1. DRESS [ドレス]トップ
  2. ライフスタイル
  3. 「子どもを連れていて、すみません」を言わせる国から飛び出した話

「子どもを連れていて、すみません」を言わせる国から飛び出した話

Share

幼い子どもを旅へ連れていく――これを親のエゴと吐き捨てる人もいるかもしれない。けれども、大泉さんは日本での子育てに悩んでいる人こそ、台湾へ行ってほしい、と語る。電車でのベビーカー、飲食店における乳児連れへの対応など、厳しい圧力や視線が向けられる日本を飛び出して、台湾へと足を運んだ大泉さんが気づいたこととは――。

「子どもを連れていて、すみません」を言わせる国から飛び出した話

東京は「子育てがしやすい街」かというと、微妙なところだ。

タクシーで1メーターの距離に、24時間救急で対応してくれる病院があり、育児が忙しくて食事の支度まで手が回らないとき、出前の選択肢は多く和洋中どころかインドカレーや韓国料理だってチョイスできる。

子連れ同士でお茶やランチをしようと思った場合には、ベビーカーを歓迎してくれる洒落たカフェやレストランが存在するし、そういう店は“ママ専用”とでもいうくらい、親子連れで賑わっている。

けれども、電車はいつも混んでいて、ベビーカーで乗り込むと、「邪魔だ」という視線を感じることが度々ある。もちろん席はめったに譲ってもらえないし、普通のレストランに乳児を連れて入るのは、少し勇気がいる。

「ママと赤ちゃん」のために用意された場所があるのはありがたいけれど、イコール、そこ以外は「ママと赤ちゃん」の場所ではないという空気感がある。だから、サラリーマンやOLさんたちに混じって通勤時間帯の電車に乗るときや、カウンターしかないラーメン屋に入るとき、気づけば「すみません」と謝りの言葉を口にしている。

■自己肯定感を削りとる「すみません」の連続

実際に泣き出して迷惑をかけてしまう可能性もあるから、最初から「すみません」と断りを入れているのだし、それは人を気遣う意味では正しい行為だとも思う。

けれども、日に何度も「すみません、すみません」と頭を下げているうちに、自己肯定感がすっかり削ぎ落とされてしまっていると気づいたのは、息子とともに、台湾を旅したことがきっかけだった。

■生後4カ月の息子を連れて、台湾の旅へ

先月、ようやく首が座ったばかり、生後4カ月の息子を連れて、台湾へと行ってきた。

ちょっと早すぎるかとも思ったけれど、乳児を連れて海外旅行に行ったことのある経験者から「むしろ、離乳食が始まる前のほうが楽」「歩き出す前なら楽勝」とアドバイスをもらって、決心を固めた。

旅行に行く数日前には「まだ打ってない予防接種もあるし、日本にはいない菌だっているかも……」とブルーにもなったけれど、台湾にも赤ちゃんはいるのだし、日本にいたって病気になるときはなる。自分が「行きたい」と夫を説得した手前、直前で怖気づいたからといってキャンセルできるわけもなく、出発の日を迎えたのだった。

飛行機はLCC(ローコストキャリア)のピーチ。もちろんANAやJALのほうが安心だとは思うのだが、値段が断然に安かったのと、4時間足らずの飛行時間ならば、LCCでも大丈夫だろうと踏んで、チケットを取った。

席は乗客になるべく迷惑を掛けなくて済むように、最後尾の3列シートの廊下側と真ん中を事前にキープした。当日、着席するとほぼ満席だったが、運よくわたしたちの隣の、窓際の席は誰も座ることがなかったのは、もしかして、航空会社が気を利かせてくれたのかもしれない。

■「社会に受け入れられている」――そう実感できる場所がある

こうして好調な滑り出しで旅行はスタートした。台湾に着いてもまったく問題ない……それどころか、どこに行っても快適すぎて驚いた。

例えば台湾料理の老舗の「欣葉」や世界の10大レストランにも選ばれたという「鼎泰豐」に乳児連れでいっても、一切嫌な顔をされることはない。2店舗ともワイワイとした雰囲気の店だから、ということもある。けれども事前に調べた情報によれば、もっと大人の雰囲気が漂う都会的な店であっても、赤ちゃん連れを理由に入店を断られることはないそうだ。

滞在中、カウンターの目の前で焼いてくれる鉄板焼きの店にも行ったが、ベビーカーのまま入店させてくれた。おおよそ日本では絶対にありえない。心配していたオムツ替えも、各駅内にものすごく綺麗な授乳室が用意されていたので、困ることはほとんどなかった。

台湾といえば足つぼマッサージが有名だ。もしも日本で、乳児連れでマッサージを受けようと思ったら、託児付きのところを探すしかない。けれども、台湾では突然ふらりと入っても歓迎され、施術中は手の空いている従業員があやしてくれる。

一番驚いたのは電車で、ベビーカーで乗り込むと、一番近くに座っている人が必ず立って席を譲ってくれる。

3日間で10回以上は電車に乗ったのだが、立たなかった人は杖をついた老人だけで、そのときは、老人の隣の若者が代わりに席を空けてくれた。どうやら台北では「ベビーカーが目の前に着たら席を立つ」ということがルールと化しているようなのだが、「目の前に立たれたから仕方なく」といった嫌々の雰囲気は一切ない。だからこちらのハートも擦り切れることがない。

■「すみません」の代わりに「ありがとう」と言える

子連れに優しい国という情報は前もって知っていたものの、やはりいざそこに身を置くと、ひしひしと実感できた。

月並みな言葉だけれども、そのことに「癒される」という思いを抱くと同時に、東京で息子と外に連れていくたび、どれだけ肩身の狭い思いをしてきたか、と考えさせられた。

東京では出かける度に「すみません」と何度も口にする。それは、便宜上、口にしているはずだった。けれども、言葉というものは不思議で、幾度も口に出していると、本当にすまないことをしている気分になってくる。

「(小さい赤ちゃんがいるのに、電車に乗って)すみません」

「(乳児を連れて、飲食店に入って)すみません」

「(ベビーカーで場所をとって)すみません」

繰り返し言ううちに、わたしの自尊心はいつの間にか、ゴリゴリと削られていたのだった。

台湾では「すみません」をいうことはなかった。代わりに何度も「ありがとう」を意味する「謝謝」と口にした。すると、言われたほうはにっこりと笑って、「当然のことよ」と言わんばかりに首を横に振ってくれる。

そのたびに、わたしと息子が、当然のように社会に受け入れられていることが実感できて、どんどんと自己肯定感が修復されていくのがわかった。

■子どもを連れて街を歩くことは、委縮することじゃない

東京は「子育てがしにくい街」かというと、微妙なところだ。

駅のエレベーターには「ベビーカー優先」という注意書きがなされているし、スーパーでは買った商品をサッカー台まで運んでもらえる。

けれども、「優遇されること」にただ甘んじるのではなく、常に恐縮していないといけない雰囲気があることは否めない。「子連れ様」と呼ばれないために、常に気を遣い、「迷惑であることは重々承知です」というポーズを取ることを余儀なくされる。

そんな社会で暮らすうちに、すっかり摩耗してしまっていた、自己肯定感を取り戻せたことが、台湾へ行って、一番良かったことだと思う。だから、日々、委縮して過ごしている子持ちの女性こそ、思い切って海外旅行に行くことをおすすめしたいのです。

フリーランスで働いていたら、保育園へ子供を不正に預けていると投書があった

https://p-dress.jp/articles/4658

息子を運良く認可保育園に入所させることができたフリーランスの大泉りかさん。しかし、それから3カ月後、「大泉りかという人が、不正に保育園に子供を預けている」という内容の投書が区に届く。なぜこのようなことが起きてしまうのか――彼女自身が感じたこと、改めて大切にしたいことを綴っていただきました。

Share

大泉 りか

ライトノベルや官能を執筆するほか、セックスと女の生き方や、男性向けの「モテ」をレクチャーするコラムを多く手掛ける。新刊は『女子会で教わる人生を変える恋愛講座』(大和書房)。著書多数。趣味は映画、アルコール、海外旅行。愛犬と暮...

関連するキーワード

関連記事

Latest Article