観光でも楽しいイタリアの市場「メルカート」の楽しみかた〜ミラノ通信＃6
おしゃれなミラネーゼも愛する市場「メルカート」でのお買い物。お花や食料品をはじめ、どんなものが買えるのか、活気あふれるメルカートの様子をミラノ在住の河見恵子さんにレポートしてもらいました。
イタリアでは、どんな小さな町でも決まった場所に週１〜２回、野菜や果物、その他の青空市場がたちます。市場＝Mercato(メルカート)と言って、ミラノでは色々な地域で開催され、毎日どこかの通りや広場でメルカートが立ち並びます。
どんな店が並ぶのかというと、野菜や果物、肉、魚、ハムにチーズ、乾物とオリーブなどの食品に始まり、生活雑貨、キッチン用品、花屋、化粧品、靴、下着やタイツ類、衣類などなどバラエティに富んでいます。
普段の生活に必要なものがなんでも揃うので、どこのメルカートも毎回、たくさんの人で賑わっています。
価格はスーパーマーケットや個人商店に比べて割安なものが多く、何より鮮度のいいものが揃うのです。
では、春のメルカートをご紹介していきましょう。
（メルカートでの食品の価格は基本的に１キロいくらのキロ表示なので、好きなものを好きなだけ買い求めることができます。ベリー類、チェリーやイチゴなど傷の付きやすいデリケートなものはプラスチック箱に入り、１箱での値段。ルッコラやハーブ類は束ねてあって、１束の価格となっています。）
春に彩りを増し、華やかになる花屋さん
まずは、春になると一気に華やかな雰囲気になる花屋から。色とりどりのチューリップ、ラナンキュラス、薔薇にヒヤシンスが並び、明るく華やかな色が春の訪れを告げ、目を楽しませてくれます。好みの花でミニブーケから大きな花束まで作ってくれるので、自宅用からちょっとしたプレゼントまで気軽に花を求める人でいつもいっぱいです。
チーズ、ハム、オリーブなど代表的なイタリア食材も！
イタリア人の生活に欠かせないチーズにハム類。北から南まで各地で生産され、まさに生活必需品。軽いランチやたくさん食べた日の夜などは、簡単にハムとチーズにパンだけ、という日もあるようです。
ハム類は塊から、希望の量を専用の機械で薄くスライスしてくれます。生ハム（プロシュートクルード）、火を通したタイプのハム（プロシュートコット）、牛肉の生ハム（ブレザオラ）、豚のベーコン（パンチェッタ）など、それぞれ数種用意されています。
オリーブもイタリア各地で生産されていて、イタリア人が長寿なのはオリーブやオリーブオイルをたくさん摂取するから、とも言われています。小粒な黒オリーブはジェノバのあるリグーリア地域で栽培されるタジャスカ種。収穫量が少ない希少なオリーブです。種抜きや、唐辛子と和えた辛味のあるタイプ、大粒なグリーンの甘みのあるナポリ産も人気です。
みずみずしさいっぱいの野菜と果物たち。近頃では大根も。
野菜と果物スタンドは、どこのメルカートでも最も多く軒を連ねています。各地から集められた新鮮な野菜と果物は、どれもみずみずしく、地中海の太陽をたっぷり浴びて育って甘みが強いのが特徴です。
形にはこだわらず、不揃いなまま店に並び、太陽を浴びてのびのびと育ったおおらかさと、昔ながらの大地の香りが感じられます。ディスプレーも見た目にも美しく、購買欲をそそります。
旬の野菜はいちばん目立つところに。向かって左下はイタリア版菜の花、チーマディラパ、右下はアーティチョーク、紫色のもの２種類はトレビジャーノ、別名ラディッキオ。
少し前までは中華街でしか買えなかった生姜や大根も、メルカートで扱われるようになりました。生姜のイタリア名はゼンゼロ、大根はそのままダイコン！産地はイタリアだそうです。
内陸なので高めですが、魚介類も！
内陸地のミラノでは、魚は肉より高級なのか、メルカートでも割高に感じられます。そのぶん、鮭やシチリアの赤エビなどの鮮度は抜群で、生でも食べることができます。丸ごとの大きな魚は頼めば綺麗に内蔵処理してくれて、カジキマグロや鮭はその場で大きな塊から切り分けてくれます。
こちらは清掃や洗濯用品、あらゆる洗剤や紙製品、バスグッズ、洗面用品など日用雑貨の店。スーパーマーケットより２割くらい安価なので、かなりお得感があります。
意外に充実した衣類のラインナップにミラネーゼも真剣。
メルカートでは密かに衣類も大人気！青空市場で服を買うなんて、と思っていましたが、これが結構いいものがあるのです。気軽に着られるワンピースやカットソー、カシミアやダウンも発色が美しく質のいいものが揃っています。
この日は気温も急上昇、モノトーンだった冬のミラノにも、春の兆しとともに明るく華やかな色を求める人々があふれていました。
若い女性から、仕事の合間にのぞきに来ました風のキャリアウーマン、ゴージャスなマダムからおばあちゃんまで、あらゆる女性たちが真剣に服を吟味していました。カーテンとパイプで仕切った即席試着室を用意している店もあれば、裏のトレーラー（品物を積んで来たトミニバン）で試着してもいいよ、という店、果ては服のラックの陰で堂々と（！？）試着する人までいて、見る側が目のやり場に困るほど。
サイズが合わなければ、また来週来るから交換するよ、と店側もおおらかです。
メルカートを愛するミラネーゼ
スーパーマーケットが増えても、やはり季節のものを肌で感じられ、じかに店主とやりとりしながらの買い物スタイルが好きなイタリア人にとって、メルカートは大事な場所。
店の人とのおしゃべり、近所の顔見知りとの挨拶や立ち話なども、大切な日課の一つだと言います。日曜もオープンして便利になったカルフール、エッセルンガなどスーパーマーケットが増えても、メルカートが減ったり寂れたりすることはありません。
そういえば、ご近所でも気を抜かずにしっかりお洒落して出かけるところも、イタリアならではかもしれません。ジャージなんてもってのほか、ミラノでジャージやTシャツ姿はスポーツジムの中でしか見たことがありません。一歩外に出る時には誰に会っても恥ずかしくない格好でビシッと決めて出かけるのが、ミラネーゼの常識のようです。
ミラノ市内の主なメルカート
朝８時から１４時が開催の目安
規模や店数は場所により異なる。Papinianoの市場は最も大規模。スリや荷物には常に注意が必要。
・Viale Papiniano メトロSanAgostino、トラム１４、１９ 火曜、土曜
・Via.Ripamonti バス９０、９１ 水曜、土曜
・Via.Fauche トラム１４ 火曜、土曜
・Via.Pagano トラム１、１９、２７ バス６１ 金曜
・Via.Osoppo トラム１６ 木曜、土曜
・Via.San Marco バス６１、４３、９４ 月曜、木曜
・Via.Calvi トラム２３、バス６１ 木曜
・Via.Vespri Siciliani バス５０、６１、９５ 水曜
