ミラノのスーパーマーケット~ミラノ通信 #9
ミラノのスーパーマーケットはまず外観から日本のそれとは全く違い、景観に完璧に溶け込むほどのさりげなさ。また、営業時間が長くなり、コンビニのないイタリアにおいて利用者も増加しているそうです。今回のミラノ通信では、ミラノのスーパーマーケット事情をお伝えします。
■個人商店が強い一方でスーパーマーケットも進化。日曜日も営業するように
ミラノではこの数年、スーパーマーケットが進化しています。
日曜日になるとどこも閉まってしまうので買い出しは土曜までに、というのはひと昔前のこと、今では日曜も営業するようになりました。
営業時間も平日は21〜22時までと遅くまで開いていて、格段の進歩。
イタリアにはコンビニというものが存在しないので、買い物はメルカートか肉屋魚屋、八百屋やパン屋などの個人商店、そしてスーパーマーケットなのですが、もともとコミュニケーション重視のイタリア人は個人商店を贔屓にしていました。最近ではスーパーの営業時間や形態の変化で、スーパーの数、利用者の数ともに増えています。
2015年のミラノ万博で中心地には高層ビルが立ち並び、そのシンボルと言えるタワービルの地下に大型スーパーマーケットがオープン。街なかにもスーパーが増えてきました。パラッツォ(邸宅)は人の住むのは2階から、1階はカンティーナと呼ばれる物置きだったり、商業地域では店舗やオフィスなどが入ります。
ここに店舗を構えるスーパーマーケットも、ぱっと見にはスーパーに見えないくらいのさりげなさ。マクドナルドがイタリアに進出した時にも、街の景観を損ねないよう、黄色と赤のシンボルカラーを変えることを条件にした地域もあるくらい。美意識にはこだわりがあるのです。
■野菜や果物はエコで無駄のない量り売り
日本のスーパーとの違いというと、まず野菜や果物はメルカートと同じキロ表示されています。こちらでは、セルフで自分の好きなだけの分量を量り売りするシステムです。
まずはビニール手袋を装着して、品物を入れるビニールを購入する種類の枚数だけ取ります。
レモンを5個入れて、専用の秤へ。品物ごとの番号を押して、あるいは果物か野菜かの表示から次に進んでレモンの写真のボタンを押すと、グラム数と価格が印刷されて出てくるので、袋に貼り付けて買い物カゴへ。このシステムは必要な分量だけ買えるので無駄がありません。
また、パックに使われるプラスティックトレイの無駄もなく、環境に優しいシステムと言えます。パイナップル、スイカなどの大物は、袋にも入れずに直接シールを貼り付ける場合がほとんど。
余談ですが、イタリアでは、高級レストラン、カジュアルなレストランに関わらず、生のパイナップルをデザートメニューに載せているところが多いのが謎でしたが、食後の消化を助けるからとのこと。食後酒も、Digestivo(ディジェスティーボ)といって消化促進のために飲むのだそうです。
食欲増進のためのアペリティーボに始まり、食後にはディジェスティーボ、イタリアの食事は理にかなっていますね。
■ハムはもちろん、切りたてで。チーズ・ワインはさすがの品揃え
ハム類はいつでも切りたてを提供。大型店でなくても、ハム類は多くの種類を揃えたコーナーがあり、担当者が常駐して大きなスライサーで好みの厚さに切ってくれます。塊からカットしたばかりのProsciutto crudo(生ハム)、Prosciutto cotto(加熱したハム)の風味は格別です。
生ハムだけでも産地(パルマ、サンダニエレ、トスカーナなど)、熟成期間の違うものを2〜3種類ずつ揃えているほか、牛肉のハム、ブレザオラや豚のベーコン、パンチェッタなども塊から切り分けてくれます。
このコーナーにはチーズも取り揃えていて、フォンティーナ、トーマ、ゴルゴンゾーラなど北部のもの以外にも中部のパルミジャーノやペコリーノ、南のモッツアレラやブッラータなどイタリア中のチーズがずらりと並び、イタリアの食に欠かせないチーズの存在を改めて認識します。もちろん、ワインもこの通り、各州のものがずらりと勢揃いしています。
■ヘルシー志向の高まり? BIO製品や寿司も
また、最近ではカフェテリア併設のスーパー、BIO製品を中心に揃えたスーパーも増えてきました。ちょっとしたスペースでカフェや搾りたてフレッシュジュースを飲みながら寛ぐ姿もちらほら見られます。
この手のスーパーでは、カフェテリアコーナーの近くに量り売りお惣菜コーナーがあり、その場で購入したものを食べることができます。
ヘルシー志向の高まりか、寿司パックも多くのスーパーで扱われるようになりました。
■共働き家庭の多いミラノでは、お惣菜パックが充実
出来合いのお惣菜も、数少ないガストロノミア(高級食料品店)にしかなかったものが、街のスーパーにも一人用のゆで野菜やサラダなどが用意されています。
大型スーパーでは、ローストチキンやポテト、野菜のグリル、テリーヌにサラダなどさまざまなお惣菜パックが並び、そのまま持ち寄りパーティーができそうな充実ぶりです。
食材に恵まれているイタリア、マンマがすべて手作りしたものを食べるというのは、今や実家に帰省した時だけ、と語るミラネーゼ。
ミラノは共働きが多いので、冷凍食品や出来合いのものを上手に取り入れながらの家庭料理がメイン、便利になったスーパーは強い味方です。(スローフード協会の運営するスーパー、EATALYでは、買い物中に携帯電話を充電するシステムまで完備)
■おおらかなイタリアらしさ。大型スーパーではセルフ会計も
メルカートや個人商店が廃れることはないけれど、使い勝手の良くなったスーパーはこれから需要が増えそうです。
おまけに、大型スーパーでは、セルフ会計コーナーも併設。購入するもののバーコードを読み取り、購入袋に入れていくシステム。ズルする人はいないのだろうか、と思うのですが、抜き打ちで出口でのチェックもあるようで、レシート内容と品物が合っていると褒められるそうです。
そういえば、イタリアの文化であるバールも自己申告システム。カウンターで飲んだり食べたりしたものを、食後に会計で伝えて支払いするところが殆どです。
こんなところも、おおらかでイタリアらしいところなのでしょうね。