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インドでかかる病気のこと。「ガンジス河でバタフライ」したらどうなるの?

今回はインドで気を付けるべき病気と、観光地としての魅力をご紹介。皆既日食によって、高まる興奮とその場の熱気におされ、ノリでガンジス河に飛び込んだ私。翌日待ち受けていた試練とは……? 実体験を元に病気の原因や対策を綴ります。

インドでかかる病気のこと。「ガンジス河でバタフライ」したらどうなるの?

■ガンジス河沿いで、美しいダイアモンドリングを見た

あと1分……。

30秒……10秒……。

5、4、3、2、1……。

太陽にかかっていた雲が、奇跡的になくなった。

「うわーっ!」と周囲から歓声があがる。

インド、バラナシのガンジス河沿い。世界各国から集まった何百人もの人々が固唾を飲んで見守っていた。

これから皆既日食が始まろうとしていた。

直接太陽を見ると目を傷めるため、写真のフィルム越しに太陽を見る。

太陽が月によって欠けていき、徐々に辺りが暗くなっていく。

何色と表現したらいいのだろう?

今までに見たこともないような、温かい色に世界が包まれていく。変化を察知した鳥たちがざわめき始め、犬が吠えた。

太陽と月が完全に重なるその瞬間、太陽は「ダイヤモンドリング」といわれる輝きを放った。

皆既日食が終わり、明るくなった後も、人々は興奮は冷めやらぬ様子だった。

そんな中、誰かが言った。

「ガンジス河に飛び込むぞ!」

「……えっ?」

ひとりが飛び込むと、それに続いてみんなが飛び込んでいく。

「ちょっと待って……」

悪名高いガンジス河の噂は何度も耳にしていたので、飛び込む予定は一切なかったのに、みんなが「お前はまだか」という目で私を見ている。

……えいっ! 行ってしまえ!

そんなわけで、私は生まれて初めてガンジス河に入った。そして翌日から、そのことを心から後悔することになるのだった。

■ガンジス河に入った翌日、謎の病に伏せる

ガンジス河に入った翌朝、私は恐ろしいだるさを感じて目覚めた。全身が鉛のように重い。熱を測ると38度5分だった。

体温計を見た瞬間、「しまった」と言葉が漏れた。

昨日ガンジス河に入った人の半数以上がなんらかの不調を訴えていた。

結局、その日の予定はすべてキャンセル。高熱、下痢、嘔吐に数日間苦しみ、最後のとどめにモノモライにかかり、インドの病院に行く羽目になった。

原因は、ガンジス河だろうか? 確定はできないが、「ガンジス河でバタフライ」に憧れている皆さま、お気をつけくださいませ。

■インド旅行前に知っておきたい「病気」

さて、今回はガンジス河に入る予定がなくとも、インド旅行前に知っておきたい「病気」についてご紹介。たくさんあるので一つひとつチェックしていきましょう!

下痢

インドではかなりの高確率で、下痢になると覚悟しておいたほうがいいでしょう。

他の記事でも書いていますが、下痢は基本的に「腹痛」「発熱」「血便」がない限りは、様子を見ていても大丈夫な場合が多いです。

ただひとつ考えなければいけないことは、下痢止めを飲むべきかどうか?

日本では基本的に「下痢止め」は使いませんが、海外旅行の場合は「移動」がありますよね。

トイレがついていないバスでの移動、途中でお腹が痛くなったらどうしよう? そんな心配をされる方も多いかもしれません。

私は、移動中などやむを得ない場合のみ、下痢止めを使っていました。ただ、インドの下痢止めは非常に強力です。トイレから離れられない程度の下痢が、薬を飲んだ途端にピタッと止まり、逆に2日間便秘になった、という経験もあります。

海外の薬を使う場合は少量ずつ、様子をみながら飲む方が安全です。

また、下痢で一番怖いのは「脱水」なので、こまめに水分をとるのがとても大事。水ではなく電解質を補給できる経口補水液をおすすめします。

現在は粉末タイプも登場しているため、海外旅行の際に持っていくと便利ですよ。

細菌性赤痢

私の友達はインドでガンジス河に入った後に細菌性赤痢にかかっていました。細菌性赤痢は、赤痢菌に汚染された水、食品などから感染します。

数日の潜伏期間をへて、下痢、発熱、腹痛などの症状が出ます。血便、しぶり腹(便意を催しても排便しないこと)が見られる場合もあります。

治療としては抗菌薬を投与、点滴などが行われます。衛生状態が悪い国では多く見られる病気です。生水、生ものには注意して、万が一症状が出た場合はすぐに病院に行ってください。

アメーバ赤痢

世界中で毎年約10万人が命を落とす感染症です。

赤痢アメーバに汚染された水、食品などから感染します。

潜伏期間は通常2~3週間で、下痢、粘血便、腹痛、しぶり腹などの症状が出ます。「イチゴセリー状の粘血便」が見られる場合も多いです。肝臓に膿瘍をつくることもあり、そのときは発熱、腹痛、肝腫大などの症状が出ます。

こちらも生水、生ものに注意し、症状が出た場合はすぐに現地の病院を受診してください。

■それでも行きたくなる、インドの魅力は”人の面白さ”

こんな風に書くと、「インドってやっぱり怖い!」と思われてしまいそうですが、私は3回行った今も「絶対に再訪したい!」と思っています。

なぜなら、インドの方々は圧倒的にエネルギッシュで面白いから。インドに行かれたことがある方には「うんうん」と頷いてもらえると思いますが、彼らに日本の常識は一切通用しません。

「え? そんなのアリ?」という出来事が日常茶飯事です。それを「面白い」と思えばインドが大好きに、「ストレス」と思えば嫌いになると思います。

「インドに行った人は、『大好き!』か『大嫌い!』かふたつに分かれる」と言われる理由ですね。

インドという国は広いので、「インド」と一口に言っても、地域によって住む人々、食べ物、風土などが全然違います。それも大きな魅力のひとつ。インドに行かれたことがない方は、ぜひ一度訪れてみて、ご自身の目で確かめてみてください。

インドの魅力とインドで気を付けるべき病気。1回ではとても語り尽くせないので次回に続きます!

中島 侑子

救急救命医/旅行医学会認定医。「医者のたまご、世界を転がる」(ポプラ社)著者。 現役救急医として救急医療、離島医療、救急ヘリに従事。3年間バックパッカーとして世界一周、訪れた無医村、スラムなどでの医療活動をもとに全国で講演...

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