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映画『20センチュリー・ウーマン』感想。1979年、僕たちの特別な夏が始まる!

映画『人生はビギナーズ』で大絶賛を浴びたマイク・ミルズ監督の最新作『20センチュリー・ウーマン』が6月3日より公開中です!サンタバーバラを舞台に3人の女性とのさまざまな経験を経て大人へと成長していく少年のひと夏の物語!【シネマの時間】第9回はこの映画の魅力と感想をアートディレクターの諸戸佑美さんに語っていただきました。

映画『20センチュリー・ウーマン』感想。1979年、僕たちの特別な夏が始まる!

75歳でゲイであることをカミングアウトした自身の父親と、自らの関係を描いた映画『人生はビギナーズ』(2010)で世界中で大絶賛されたMike Mills (マイク・ミルズ)監督。

今度は、自立心旺盛で自分の生き方に大きな影響を与えた"母親"をテーマに新作映画『20センチュリー・ウーマン』を制作!

長編4作目にして、見事2017年のアカデミー賞脚本賞に初ノミネートもされ話題となっています。

もともとマイク・ミルズ監督は、グラフィックデザインで注目を浴びたアートディレクターで、有名ミュージッシャンのアルバムジャケットやミュージックビデオを手掛けており、90年代半ばには、Kim Gordon (キム・ゴードン)、 Sofia Coppola (ソフィア・コッポラ) らと並んでニューヨークのアート&カルチャーシーンを牽引した人物として知られています。

例えば、ソニック・ユース、ピースティ・ボーイズなどの有名アーティストのアルバムカバーデザインやファッション関係では、長年に渡りアパレルブランドX-girl(エックスガール)のグラフィックデザインを担当。

また、日本でも、2000年代にデザインエクスチェンジから作品集や映像集を発売、マガジンハウスのカルチャー誌『Relax』の表紙絵などを制作し馴染み深いです。

映像作家としては、オノ・ヨーコ、エール、パルブなどのミュージックビデオ、アディダス、GAP、ナイキ、フォルクス・ワーゲンなどの話題のCM映像制作にも関わっており、アート作家としてもロサンゼルス現代美術館や世界中の美術館で展覧会に参加。

また、90年代にはチボ・マットと共にバンド「BUTTERO8」を結成。グランド・ロイヤルからアルバムまでリリースしライブ活動まで行なう幅広い活躍ぶり。

プライベートでは、パフォーマンスアーティスト・映像作家・小説家でもあるミランダ・ジュライと長年のパートナーであり、彼女の初小説集『いちばんここに似合う人』の表紙デザインも手掛け、2009年に結婚、2012年には長男も誕生。

「息子が生まれ、5歳に成長した今だからこそ、彼に自分の母親のことを伝えたい」という思いもあり今回の映画制作へ至ったのだそう。

シネマの時間第9回は、そんな才能溢れるマイク・ミルズ監督の新作映画『20センチュリー・ウーマン』をご紹介します。

1979年、米カリフォルニア州サンタバーバラを舞台に15才の思春期の少年と愛情深く自由な魂を持つシングルマザーの母親、ふたりを助ける個性豊かな女性たちとの特別なひと夏の物語。

夏が待ち遠しいこの季節、ぜひ映画館でお楽しみください!

■映画『20センチュリー・ウーマン』あらすじ - 二度と忘れることのない、特別なあの夏

1979年夏、南カリフォルニア州の美しい街サンタバーバラ。

先進的な考えを持つ自立心旺盛な55歳のシングルマザー兼ワーキングマザーのドロシアは、メーカーの製図室で働きながら、築70年以上の古い大きな屋敷で下宿屋も営み、母ひとり子ひとりの生活をしています。

ひとり息子のジェイミーは15歳。
誰に頼ることなく確固たる強い意志で息子を育ててきたドロシアでしたが、最近では思春期を迎え反抗期まっただ中の彼の気持ちがさっぱりわからなくなっていました。

戦後の大恐慌時代に生まれ、少女時代にはアメリア・イアハートのような空軍のパイロットになることを夢見ていた、ジャズとハンフリー・ボガートを愛する彼女でしたが、息子が夢中になっているパンクロックさえも理解できず、お互い慈しみ合いながらも素直になかなか通じ合えないでいたのです。

そんなある日ドロシアは、下宿人の24歳のパンクな写真家アビーと、近所に住むジェイミーの幼馴染みで友達以上恋人未満の関係、17歳のジュリーに「彼を助けてやって。複雑な時代を生きるのは難しい。私ひとりの支えじゃとても足りないわ」とついに手助けをお願いします。

ジェイミーが心を許している彼女たちなら、彼のことを理解することができ、心の支えになってくれると相談したのでした。

15歳の少年ジェイミーと、彼女たちの忘れられない特別な夏の日。

思春期のかけがえのない経験は、その後の人生に大きく影響を与えるに違いありません。

ミルズ監督ならではの美しい映像と卓逸したセンスで、パンクロックやニューウェイブの音楽カルチャー、カーター政権やウーマンリブといった時代背景も、エモーショナルに描き出しているのが見どころです。

■少年の成長に影響を与える愛すべき彼女たち

本作は、ウーマン・リブ世代のフェミニズムを実行する力強い母を持ち、クリエイティブな母や姉に影響されて育ったマイク・ミルズ監督自身のパーソナルな経験が色濃く投影されており、女性に対するリアリティーを持った優しいまなざしを感じます。

監督は、母親をモチーフに描くにあたって彼女が好きだったというハンフリー・ボガートが出ている作品もたくさん観たそうですが、彼女自身がハンフリー・ボガートのようだったとか。

ボガードの主演映画『カサブランカ』(1942)より名曲「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」も効果的に劇中で流れ印象的です。

55歳の母ドロシアを演じたのは、『キッズ・オールライト』(2010)、『アメリカン・ビューティー』(1999)ほか4度のアカデミー賞ノミネートを誇る名女優、アネット・ベニング。自立心旺盛なシングルマザー兼ワーキングウーマンである母親の息子への無条件の愛と普遍的な子育ての悩みを繊細にユーモアを交えて演じ、ゴールデングローブ賞主演女優賞に見事ノミネート。

24歳のワイルドでパンクな写真家アビー役には、『フランシス・ハ』(2012)『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』(2015)のグレタ・ガーウィグが抜擢され、性に興味を持ち始めた思春期の少年に女性の扱いや人生を語り新しい世界にいざないます。

また、挑発的なティーンエイジャーの幼なじみジュリーには、人気女優エル・ファニングが瑞々しく演じ、ジェイミーを小悪魔的に翻弄して目が離せません。

少年ジェイミー役のルーカス・ジェイド・ズマンの子どものようで大人な顔を見せる危うい魅力もさることながら、実力派女優たちの競演によって少年を取り巻く3世代の女性たちの生き方や台詞もそれぞれに心に響き魅力的です。

あなたにとって忘れられない夏の思い出はありますか?
観賞後、そんなことを語りたくなる映画です。

■映画『20センチュリー・ウーマン』作品紹介

6月3日(土)より丸の内ピカデリー、渋谷シネパレスほか全国ロードショー
公式ホームページ http://www.20cw.net
© 2016 MODERN PEOPLE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

原題:20TH CENTURY WOMEN
製作年:2016年
製作国:アメリカ
映倫区分:RG12
配給:ロングライド
上映時間:119分
監督脚本:マイク・ミルズ
製作総指揮:チェルシー・バーナード
製作:ミーガン・エリソン、アン・ケアリー、ユーリー・ヘンリー
撮影:ショーン・ポーター
美術:クリス・ジョーンズ
衣装:ジェニファー・ジョンソン
編集:レスリー・ジョーンズ
音楽:ロジャー・ネイル
音楽監修:ハワード・バー

■映画『20TH CENTURY WOMEN』キャスト

アネット・ベニング=ドロシア
エル・ファニング=ジュリー
グレタ・ガーウィグ=アピー
ルーカス・ジェイド・ズマン=ジェイミー
ビリー・クラタップ=ウィリアム

アートディレクション・編集・絵・文=諸戸佑美

諸戸 佑美

本や広告のアートディレクション/デザイン/編集/取材執筆/イラストレーションなど多方面に活躍。

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