男は女を口説くために、また女は男に関する情報交換を行うために、どちらも言語的能力を進化させた
浮気が人を進化させてきた? 「浮気人類進化論」から見る男女の歴史
世間を賑わす浮気や不倫。ダメだとわかりつつ手を出してしまう人が後を絶たないことを見ると、人間には浮気をしてしまう、何らかのルーツがあるのかもしれない。今回は浮気こそが人類を進化させたという「浮気人類進化論」についてご紹介します。
■なぜ人間は浮気をしてしまうのか
有名映画監督の不倫や、ミュージシャンのW不倫、芸能人の浮気など、日々浮気や不倫のニュースが後を絶たない。また現在人気を呼んでいるTBS火曜ドラマ『あなたのことはそれほど』もW不倫をテーマにしている。
なぜ人間はダメだとわかりつつも、浮気や不倫に引き寄せられてしまうのか。もしかしたら人間の歴史に浮気や不倫をしてしまう秘密があるのかもしれない。
■人間の知能は「狩猟」「戦争」「浮気」で進化した?
人間の脳みそはほかの猿人類に比べ、とても大きい。これは進化の過程で脳みそを発達させる必要があったからだという。
「狩猟」戦略を立てたり、道具を作ったり
その理由について、イギリスの動物学者であるデズモンド・モリスは著書『裸のサル』の中で、人間の高い知能は狩猟生活で必要不可欠だったため、発達したと述べている。これは高い知能を持つものほど、優れた狩猟道具を作ることができ、狩猟においても戦略を立てて実践することができたから、と推察されている。
「戦争」集団を指揮し、優れた兵器をつくる
またイギリスの生物学者であるロバート・ダーウィンをはじめ、多くの人が「戦争」も人間の知能が発達した要因であったと指摘している。これも狩猟と同様、より高い知能を持つものほど優れた兵器を作ることができ、強力な集団を指揮できたからという。
「浮気」が人類の知能を進化させた⁉
そして今回人間の知能が発達した要因として注目したいのが、動物行動学研究家の竹内久美子氏が提唱する「浮気人類進化論」だ。
彼女の著書『浮気人類進化論―きびしい社会といいかげんな社会』によると、戦争や狩猟だけが知能を発達させたのであれば、女性の知能は発達しなかったはずであり、他に理由があるはずだというのである。
■生存戦略の中で浮気をしてきた人間
そこで竹内氏は下記のように提唱する。
狩猟時代、男たちは狩りに出かけ、女たちは子供の面倒を見ながら家のことをする。男たちは狩りに出かける間にさらに多くの子孫を残すために、浮気を試みる。男は外で見知らぬ女を口説くために、うまい言葉づかいが必要となるため、言語能力を発達させたのだという。
一方、女性は夫に浮気をさせないよう監視する必要がある。そこで女たちは近所の妻たちと井戸端会議を行い、お互いに情報を交換し、夫の浮気を防ごうとした。
また、女性たちは夫の浮気を防ぐだけでなく、悪い男につかまって身を滅ぼさないために、注意すべき男性についての情報交換も行う。
このように女性同士の情報交換に言語能力が必要不可欠だったために、女性は言語能力を発達させたという。今でも噂話が好きな女性が多いのも、この理由からなのではないかと竹内氏は言う。
■浮気や不倫は人間的な行為?
周りの人に迷惑をかけ、傷つける浮気や不倫は褒められた行為ではないだろう。
けれども、人間が男女の駆け引きや、生存戦略のひとつとして浮気をし、それにより人間は知能を高め、他の生物と一線を画す言語能力を手に入れたというのは一理ある。
ドラマ『あなたのことはそれほど』第9話でも、W不倫をしている主人公について友人の女性が「人間してるって感じがする」と発言している。
たしかに、自分の感情や欲望に忠実に行動した結果なされる浮気や不倫は、善悪は別として、人間的な行為であるのかもしれない。
【出典元】
竹内久美子著(1998年)『浮気人類進化論―きびしい社会といいかげんな社会(文春文庫)』文藝春秋.