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イタリアのハッピーアワー!?「アペリティーボ」の楽しみかた~ミラノ通信#5

イタリアでおなじみとなっている、食前酒と軽食を楽しむアペリティーボの習慣。元来食前酒を意味する言葉でしたが、今ではブッフェ形式があったり、いつくかのスタイルが定着しています。楽しみ方をミラノ在住の河見恵子さんにレポートしてもらいました。

イタリアのハッピーアワー!?「アペリティーボ」の楽しみかた~ミラノ通信#5

食事に行くより気軽に誘いやすいのが流行のきっかけ⁈

イタリアでは夕食前に1杯飲む習慣があり、アペリティーボと呼ばれています。
仕事を終えて気分を切り替える為、食事をするレストランに向かう前に、あるいは帰宅前に、お気に入りの店や話題の店でカクテルやワインを楽しむのです。

アペリティーボにでも行きましょう、というのは食事に行くよりも気軽な感じで出かけましょう、という意味でもよく使われていて、友人や同僚、あるいは気になる異性と誘い合って食事前のひと時を過ごします。

ブレラの老舗、Moscatelli。気軽な雰囲気でいつも満席。

アペリティーボはミラノが発祥と言われており、夕食のスタート時間が遅いイタリアならではの習慣です。レストランでも20時半を回ってからようやく人が集まり始め、食事開始は21時というのが一般的です。19時過ぎに通りかかると、まだレストランのスタッフが賄いを食べている場面に遭遇します。

仕事はきっちり定時に終わるので、17〜18時過ぎから夕食スタートの21時まで、リフレッシュも兼ねてどこかで1杯食前酒を楽しむというのが昔からのイタリアンスタイル。なかにはシャワーして着替えて出てくるイタリア人も。こんなところも日本の事情とはだいぶ違いますね。

もともとはカウンターにチップスやオリーブが用意されて好きにつまみながら1杯、というスタイルでしたが、ミラノでは様々なおつまみが並ぶようになり、ドリンクを1杯頼むとおつまみをブッフェ形式で好きなだけ選べるハッピーアワースタイルが定着してきました。

大皿料理でボリュームも満点。食事代わりにする若者も多い。

店によって競い合うように、バラエティに富んだ料理の大皿が並びます。ひと口サイズのピッツァやフォカッチャ、生ハムにサラミ、グリーンサラダを始め各種サラダ、グリル野菜やマリネ、パスタにクスクス、メインにもなるチキンやソーセージ、ローストビーフ、フルーツにデザートまで多種多様な品揃えです。
なかには1〜2杯飲みながら、食事がわりにたっぷり食べていく若者たちや女性グループも見受けられます。

バラエティに富んだおつまみ。種類が豊富で美味しい店は人気が集中する。ナヴィリオ運河沿いは若者が集まるエリアなので、どこも競ってボリューム満点のブッフェを提供。

ドリンクがメインだった本来の食前酒から、今やミラノのアペリティーボといえば、食事がわりにもなる料理を食べながらの1杯、となりました。ボリューム感ある趣向を凝らした料理が大皿に盛られているさまは圧巻で、気をつけていないとつい食べ過ぎて夕食が入らなくなってしまうほど。そう、1度だけでなく何度でもお代わりできてしまうから、ちょっと危険なのです。

美味しくてついつい盛りがちになるところをぐっと我慢。見た目も綺麗に楽しみたいですね。いつも美しい花がセンス良くディスプレーされているFioraio Bianch cafe。

カジュアルなら5~8ユーロ、お洒落なところで8~15ユーロ

18〜20時のハッピーアワーには、1杯いくら、とおつまみ込みの値段が決められていて、地域により、店により、値段は変わります。

カジュアルな店の立ち並ぶ地域では5〜8ユーロ、ちょっと洒落たエリアのバール、カフェ、レストランで8〜15ユーロくらいが相場でしょうか。

ミラノではまだ珍しい高層ビルを眺める人気スポット、Ceresio7。

高級ホテル・レストランは、18~25ユーロで優雅に楽しめます

高級なホテルやレストランなどでは、ブッフェ形式ではなく、綺麗に盛り付けられた前菜盛り合わせのお皿がテーブルにサーヴされます。また、ひと口サイズの小皿料理を届けてくれるところもあり、なくなる頃を見計らって新しい小皿が次々と運ばれます。

こちらは1杯18〜25ユーロと少し値段は張りますが、落ち着いた雰囲気の中、至れり尽くせりのサービスでレストラン自慢の料理を楽しめるので、優雅な気分でアペリティーボを楽しみたいときにオススメです。

ブルガリホテルの中庭。ストップをかけるまでずっと、ひと口サイズのおつまみを次々にサービスしてくれる。

最近、注目度の高い和食。なかでも日本人経営の店はミラネーゼに大人気。話題のSushi.Bの中庭。

ミラネーゼのいちばん人気は「スプリッツ」というカクテル

アペリティーボタイム、ミラネーゼには何が一番人気かといえば、鮮やかなオレンジ色のスプリッツというカクテルでしょうか。ミラノの街角では、夕方になるとオレンジのグラスを片手におしゃべりしている人々をよく見かけます。アペロールというオレンジ色のハーブ・リキュールを白ワインとソーダで割ったもので、オレンジをトッピング。苦味と爽やかな飲み口が食欲を促進すると言われています。

このスプリッツ、アペロールの代わりにカンパリを使ったものも人気で、こちらはスプリッツ・コン・カンパリと注文します。カンパリレッドが美しく、企業秘密というさ様々な薬草やスパイス、ビターな後味がなんともいえない癖になる美味しさです。

奥がスプリッツ、手前がスプリッツ・コン・カンパリ。老舗はカクテルも上品に。ガレリアにオープンしたMarchesiにて。

そうそう、イタリアではスタンディングスタイルでのアペリティーボも定番です。サクッと1杯の場合も、長くおしゃべりする場合も、結構な数の人々が立ちながら飲んでいます。気候が良くなってくるとさらに、中に席があっても外で立ち飲みする人々の多さは驚くばかりです。

席に座ってまったりするよりも、大人数でワイワイ喋っているのが性に合うみたいですね。
特に人気のスポットでは常に外の道路に人が溢れ、グラスを片手に、それでもゼスチャー盛んに喋り続ける光景はもはや名物に。
イタリア人の元気の源はおしゃべりなんだなぁ、と妙に納得する次第です。

深夜まで人で溢れる人気店、N'onbra de Vin。木曜の夜にはDJも入り大賑わい。

これから日が長くなって暖かくなってくると、外でのアペリティーボが気持ちいい季節の到来、アペタイムがさらに楽しみになってきます。


河見 恵子

日本航空で15年間、国際線客室乗務員として勤務。退職後はミラノに居住し、東京と往復する生活。ミラノ・ブレラ地区を中心に、身近な情報をブログやFBで発信。ミラノでは在イタリア日本人のために料理教室をオーガナイズ、開催。ワイン好...

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