で美しくなった女神たち」、「澄み切りたい! ブルーを呼ぶ心」など、なんとも魅力的な小見出しが躍っていました。
これは当たり、じゃない……? そして、予感は的中しました。
■揺れる30代、悩める40代を経て見えてくること
著者の光野桃さんは、本のなかで、女性誌編集者という経歴を通して培った確かな審美眼をもとに、自分が思う大人のファッション感について語っています。
中身は、大人世代が抱える体型的、精神的な悩み解決法から、自分らしく生きるための極意、おしゃれな靴選びから、イタくならない大人メイクまで、「そうそう、それが知りたかった!」と思わず声を出したくなるトピックスばかり。
揺れる30代、悩める40代を実際に通り過ぎてきた著者だけあって、その言葉はなかなかの浸透力で心にじわじわと染みてきました。
■触発、突破、そして、解放へ!
内容は大きく3つの章に分かれています。第1章「触発」、第2章「突破」、そして第3章が「解放」。
並べて書くとかなり威勢のいい章題ですが、つまり平たく言うと、そろそろこうありたい自分を目指して突き進むのはやめて、生まれたときからそこにある愛しい素の自分に立ち戻ろう、といったところでしょうか。
とにかく、自分らしい「ワンツーコーデ」を模索中の身には、ぴったりのテーマでありました。
20代をとっくに過ぎてしまった女性たちの心には、さまざまな憂鬱の火種がくすぶっています。光野さんは、そういう火種をさらっと拾い上げて、それにうまく手を入れて、希望の種火に変えてくれるのですが、その手当ての仕方がなんともいい塩梅で、押しつけがましさはまるでなし。
「おしゃれ筋力」、「2割のやせ我慢」、「月のワードローブ」と、目を惹くワードが次から次へと登場し、興味をそそられます。
■自分のアップデートを楽しむ
特に感心したのは、「メイク更新」という発想。歳を重ねると、髪も肌も加速度的に移り変わるのを実感します。
そのスピードを受け入れるのは悲しいが、一番きれいだったときのメイクで止まったままおばさんになっていくのはもっと悲しい。そう著者は書いています。
だからこそ必要なのが、メイク更新のタイミングを見極めることなのだとか。ちなみに、光野さん自身は3年に一度、髪型とメイクアップを更新すると決めているそうです。なるほど、なるほど。
■曇りのち夏へ
「いいタイミングで変化を受け入れ、気持ちよく変わっていきたいものです」という著者の言葉に深くうなずきながら読み進めていくうち、次第に清々しい気持ちになってきます。まさに、じめじめとした天気が続くこの時期に読むにはもってこいの一冊。
目下、自分の「ワンツーコーデ」を究めるために、ビザンチン風の大ぶりのピアスとベージュのバレエシューズを買ってみようかと考え中。さて、それはなぜでしょうか? その答えは本のなかに――。
『おしゃれの幸福論』書籍情報
著者 光野桃さんプロフィール
作家・エッセイスト。東京生まれ。小池一子氏に師事した後、女性誌編集者を経て、イタリア・ミラノに在住。文筆活動を始める。1994年『おしゃれの視線』でデビュー、ベストセラーに。以後ファッション、からだ、自然を通して女性が本来の自分を取り戻すための人生哲学を描く。2002年より家族とともに中東のバーレーンに移住し、休筆。帰国後の2006年、『おしゃれのベーシック』を上梓し、活動を再開した。主な著書に『実りの庭』『感じるからだ』『あなたは欠けた月ではない』『森へ行く日』など。