1. DRESS [ドレス]トップ
  2. 妊娠/出産/家族
  3. 不妊に悩んだ女医の妊娠と出産

不妊に悩んだ女医の妊娠と出産

不妊に悩む人が珍しくない昨今。不妊の検査を受けたり、実際に不妊治療を始めたり、不妊治療の体験を綴る書籍やブログを読んだり……そんな方は少なくありません。今回は不妊に悩んだ時期を乗り越えて、二児の母となった医師・岡本彩さんの体験記をお届けします。

不妊に悩んだ女医の妊娠と出産

はじめまして、今月よりコラムを書かせていただく2児の母で医師の岡本彩です。初回は20代後半のときに不妊に悩んだものの、30代で妊娠した私の経験を書かせていただきます。

■子どもがほしくて避妊をやめたのに2年経っても妊娠せず……

私は27歳のときに、一度結婚しました。結婚するまでは避妊をしていましたが、多くのカップルと同じように、避妊をやめれば1〜2年以内に妊娠するものだと思っていました。

ところが、丸2年経っても妊娠せず。その間、私と同時期に結婚した同級生たちが次々と母親、父親になっていきました。すでにSNSが普及していたため、Facebookには結婚・出産報告があふれ、20代だったにもかかわらず私は焦りを感じました。

結婚3年目、30歳になったとき、夫に「子どもがほしいから、一緒に不妊症の検査を受けてほしい」と話しました。ところが数日経って返ってきた答えは、「絶対に不妊症の検査は受けない。自分と結婚している限り子どもはもてないから別れてほしい」という驚くべきものでした。

結婚する前は「子どもがほしい」と言っていたので、どこでどう気持ちが変わったのかわかりませんが、いくら説得しようとしても「育てる自信がない」「別れてほしい」の一点張り。

子どもを持たず夫婦2人の生活も考えましたが、夫の「離婚する」という気持ちを変えることができず、30歳で離婚しました。

■医師として知識があるだけに、「あまり時間がない」と急く気持ちも

離婚後に出会いがあり、新しいパートナーができました。彼には私が子どもを望んでいること、結婚していた間は妊娠できなかったことを初めから伝えました。すると「子どもがほしいならできるだけの協力をする。検査も受ける」と言ってくれました。

そこで、結婚はまだでしたが不妊治療専門のクリニックへ行き、検査を受け始めることに。子どもを持つという夢の、スタート地点にやっと立てたことが心から嬉しかったです。

診察してくれた婦人科の先生は、「まだ30歳なら大丈夫でしょう」という感じでした。というのもこのクリニックの患者さんの平均年齢は39歳くらいで、私は若い方だったからです。

ただ、医師という職業柄、何歳でも妊娠できるわけではないこと、年齢とともに妊娠できる確率が下がることを知っていたので、少しでも早く妊娠したいという気持ちでした。子どもは2人ほしかったので35歳までに2人目を産むとなると、あまり残された時間がないと。

■多のう胞性卵巣症候群などの症状があっても妊娠可能性はある

まずは一般的な不妊症の検査から受けました。超音波で子宮や卵巣の状態を確認し、血液検査でホルモンの値を調べます。このときにわかったのは、ひとつの卵巣が「多のう胞性卵巣症候群」であるということです。

また、以前婦人科で受けた検査で指摘されていた、「卵巣のチョコレートのう胞」もやはりありました。これらがあると妊娠しづらくはなりますが、私は不妊の致命的な原因とはなるほどではありませんでした。

ほかには異常はなく、妊娠は十分可能と言われました。ただ、どちらも程度によっては妊娠するために治療(薬だったり手術だったりさまざまです)が必要な場合がありますので、気になる方は婦人科を受診してください。

次の検査は卵管造影。月経が始まってから予約を取るため、月経を待ちました。が、予定を過ぎても月経がきません。それまでも周期が多少前後することはありましたが、いつも食欲もりもりの私が吐き気を覚え、もしやと思いました。

クリニックに行き検査を受けると、妊娠のごく初期の可能性ありと言われました。まさかこんなに早く妊娠できるなんて! でも、まだ赤ちゃんの心拍は確認できないので子宮外妊娠の可能性もあります。2週間後にもう一度検査を受け、無事心拍を確認して妊娠が決定しました。

■妊娠検査薬で陽性でも、油断はできない

うれしい反面、妊娠12週までは流産の確率が高いことも知っていたので、まだ油断はできないなという気持ちでした。「妊娠検査薬で陽性→出産できる」と考える女性は多いかもしれませんが、そこは女医の私。あらゆるリスクが頭をよぎります。

すぐにつわりが本格化し、食欲が落ちて体重は3キロ減りましたが、「これが憧れのつわりか!」と、不妊を経験した女性ならではの感慨にひたっていました。無事12週を過ぎたときは「とりあえず流産の可能性は下がった」とほっとしたものです。

その後の妊娠経過は順調で、早産の傾向があり(子宮頚管長といって、子宮の入り口部分の長さが短めでした)自宅安静となった時期もありましたが、おなかの赤ちゃんはすくすく育ちました。胎動がわかるようになってからは愛しさも倍増、毎日お腹に話しかけて過ごしました。

■子どもがほしいけれどできない……なら、パートナーとふたりで早めの検査を

出産は「安産になるだろう」という直感通り、産科の先生にも助産師さんにも「安産でした!」「いきむのが上手でした!」と褒められました。分娩時間は6時間と初産にしては短いほうです。

とはいえ、前期破水だったので破水してからは丸1日近くかかり、陣痛がなかなか強くならず促進剤を使いましたし、痛みはやはり「人生最大」でした。痛みに関しては1回目の出産で凝りたので、第2子の出産では麻酔をお願いしました。

不妊に悩んでいる人には、本気で子どもがほしいなら早めに不妊治療専門の病院に行くことをおすすめします。残念ながら女性は年を重ねるほど妊娠が難しくなります。男性側に不妊の原因があることも珍しくないので、検査はパートナーにも受けてもらいましょう。

不妊はつらい経験ではありましたが、子どもを育てたいという気持ちが高まったせいか、子育ては楽しいことばかりです。


DRESS編集部

いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。

関連するキーワード

関連記事

Latest Article